ニューヨーク・コロンビアの遠征に同行させて頂いて

五十嵐祐司(青森市・三沢・弘前支部) 画像コメント:東塾長

この度は、11月21日から9日間の海外遠征に同行させていただきました。
内容は、いつものことながら東塾長が指導するセミナーのお手伝いに加え、今回はコロンビア国で開かれた第1回の空道選手権での演武、審判も行うといった非常に充実した真面目なものだったと振り返っております。その両国セミナーとコロンビア選手権を観戦した所感を以下、綴らせていただきます。

ニューヨークのセミナーについて

当初、予定にはなかったとお聞きしているニューヨークのセミナー。塾長曰く「最近、確かに問い合わせが多かった」とはいえ今回の渡米はある意味、運が良かったと思っております。

セミナーは、現地世話役の金子さんが塾長と細かい連絡のやり取りで場所などを確保していただき、オープン参加で集まった8名を対象に行いました。基本、移動を一通りこなした後、試合で使う簡単なコンビネーションを見せたあと、その技を実際に体感してもらうなど全部で2時間の内容で終了しています。

急なセミナー開催であったとはいえメールでの告知のみで、こういったセミナーがスムーズに成立し、参加者も空道に関する事前知識をしっかり持っていて、ほぼ全員が日本から持ち込んだ世界大会のDVDやTシャツを何の躊躇も無く購入している姿を見ていると改めてネット社会における情報収集力の凄さというのには驚かされるものがあります。

情報を得ても価値を感じなければ、ニーズ・問い合わせはないはずです。愛好家やオタクも多いこととは思いますが、参加者の中には既に自分の道場をもって新しい取り組みを(空道への加盟願い)を視野に入れてくる者もいます。

前々から思っておりますが、確実に世界の流れはフリースタイル(総合)が受けています(フルコンタクト界において)。しかも着衣ありの総合ルールを世界規模で行っている組織は空道以外にはないのに加え、我々は精神性も大事にしている武道団体であるということが加速化(海外の)している要因の一つと思っております。多難なこととは思いますが、一度消えかけたニューヨークの灯を是非、金子さんはじめとする有志で再燃してもらいたいと思いました。

三沢基地の外国人塾生のお陰で英会 話の方もばっちり
ny20

コロンビアのセミナーについて

こちらはオープン参加のセミナーとはいえ参加者の9割がカイサド支部長(コロンビア支部)の道場生が中心で滞在中、計2回行いました。

1回目はコロンビア選手権の前日に基本や移動稽古を中心とした内容に時間を割き、最後には翌日、行われるコロンビア大会に向けてのルールミーティングを行い終了。2回目は、大会翌日に実施。東塾長から前日の試合を見て気づいた改善点、簡単なコンビネーション(打撃、組み技共に)の指導、そしてコロンビア大会に来賓としてきて頂いた宮城県警所属でもありジャイカ(JICA)派遣指導員の千葉先生から柔道講座と盛りだくさんの内容で終了となりました。2回とも40名以上の参加者があり、セミナーの閉会には各人に修了証書が授与されるというしっかりとした形をとっております。又、大人のセミナー前には必ず1時間半ほどコロンビア支部の少年部を指導。こちらは2回とも20名ほどの参加でしたが、異国の地の子供たちとまるで教育実習を思わせるような触れ合いの機会を与えてもらい非常に有意義な時間を共有することができたと思っております。

カリ市庁舎表敬訪問
やっぱこういう時は制服がキマル!!
コロンビアセミナー
Kudo is not sports but the way of life.

コロンビア選手権について

まず、この大会に差し当たり前日には、開催地となるコロンビア第2の都市『カリ市』の庁舎へ招かれ表敬訪問。そこで、3年前にも行われたという地元メディアを対象とした合同記者会見に同席させて頂きました。ご存知の通り、東塾長は、3年前からカリ市の名誉市民に認定されており、3年振りにお会いする市長と強い握手を交わした後、饒舌な英語でマスコミを前に20分ほどのスピーチを行いました。

そして、この内容に応えるかのように市長の方も「治安の悪化が続き、ドラックなどが蔓延し荒廃した社会の立て直しに青少年教育の重要性は不可欠であります。それには何か一つでも夢中になれるものを若者に持ってほしいと思っています。その中でも武道が持つ魅力は非常に高く評価しており、若者の有り余った力を発散させながらも、礼法を体得させていく武道文化、精神性は今のコロンビアには必要です。「空道はただ強くなる為の技を教えるのではなく、人間性を向上させる大きな目的だ、という点に私はすごく共感しております。」といった内容の賛辞をいただきました。

市長は盲目ではありますが、同席した我々にも一人一人握手をしながら労いの言葉を語りかけて頂くという丁寧な対応には敬服しました。側近には昨年の世界選手権に来日されたという方々も何名かおり、私のことを「覚えているよ。」と話かけて頂くと少し嬉しい気分にはなりましたが、人の名前を「五十嵐」ではなく「イナガシ」とか、「祐司」なのに「ヒロシ」といわれるのには正直、困惑といった感じでした(笑)。

さて、大会内容ですが、来場者数は400名ほど。会場のキャパは今年の全日本体力別を行った愛知県武道館くらいでしょうか。

失礼な話になりますが、当初、日本を出る前、大会規模については、地区大会ぐらいであろうと思っておりましたが、とんでもありません。会場にはライブ中継のカメラが数台取り囲み、接近戦を見やすくし、且つ各試合の良い場面をリプレイするために2台も大型スクリーンが設置されておりました。

場内アナもプロの綺麗なスペイン系女性がアナウンスしております。演出もオープニングから素晴らしく、今回、選ばれた11名の選手それぞれのプロモーションビデオを試合前に数十秒流しておりましたし、表彰式はクイーンの曲に合わせ空から銀の紙ふぶきで締めるという内容でした(笑)。栄えある第1回大会の印象を大衆に強く与えたいカイサド支部長の意気込みが表れていた感じがしました。

レベルはといいますと、コロンビア支部自体、従来の稽古体系が伝統空手スタイル(寸止め)で行っていたため、ほとんどの選手が直接打撃の試合を初経験といった感じに見受けられました。しかも組み技については穴がありすぎます。ただ、海外勢特有の基礎体力を含めた潜在能力の高さに加え環境がもたらすハングリー精神と情熱は、ひしひしと伝わってくるものがありましたので今後の飛躍的な成長に期待は十分できると思います。

現段階では全日本無差別のベスト16くらいの選手が行っても優勝できるのではないでしょうか?これを読んで興味をもった日本の若手選手は、是非、臆することなく自ら挙手し、こういった国際試合に挑戦して欲しいと思います。別な言い方をすれば、どんどんこういった国際試合の舞台が用意されていく空道の現況は私のようなベテランから言わせるとある意味、羨ましい限りです。

ただ、お互いに日々精進していることですし、海外勢の日進月歩の速さは前述した通りですからやるからにはそれなりの自覚と気概をもって臨んでください。この大会模様は、国内ライブ中継のみならず、翌日のスポーツニュースにもゴールデンタイムに2回ほど放送されておりました。

我々が4年に1回のワールドチャンピオンシップ(世界選手権)という花火を打ち上げる度に、年々海外からのオファーが増えるのと同様に、この大会も確実に波及効果が出てくることでしょう。 実際、今回はコロンビア国内のみでしたが、周辺の隣国(エクアドルやペルー)からも興味をもった武道団体関係者が来場しておりましたし、問い合わせが殺到していることなどを現地で聞いていると、よりリアルな実感が湧いてきます。

「日本の先生方です」
決勝前演武五十嵐vs飛永

コロンビアの滞在全体を通して

コロンビアの国土は日本の約3倍あるも人口は、4000万人。そのうち右翼系、左翼系ゲリラが約5万人も潜むという治安の悪さは南米でも1,2を争う場所です。実際、今まで行った中では、入出国の検査が一番厳しかったですし、我々の行動していたエリアは自治体のセキュリティ範囲内でしたので特に大きなトラブルには巻き込まれませんでしたが(とはいっても一度だけ少年部の指導中にマンホールの爆発音がありましたが・・)、現地人にとっては常に誘拐や市街地戦などといった危険と背中合わせに暮らす社会状況は平和な国「ニッポン」から見ると異常とも言えるでしょう。

コロンビアの塾生との会話で印象的だったのが、大人子供問わず、自分の夢や方向性を尋ねると必ず「公」や「家族」に向けての言葉が出てきました。「トウキョウ」は憧れの場所であって、反米感情はあっても反日感情は無く、むしろ親日派ともいえる彼らが、それを証明するかのような我々に対する気遣いや姿勢には滞在中、本当に嬉しかったです。やはり日本は海外勢にとって目標とする国であるわけですから、これに恥じないように国内において自分のできる範囲で地道な作業に努めていくことの大切さを改めて感じた次第です。

最後に・・・

冬のニューヨークから涼夏のコロンビアとマイアミ。そして初冬の東京を経由して本格的な冬が到来した青森に戻ってきた私は帰国後、2、3日は、環境差ボケをしておりました。9日間の旅でお世話になった方は数多く、ニューヨークの金子さん、コロンビアのカイセド支部長はじめとする道場関係者の皆さん、そしてマイアミの牛田さん御一家には、この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。

そして、このような機会でもなければ国内においても違うブロックのため中々ゆっくりとお話することができなかった三重の中西支部長と帯広の飛永支部長にもご交誼、ご指導いただきまして有難うございました。

最後になりますが、こういった機会を与えてくださる東先生には、感謝の思いもさることながら、毎回、海外同行において見せていただく弟子に対する細かい配慮には申し訳なさもあります。年の瀬も押し迫っておりますが、私にとって今回また直に目の当たりできた先生のアクティブさとバイタリティ旺盛な後姿には、来年以降の活動に向け大いに良い刺激を受けたと感じると同時に、又、多くのことを学ばせていただいたと思っております。本当に有難うございました。

少年部にサインをせがまれて
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