ゴールドコーストから来た「外人」
私の友達のアダムは、日本に来てから六年目です。彼はアメリカで生まれましたが、両親が離婚して、お母さんとお姉さんと一緒に一九八二年にオーストラリアに渡りました。オーストラリアで、シドニー、ゴールドコースト、ブリスベーン、ケアンズを転々としました。「自分の今までの人生の中で一箇所で一番永く住んだのは仙台かもしれない」と笑って話しています。アダムはアメリカとオーストラリアの二重国籍ですが、オーストラリアのゴールドコーストを自分のふるさとと考えています。
アダムは一九九九年に初めて日本に来ました。それまでオーストラリアの会社で自然環境コンサルタントをやっていました。建設工事の前に、その土地で珍しい植物や動物があるかないかと調べる仕事です。その時に、まわりの環境に少し飽きてしまって、何かの刺激がほしかったそうです。アダムのお姉さんは、二年間、日本でホステスとして働いていて、アダムに日本で働いたところを教えました。彼は、働いて稼ぎながら新しい国を冒険したいという軽い気持ちで日本に行くことにしました。
アダムは最初にお姉さんが働いた山梨の同じバーでホストとして働き始めました。バーで半年ぐらい働いて、山梨で一年間ぐらい住んで、そろそろオーストラリアに帰ろうかなというところで自分の妻になる女性と出会いました。その女性は仙台出身だったのでアダムは一回オーストラリアへ帰って、二〇〇〇年に彼女の家族と会うために仙台に来ました。そしてその時からずっと奥さんと一緒に仙台で暮らしています。
アダムは仙台で輸出貿易会社を立ち上げて、現在、日本の中古車をニュージーランド、イギリス、アフリカへ売る仕事をやっています。外国人として日本で会社を立ち上げるのは大変なことなので、二七歳の彼はもう白髪があります。彼は東京のような大都会があまり好きではないですが、仙台を選んだ理由は奥さんの実家が仙台で、奥さんが家族の近くに住みたかったからです。仙台は最初から気に入りましたそうです。山梨より大きくて、しかし静かな町と思いました。今になって生活には一番相応しいところだと思うようになったそうです。
「町の中がゆったりした雰囲気で、人がそんなに多くないし皆は親切です。東京と比べれば東京の人はもっと忙しくてアグレッシブな感じです」
しかし、オーストラリア人の彼にとって仙台の冬は寒く感じるので「日本だったらもっと南の方、たとえば宮崎のようなところもいいな」と話しています。
アダムは、日本に来る前、日本はなんでも新しくて、未来系だと思ったが、実際、山梨に来たら、何でも古くてカビっていて、匂っていたという印象を受けました。「日本人とうまく行くかな」と不安だったですが、実際は人がとてもよくて、すぐに気に入りました。「基本的に日本について想像したことと実際にあったことは一八〇度違ったが想像したよりよかった」と話しています。
アダムは今の自分の生活スタイルが好きです。仕事もあり、友達と会ったり自分の趣味を持つ時間もあります。
アダムは仙台は暮らしやすいですが、仕事の環境として外国人にとってあまりよくないと考えています。「自分は運とタイミングがよくて、仙台で自分のビジネスを立ち上げたのですが、仙台で仕事をしたい外国人にとってそのチャンスは豊富といえないです。多くの友達は、英語の先生かバーテンダーのバイトをやっていて、それで満足していたらいいですが、それ以外に何かをやりたい人にとっては可能性が少ないです。大学の学位を持っている日本語のうまい外国人だったら、東京の大手会社で英語教師以外の仕事を見つける可能性がありますが、仙台でキャリアを積んで長期目標や夢を持って生活を立てることは難しい」というのがアダムの印象です。日本は国際社会化に向かっていますが、まだまだ閉鎖社会と言え、外国人に対して抵抗を感じて、仕事のチャンスが少ないとアダムは考えています。
私もアダムと同感です。私の場合は、今まで頑張った分がまわりの人に評価されて、運よく仕事と生活を、大好きな仙台でできました。ほとんどの外国人は職場が、たまたま仙台になったのでここで住んでいます。しかし、たとえば、仙台が気に入って「じゃ、ここで住みたいから、ここで仕事を探そうか」とは考えられないです。ジェーリーは「ビジネス・チャンスが増えている」と、とてもオプチミスティックな見方ですが、実際に外国人にとっては、英語を教えること意外の仕事を仙台で見つけるのが現実的に非常に難しいと思います。バイトも見つけるのさえも難しくて、アパートを借りるときに外国人といったら断られるところが多いです。日本で働いている私の同級生や友達は、ほとんど東京、大阪、名古屋です。私もつい最近、大手の会社から誘われましたが、それも東京だったので「私は仙台じゃなければいやです」と断りました。そういう意味で、アダムが話している通り、外国人にとって仙台は暮らしやすいし、暮らしたいところだが仕事の可能性が少なく、難しいです。
アダムが仙台で一番気に入っているのは仙台の人です。
「こっちの人は優しくて喜んで話してくれます。東京では人が感情を出さないようにしていますが、仙台では素顔で話しするので、少し田舎の雰囲気がします」
アダムは仙台の町はとてもきれいでよく計画されていると話しています。仙台のロケーションがいいため、仙台でできる活動がたくさんあります。アダムに、残念なことにナイト・ライフがあまりよくないそうです。私は最近あまり遊びに行かないですが、遊びに行ける雰囲気のいいナイトクラブが少ないような気がします。アダムは、ゴールドコーストと仙台が好きで、「仙台の人をゴールドコーストに移せば、理想的なところになりそうです。暖かくて、海と浜がきれいで、人が親切です。こういうところができたらこれ以上に望むことないでしょう」と笑っています。
アダムは、仙台に住んでいる間に外国人が増えたと感じています。
「最初に来たとき、もっと田舎の雰囲気があったが、今は仙台が都会化しているようです。自分にとってそれは別に消極的なことではないですが、田舎のゆったりした雰囲気のほうが好きです。外国人は皆それぞれの目的と期間で来ているので、一つのグループには当てはまらないのに、日本人に「外人」というタグが付けられます。自分は仙台に六年住んでいて、仙台が自分の家だと思っているのでこういうふうに「外人」と見られるのはあまり好きじゃないです」
アダムはこのまま仙台で暮らし続けるつもりです。夢を聞くと「お金を貯めて半年ゴールドコースト、半年仙台で過ごすような生活をしたい」と答えてくれました。しかし「実現が難しい夢なので、仙台で家を立てて家族と一緒にここで暮らします」と話しています。
ジェーリーにとってもアダムにとっても、仙台が最終港になったようですが、私も仙台が好きですが、私の人生の旅はまだ終わってないと考えています。私の夢は、仙台での生活を土台にして、更に世界のどこかで暮らしてみて、自分の人生経験をより豊かにしたいと思います。
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