コラム25 「選手育英基金」制度の再確認

1990年前後には多くの格闘技雑誌が生まれ、折からの「ブドウ(※1)・格闘技ブーム」もあって、プロアマを問わず多くの格闘技の大会が注目を集めた。そんな中で大道塾も多くのプロ団体から参戦を求められた。しかし大道塾は「単に肉体的な強さの追求=“強者至上主義”」ではなく、「本当の意味で社会から必要とされる人材の育成を目的とした“社会体育”としての団体であること」や、やっとそういう観点が重要視される時代になった今だから言えることだが“コンプライアンス”上の懸念があったことで(※2)、それらとの交流には一線を引いてきた

※1道着を着用し「オス」、「オス」という言葉を使う格闘技。(東の造語)
※2Compliance (社会規範に反することなく,公正・公平に業務遂行することをいう。スポーツ団体と反社会的団体との交際なども含む)

当時は、そういうことは見る側(ファン)は気が付かなかったし、裏事情を知っていたマスコミも、いわば“共存関係”という事もあり大きく問題視はしなかった。今は休(廃?)刊になった、当時有名な格闘技雑誌のある編集長が仲介し「大道塾も参戦を!」と求められた時、小職が「そんな背後関係がある大会だという事が表面化したなら、ウチだけじゃなく武道・格闘技界にとっても、大変なことになるよ」と言ったところ、彼は“シラッ”と「そんなことはバレなければいいんですよ。そんなことより選手が出たいというのに塾長に止める権限はあるんですか?」と“逆切れ” (?)され、挙句「大道塾さんが協力しないなら良いですよ。ウチは大道塾の記事は取り上げないだけですから」と“脅し”まがいなことすら言われるに及び、ある意味、「このブームは武道・格闘技の評価につながるムーブメントでは」と期待していた部分もあったので「ああ、これはウチとは違う価値観で動いているものなんだ」と目が覚めたものだった。

しかしながら、ウチとしても、そういう運動体(?)との無用のトラブルを避ける意味でも、不参加の理由について多くは語れなかった。その為、よく「大道塾は負けるのが怖いから、勝負を逃げている」と、それらの雑誌に書かれ、それらを読む、大道塾を応援していた“ファン”からも轟轟たる非難を受けたものだった。また、それらの事情を知らない選手の中には(いや、正確に言うなら、その辺の事情を教えても「自分らには関係ない話ですから」という者もいたんだが)「どうしても自分の力量を図りたい」とか「証明したい」という気持ちの強い選手がいる場合は、その都度、運営委員会で諮って参加を吟味してきた(のちには小職の判断に任された)。

所が皮肉なもので、その内に狂瀾とでも表現すべきブームに、―正に“狂った”のか、興業という以上、当然ビジネスとしての面は持っていたにしろ、どんなブドウ・格闘技でも、最低限唱えていたはずの「青少年の育成」というスポーツとしての根源的な一面は二の次になり、ビジネス主体の興業一色になり、八百長や詐欺まがいなこと(ついでに、覆い被せてきた“コンプライアンス”上の問題も)、が表面化したことで、“移り気”な世の指弾を浴びファン層の離反を招き、遂にブドウ・格闘技バブルははじけた。

その時、小職は「武道・格闘技がこの苦境を乗り越えて再び世の中に見て貰えるようになるには、選手の一世代が入れ替わる、20年は掛かるだろう」と予想したものだったが、現実はその年月を越えて、今日に至る20数年間の長い“冬の時代”に突入してしまった。

とは言いながらも案の定、予想を数年超えたとはいえ「人の噂も何とやら」で、最近漸く世の目が人間本能の一つである“闘い”に再び向いてきて、最近また様々な形態でのブドウ・武道・格闘技の大会や興業が注目され始まったことは、「天は我を見捨てず」じゃないが、感謝しても感謝しきれない、本当に有り難いことだ。我々は漸く戻ってきたこの“回流”を、前回のような狂想曲に踊らされることなく、一歩一歩慎重に、大事に、大事に見守り育てて行かなければならない。

そんな訳もあり、近年、再度、空道が注目され始まっており、いくつかのプロ興業の中で、空道への様々な働きかけがなされている。先月号の「ゴング格闘技」の中で、「グレーシ―柔術と大道塾の23年」というテーマでインタビューを受け、これまでの、大道塾と対外試合の苦闘の歴史を概観しながら「プロ興業との関わり」という事についても、述べた。

詳しくはそちらを読んでもらいたいが、最近、「プロ興業を前提にはしてない」という点を逆手に取られたり、本部の事務処理量から情報収集に手が回らないことで、事実上、野放しになっていて、全く当連盟には相談もなく、プロ団体から直接に選手への働きかけがなされており、選手も以前の協議内容を無視(?)、無自覚なままに“プロ興業”に関わる例が散見され「プロ興業の“草刈り場”的存在になっている」感もあり、放置はできなくなって来た。改めて以前の取り決めを再度確認し、且つ、より根本的な対応(※3)が必要とされてきたと思う。

※3選手を守る意味でも、また、本団体が公的スポーツに成長するにあたって、団体のイメージを損なわないように、大道塾のことやプロの世界に精通し、且つ、信頼できる第三者機関に介在して頂き、プロに参戦する選手のマネージメントをして貰う。

そんな時、04年の北斗旗超重量級で優勝。無差別は02 03 06準優勝、05年の第二回世界大会では重量級3位、2006年の北斗旗無差別で準優勝という輝かしい戦績を持つ清水和磨弐段が、「生涯武道を実践するため」と「最近の試合は技術レベルは物凄く向上していると思うが、大道塾の初期の頃の闘争心を全開させるようなものが減り、スマートになりすぎてる感じがする。少しでもそれを感じて貰いたいです」と、※3に関連する関係者からの紹介がキッカケで、ZONE(※4)という大会でラウェー(※5)の試合に出ることを申請してきた。

※4  http:// www.boutreview.com/2/schedule/zone/170521zone.html
※5  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4

ま、小職としては“生涯武道”という言葉の意味は、日々の練習を継続することで「常在戦場の気概と、実際に万万が一の不可避な障害、危害が差し迫った場合には、即対応できる体力と技術を養って置く」という意味で、清水ほどの実績を持った選手とは言え「選手生活を10年も過ぎた今、何で今更」という気がないではないが、人によっての武道に掛ける“想い”は千差万別だし、人生というものは各人の選択の連続で築かれるものだから、試し合いである“試合”に出ることが、自分にとってなにがしかの意味を持つなら、それは彼の人生であり、小職の介入できない世界で、それ以上は言う言葉はない。

ただ、清水がこの試合に当たって「自分は縁があり今回偶々プロの舞台に立ちますが、しかし、取り決めを無視して勝手にプロの試合に出ている選手が少なからずいる現状は、問題ではないでしょうか?」と「選手育成基金(欄外※6)に則る」ことを申し出てくれたことは、時宜にかなったことでもあり、その行為を多としたいと思う。

当該の試合は、「2017北斗旗全日本空道体力別選手権大会」&「2017全日本空道シニア選抜選手権大会」の1週間前の5月21日、以下の要領で行われる。時間のある方はぜひ観戦、応援して頂きたい。

http://www.boutreview.com/2/schedule/zone/170521zone.html
ZONE 6 - The Vengeance ZONE
開催日・2017年05月21日(日) 会場・東京 タワー・メディアセンター  ラウェイルール
清水和磨(大道塾/北斗旗全日本空道超重量級'04優勝)vs 中川達彦(花鳥風月)

※6反社会的団体に関与しないと支部長が判断した場合の申請を認めるが、コンプライアンス(※)上の責任は支部長に帰する。無断出場の場合はペナルティが生じる※法令順守=反社会的団体との交流などは厳禁。
・試合のレベル、選手のレベルについては検討が必要。
・アマチュアでも他団体に参加する場合、総本部に報告が必要。
・大道塾と他団体に登録している選手が、他団体名義で試合参加する場合、責任は他団体にある。
・ファイトマネーが生じる場合、その一定額を、所属支部、「選手育英基金」、「世界大会」の武道奨励金」に充当される(10数年前に決定していたことの確認と再実施)