モロッコパリ遠征記

藤松泰通(総本部)

五月二十九日の北斗旗体力別選手権の後、六月二日から九日までの八日間、先生、奥さんと自分の三人でアフリカにあるモロッコとフランスのパリへ行ってきました。

成田空港から飛行機で約十二時間かけてフランスまで行き、そこから飛行機を乗り換えてさらに三時間ほどかけてアフリカにあるモロッコのカサブランカという町に着きました。空港でフランス支部長の土田先輩と合流しホテルに泊まりました。

次の日、ラバトという町にある日本大使館に今年の世界大会の準備の為、立ち寄りました。そこから砂漠や岩山を車で約五時間かけてタンジェという町に行きました。その日はホテルに一泊し、次の日そこで第一回目のセミナーを行ったのですが、参加人数も少なく、責任者のブライムと言う男もどうやら大道塾の名前を権威として使いたいだけのようでとても残念でした。セミナーが終わりすぐに次の町フェズへ向かう予定だったのですがそのブライムが色々と問題を起こし結局その日はホテルに泊まり、次の日の朝に長距離タクシーでフェズへ向かいました。

五時間程かけてフェズの町に着きました。道を聞きながら道場に行ったらすでにみんな帰ってしまっていました。どうやらセミナーの時間連絡に行き違いがあったらしく、その道場の責任者も非常に残念そうでした。聞けば昨日は自分達の為に歓迎パーティーも用意していたとのことでした。泊まる予定だったホテルにも案内してもらい、そこはプール付で中庭には噴水がありととても高級そうな所でした。そこの責任者はとてもいい人で、できればもう一泊してセミナーをしてほしいという感じでした。自分達を引きとめたそうなのですが、予定ではもうカサブランカの町に戻らなければなりません。とりあえず近くの店で食事をしながら話をしました。責任者とマネージャーの二人がいて二人ともいいコンビという感じで武道の世界の話もよくわかり、非常に好感が持てました。カサブランカへ向かう時もなにかと世話をやいてくれてこのつながりを大切にしようとしているのをひしひしと感じました。カサブランカへ向かう為にタクシー乗り場へ行ったときも料金の交渉をして少しでも安くしてくれたりとすごくいい人達で次のセミナーの約束をしてフェズの町を後にしました。

車で五、六時間かけてカサブランカの町にたどり着きました。一日に何時間も移動をしたのでその日はホテルですぐに寝てしまいました。翌朝、土田先輩は一足先にパリへ帰るので見送りを済ませてからカサブランカの町を観光しました。メディナという迷路のような旧市街を歩いたり、『カサブランカ』という映画にでてくる店に行ったりとモロッコの町を堪能しました。

次の目的地フランスのパリへ向かう為、空港のゲートで順番を待っていた時です。チケットを係員に渡すと、ここではない。と言われ別の所へ案内されました。どうやら変更があったらしく、もう少しでドバイへ行ってしまう所でした。パリへの飛行機の出発時刻はとうに過ぎているのでもう乗り遅れたのかもと思いながら係員についていきましたが、何とか間に合い無事に飛行機へ乗れました。

三時間程でパリの空港へ着きました。この前日本に来ていたフランス支部のジャメルとルドヴィックが迎えに来てくれました。自分は土田先輩が今日は練習しているとのことだったので空港からホテルに向かう途中で車から降ろしてもらい道場の練習を見学しました。技を教えてほしいと言われたので簡単な投げから関節への入り方を教えました。次の日は『FIGHT SPORT』と言う格闘技雑誌の取材を受けました。東先生、奥さん、土田先輩、自分と日本の本部に住み込みで練習にきていた、セリ、ファビアン、ジャメル、のメンバーで行きました。編集長が日本で人気の『PRIDE』に選手として出場したことのある始めてのフランス人の方だそうで、いい体格をしていました。話をしていくと柔道を十年以上やっていたらしく、大道塾の『武道』という考え方にすごく共感してくれて二時間以上のインタビューになりました。その後もその人の経営している道場にいき、道着に着替えて写真撮影も行いました。そのあとみんなで市内観光をしてオペラ座やエッフェル塔を見て回りました。夜にはフランス支部の人達と会食をしてホテルへ戻りました。

モロッコ・パリ遠征の最後の日はヨーロッパでは有名な『KARATE BUSHIDO』という雑誌の取材を受けました。こちらのほうも色々と話を聞いてくれてなかなか良い印象を持ちました。取材は午前中に済ませ、午後は凱旋門、シャンゼリゼ通りをゆっくりと歩きながらショッピングをしました。夕方にはフランス支部の人達といっしょに空港まで行き、今回の遠征では色々なことが起こり、いつもとはまた違った経験ができました。海外では武道の先生というだけで、どこの誰々を知っている、というだけで食べていけるのです。実力があるならまだしもなくてもそれで成り立ってしまうのです。強くなくても人望がある、強い人間を育てられると言う場合ももちろんありますが、それもやはり心だと思います。教える側が自分の弟子、生徒に本当に良い人間、正しく力を使える人間になってほしいという心をもって指導をしているか。そこが大事だと思います。それが商売、金儲けが第一になってしまうと心がない、強くても相手を思いやる心のない人間になってしまうと思います。それこそ抜き身の日本刀のようなものです。強さという刃を収める心という鞘がないため、周りだけでなく自分までも傷付けてしまうのです。よく考えればあたりまえのことです。あたりまえの事ですがみな日々の生活に追われそれができなくなっているように思います。結果、収入などは後からついてくる物です。
最初に心あり、だと思います。これは武道家だけでなく最近のすべての日本人に言える事ですが。
武道の母国である日本がそこをおろそかにして海外の人間にそれが伝わるわけがありません。今回の遠征ではそれを強く感じました。

今回このような機会をあたえてくださった東先生、奥さん、同行してくれた土田先輩、フランス支部のみなさん、ありがとうございました。この恩は自分が学んだことを後世に伝えていくことでお返ししたいと思います。

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