UAEモロッコ遠征レポート

笹沢一有(早稲田大学準支部)

セミナー

はじめに

押忍、早稲田大学準支部の笹沢一有です。
1月23日から2月1日にかけてUAE・モロッコ遠征に随行させて頂きましたので、ここに報告致します。

1月23日

羽田空港で18:30に東先生・勝と合流しました。この時UAEにおけるセミナーに塾長から先のカザフスタン遠征でお世話になったアルベックさんがいらっしゃる旨を聞きました。UAEでのホストのマタエフさんとは第2回世界選手権で手を合わせたこともあり、この2人に再会することが楽しみで仕方ありません。空港で日本のお土産を購入し、ドバイへ向かう飛行機に乗り込みました。

1月24日

約9時間のフライトを経て、早朝5:30頃ドバイに到着しました。時差は6時間です。ドバイ国際空港は世界でも指折りの巨大空港のようで、滑走路からターミナルへはバスで移動します。VIP待遇で空港を出ると、マタエフ夫妻が出迎えてくださいました。久しぶりの再会ですし、マタエフさんは塾長の前で若干緊張しているようだったのが印象的でした。
5つ星ホテルに荷物を置いて朝食を済ませた後は、日本大使館への表敬訪問です。副領事に対し塾長が武道の意味といかに悪用を抑制するか(「空道は単に強さをひけらかす為ではなく、あくまでも護身のための技術であること、練習の場においては相手に敬意と礼儀を持って接し、技の交換(組手・試合)に当たっては「激しい感情に左右されず、自分をコントロール(統制、抑制)する習慣をつける」ことを目的とする、等々を強調する」)を熱心に説明し、かなりご理解頂けたと思いました。

これでUAEの「第三回世界選手権」の渡航に際してはかなり前向きに考えて頂けるでしょうし、現地で活動を広めていく中でもご指導、ご協力を得ることができるのではないでしょうか。

その後ホテルに帰り、すぐ近くにあるビーチで一泳ぎしました。ドバイはとても暖かいところです。空気が乾燥していて風は若干肌寒いのですが、なにしろ日差しが強いのです。
そうこうしているうちに午後になり、アルベック夫妻と合流しました。昨年9月のセミナーでカザフスタンを去るときは、まさかこんなに近いうちに再会できるとは思ってもみなかったので、お互いの空道のその後について話が弾みました。
この日は1日観光をする日と決まっていたので、午後はサファリに行きました。当初は動物園か何かかと思いましたが、サファリとは(砂漠での)探検旅行を指すようです。山あり谷ありの砂丘を4輪駆動で疾走するのは極めて刺激的でした。砂漠の真ん中では、立ち尽くしてみたり、寝転んでみたり、ダッシュしてみたり、砂をいじってみたり、瞑想してみたり・・・、とても貴重な経験になりました。砂漠の美しい星空の下で夕食を食べ、ダンスを踊り、かくして感覚的にも物理的にも6時間長い一日目が終わっていくのでした。

1月25日

この日は午前・午後と2部のセミナーです。午前に基本と移動稽古、午後に応用の打撃・組み技・寝技という構成で行いました。イラン・クウェートからの参加者は極真のバックグラウンドを持ち、UAEの道場生はマタエフさんの指導のために基礎が固まっており、スムーズに行われました。
特に午後に行った技術は真新しかったようで、熱心に指導を受けていました。「こちらでは空道を教えてくれる人がいないから」と言って技に関する質問をしてくるマタエフさんの熱心さが特に心に残りました。
この日の夜、マタエフさんは翌日の審査の内容(10人組手)を初めて知り、絵に描いたように緊張してしまいます。塾長がマタエフさんに「アイツの名前何てったっけ?」と審査とは関係のないことを話しかけると、「押忍、自分は2級です!!」と答えて爆笑を誘うほどでした。

1月26日

いよいよ審査会の日。マタエフさんは緊張と準備のためほとんど寝てないようでした。顔面打撃経験者が少なかったため、急遽私と勝がそれぞれ1人目・2人目として十人組み手に参加しました。マタエフさんは私に勝ち、勝に負けという風にイーブンに組み手を展開し、見事昇段しました。他の受験者も大道塾名物の壮絶な光景を目の当たりにしたことで、緊張感のあるよい審査会になったと思います。

私はその後、「日本チャンピオンがこれでは格好がつかないだろう」という塾長の命を受けて、クウェートの方と組み手を行いパンチで一本を取ったのですが、なんだが申し訳ない気持ちでした。自分の弱さが、本来無かった戦いを招いたことを大いに反省しなくてはなりません。

今回の審査会では既に一定の実力を備えている方が多く、それぞれの国で大道塾を普及させるという面では心強いものですが、第3回世界大会の日本勢の困難さを暗示しているかのようです。
最後の夜は皆でお約束のカラオケに行き、別れを惜しんで歌い明かしました。

1月27日

早朝にホテルを出発し、7:50の飛行機でモロッコはカサブランカへ向かいます。8時間のフライトの後、12:50にカサブランカ空港に着きました。長時間のフライトも随分慣れました。といってもずっと寝ているだけですが・・・。
モロッコではホストのハミディさん、マネージャー兼微妙な英語通訳のブシュタさんら4名の方が出迎えてくれました。塾長はモロッコに関して前回の経験からかなり警戒されていたようでしたが、ハミディさんは極めて好人物のようです。
かなりの時間をかけてカサブランカに来たわけですが、ここからセミナー開催地であるフェズまではさらに車で5時間という道のりでした。途中休憩で立ち寄ったテントでは、初めてアフリカ料理に挑戦しました。これが意外にも美味で、手掴みで食べることにも5分で慣れました。モロッコの料理は日本人の舌に合うようです。
道中、ブシュタさんからモロッコについて様々なことを聞きました。暮らし、食べ物、産業、宗教。そして、車窓から見えるオリーブ畑、沿道を歩く馬や牛、彼方まで広がるサバンナ、丘陵地帯の美しい曲線、古都の町並み。聞くこと見るものの全てがあまりに日常とかけ離れ、アフリカという異境の地に来たことを実感しました。

1月28日

ドバイでのセミナー同様、午前と午後の2部でセミナーを行う予定です。しかし、会場である体育館に向かう途中、謎の観光イベント(?)が発生して開始が1時間遅れたこと、先方のセミナー運営が若干グダグダだったこともあり、昼前から通しで約4時間のセミナーを行いました。この行き当たりばったりな感じを指して、現地の学生は「This is Morocco」と笑っていました。

セミナーの内容はと言うと、バスケットボールコートが2面取れるほどの体育館に100人は超えるであろう人が集まり、現地での空道への注目度の高さを物語っていました。セミナーの受講者も老若男女さまざまで、社会体育としての趣旨を実践できる土壌を予感させます。練習環境さえ整えることが出来れば、アフリカでも大いに空道は普及するのではと感じました。

1月29日

朝から普通のタクシーに6人の体を詰め込み、首都ラバトへ向かいます。日本大使館への表敬訪問のためです。大使館では大使ご本人に面会することが出来、空道に興味を持っていただくことができたようでした。
その後、タクシーを捕まえるのに1時間、移動に数時間をかけ、お尻が痛くなりながらカサブランカのホテルに到着しました。ハミディさん、ブシュタさんとはここでお別れです。何度も何度も再会を約す言葉を熱く交わしたのでした。

1月30日

この日は朝早く起きて、勝と2人でオールドスーク(旧市街の市場)に繰り出しました。ここではお土産を値段交渉しながら購入します。そもそも物価が安いこともあり、店長との熱い駆け引きの結果、格安で手に入れることが出来ました。それでも、先方は相当の得をしているものなのですが。その後急いでホテルに帰り、カサブランカからフェズまで来てセミナーに参加したサイードさんに、空港まで送っていただきました。途中、壮麗なモスクや大西洋を臨む海岸線に案内され、最後のモロッコを堪能しました。

1月31日

早朝3:50、乗り継ぎのためにドバイに戻ってきました。しかし、大阪までの便は既に飛び立ってしまったとのこと。思いがけず、ドバイでもう一日過ごすことになりました。
航空会社の用意したホテルで仮眠し、特にやることもないので勝とショッピングに繰り出しました。ドバイは自動車文化があまりに発達しているため、歩行には適していないように思います。悪戦苦闘しながらタクシーを捕まえ、繁華街に向かいました。
繁華街で買い物をしていると、突然「ササザワサン!!!」という声がします。驚いて振り返って見ると、そこにはなんとマタエフさんが立っているではありませんか。彼らに気を使わせても悪いとの考えから、ドバイに滞在する旨の連絡は取っていなかったのにです!!大きい都市の騒然とした人ごみの中で巡り合える奇跡に興奮しながら、3人であまりに早い再会を喜びました。

それからマタエフさん、奥さんのアリーナさん、いつも車を運転してくれたカムランさん、マタエフさんの若い弟子のエマニエルらが来たので、塾長がレストランに招待し美味しいお酒を酌み交わしたのでした。

おわりに

本遠征は、実に4ヵ国へのコンタクトがあったこともあり、成功だったと言えるでしょう。また、中東・アフリカへ第一歩を刻んだことは、それぞれの地域で空道が発展する大きな足がかりになるはずです。 私個人としましては、武道を通じた友好の輪の広がりを実感した遠征でした。世界大会でマタエフさんと一戦を交え、カザフスタンでアルベックさんらと知り合い、その2人と再会し、そして信じられないような三度の出会い。彼らとの縁は途切れないでしょうし、モロッコで出会った彼らともきっとどこかで、また繋がる機会があるように思います。

末筆になりましたが、今春に卒業する私と勝を随行員に選んでくださった東先生はじめ、渡航に当たり様々な事務手続きをして頂いた事務局長・本部職員の皆様方、ここまで育てて頂いた諸先輩に重ねてお礼を申し上げたいと思います。有難うございました。押忍。

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