ローキックを当てに行く長田に対し稲田は独特のパンチの連打で前に出て、長田を投げた。その瞬間骨折していた肋骨の痛みが長田の身体を激痛として走り抜けた。ここで試合は一時中断することとなった。それは、審判から長田が投げられた後にタップしたように見えたからだ。
だがその真相は、苦しむ長田に対し優しすぎる男としてあまりにも有名な稲田がグランド状態のまま「大丈夫ですか?」と声を掛け、それに対し、長田は「大丈夫だからもっとガンガンこい!」と返事をしたのだそうだ。そのときのジェスチャーがタップに見えたようである。
試合再開。長田は渾身の力を込めて打撃を打ち込み、踵落としまで見せた。しかし、組んで稲田を投げようとするも投げきれない、パンチを打つも芯をとらえきれず、相手のパンチをよけようとしても当たってしまう。長田自身がイライラしているだろうが、これが10年以上あいたブランクの現実なのだろう。後半には稲田のパンチでバランスを崩すなど長田の不利の状況は否めない。最後にはアキレス腱固めで痛めていた足まで再び痛めてしまい、満身創痍だ。それでも長田は闘う、教え子達のために、大道塾のために、そして自分のために。勝負は終始試合を引っ張っていた稲田の勝利となる。しかし、この戦いから長田道場の子供達、全ての大道塾の塾生達は多くを学ばなければならない。