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イタリア・ハンガリー 空道伝承記

脇が甘い!
岩木秀之(新潟支部北道場)
画像の青字解説文:東塾長
10日間の日程でイタリアとハンガリーに行き、空道の支部になりたいと申し出のあった団体のもとを訪れ、支部設立に関してのミーティングやセミナーを行う塾長に同行させていただきました。
塾長と狐崎支部長、神山支部長、渡辺支部長、後半のハンガリーからはフランス在住の土田支部長といったそうそうたるメンバーの中に加えていただき、空道普及のための旅、初のヨーロッパを体験できたことはこの上ない光栄であります。
私の役割はセミナーやミーティングの際の材料にするための組手や技のデモンストレーションの部分をやらせていただくことでした。
ハンガリーのセミナーでは土田支部長とも手を合わせる機会に恵まれ、以前から「一度は…」と思っていただけに一人喜んだものでした。

旅の途中であった素晴らしい景色、感動したこと、襟を正される思い、嬉しくて笑ったこと、聞いてビックリした裏話、一人密かに誓ったこと… 書き出せばキリがありません。それらの『うるるん』は私個人の宝物として胸にしまい、できるだけ「海外に向けての空道伝承の活動とその成果」に焦点を当て、昨年まで選手生活をしていた私の『競技者の視点』からのレポートをさせていただきたいと思います。
(旅のおもしろハプニング集は後日、私のHPなどで…)
10/25
行きの飛行機内で:
乗務員(若い男性)の一人が塾長の存在に気づき話しかけてきました。彼は他流派の生徒さんでありましたが、空手界の『偉大な先人』として塾長のことを尊敬していたらしく乗客名簿を見たわけでもなく、お顔を見ただけですぐに飛んできました。

世界的に有名な空道の創始者としての塾長とぜひとも話がしたかったようで、塾長のお席の横にひざまずきながら嬉しそうに会話をしていました。(塾長の方が回りの目を気にしなければならなくなるほどに幾度となくドリンクやスナックのサービス。果てはワインのプレゼントまで…)
日本国内で同じことは起こるでしょうか? 塾長のお名前の大きさもさることながら、外国人の武道に対するリスペクトの気持ちが成せる出会いであったと思います。 
早くも『意識の違い』を感じずにはいられない、この旅の序章にふさわしいエピソードとなりました。
10/27-28
ローマでは以前からコンタクトを取りたがっていた団体のオーガナイザーにあたるイポリット氏と 実際に指導に当たることになるマッシーモ氏とお会いすることができました。
実際に空道の動きを見てもらう目的で、宿泊しているホテルの持つフィットネスルームを使ってマッシーモ氏と立ち技・投げ技・寝技のそれぞれを軽くやりとりしました。
すでに支部の足がかりができている他の国のそれと違い、今から生徒を募る『ゼロからのスタート』に立ち会えたことは、一塾生として光栄なことであります。 いつか発展したローマ支部の試合を「コロッセオで…」などと一人妄想に入ってしまいましたが、それほどこの日の『新支部設立の基盤』は我々一行には嬉しい出来事でありました。
(この日の夕食は高い高〜い日本食の店の日本酒で乾杯! ご馳走様でした。)
どうしても空道をしたいのです 「どうしても空道をしたいのです」
良いねー 「良いねー」
10/30-11/2
続くハンガリーでは以前ブルガリアのセミナーに参加し、地元での支部設立を希望していると言うコルバイ・コント氏に会い、氏が準備を進めた道場とそこで行うセミナーのために飛行機で移動。首都のブダペストにある空港に着いてから更に2時間弱かけて移動したセグドという街に到着しました。
セグドでのセミナーは、他流派の人達も多く参加して整列した時は色彩鮮やか! カンフーや柔術も多く見られました。

セミナーは午前と午後の2回に分けて行われました。大道塾のスタイルを練習している人達と初めての人達の二つに分けて実施。私は前者を受け持つグループにおりました。午前のセミナーは基本を中心に始まり、打撃・グランドのテクニックを説明を加えながら何度か反復。話を聞く受講者は皆真剣で、空道への関心の高さ感じました。

地元のテレビ局もやってきた午後の部は、塾長自らが音頭をとる基本稽古。 その後、二人組を作らせて様々な組手における実戦パターンを解説。反復練習をしてもらいました。かなり駆け足で進み「ちょっと難しいかな?」と思われる難易度の高いものも投げ出さずに一生懸命練習していました。真剣に取り組むその姿に、次の世界大会を狙う選手の台頭を感じずにいられませんでした。

セミナー終了後、多くの人から「OSU!」とい言って深く頭を下げながら握手を求めに来ました。言語に敬語のない外国で ここまで礼をつくすことに徹した姿勢も珍しいと思うのです。これが武道・サムライの言葉の偉大さでしょう。 日頃の自分の行いを振り返ると襟を正される思いがいたします。
「渡辺,土田,岩木の3人で上級者を指導」 「渡辺,土田,岩木の3人で上級者を指導」
<「今日はこういう風に」 「今日はこういう風に」
この遠征を通して
海外の方の空道への関心と尊敬は高く、「日本国内の道場生で同じくらいの気持ちを持って入門を志す若者がどれだけいるだろう…」と その差は少し恐いものだと感じました。
これが今、空道母国・日本の置かれている現実であります。
愛する空道が世界に伸び行くこの機会を 喜ばしく思うと同時に「また一人(一国)強豪を作ってしまったのだな」と末恐ろしくも感じました。

世界大会は回を追うごとに厳しくなってゆきます。その片鱗を見た気がしました。
当年になっての強化でなく、今から意識の中にこの経験・感覚を置いておきたいものです。
あと何回国内で互いを高め合う北斗旗を重ねたら世界大会になるのか…
厳しい現実を言えば地球の裏側で、僕らの眠っている時間に、今も着々と彼らは力をつけていています。
塾生の皆さん、飛行機雲を見上げるたびに思いましょう。また一人、世界大会のライバルが増えてゆくのです。

選手生活を終わった私が責任転換のために言うのではなく、世界視点で見た日本人である我々が、本当の意味で空道を守り・愛するためにどうあるべきか?
 
この海外遠征を通じて見えた気がします。
日本国内の強化は急務です。
世界の同志と拳を交わすその機会までの砂時計は今も残り時間を削っていっています。
「語る前に己を磨け」の心でまだ見ぬライバルを意識して稽古しましょう。

『彼ら』と胸を張って拳を交わせるその日のために。

押忍
岩木秀之(新潟支部北道場)
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