事務局 東 由美子 総本部

第3回ワールドカップ遠征

 

ワールドカップに同行しました、空道連盟アンチドーピング(AD)委員・大道塾総本部事務局 東由美子です。

 

早速ですが、AD活動の今後と、一番重要と考えていることをお伝えしたいと思います。

KIFは、2014年に世界アンチドーピング機構(WADA)に加盟しておりますが、近年WADAへの加盟はますますハードルが上がっています。私たちが目指している、世界の大きな国際ステージで競技をするためにはWADAに加盟していることは必須条件で、これを維持する必要があります。WADAに加盟していることはIFとしての信用を示す名誉のあることで、国際スポーツ連盟(IF)としての国際的な信用度を示すことになりますが、これを維持するためには、検査・教育・違反時の対応・結果管理・WADAからのコンプライアンス調査への対応(約4年に1度の調査ですが、250問程度あり、これが一番大変!)と改善提案への対応・世界各加盟国での同様の活動の推進、などの多岐にわたる取り組みが求められます。それなので、専従した部署がないとなかなか全方面的に十分にカバーするのは厳しく、また、活動を促進させるにも相当な予算が必要になってきます。上をみたらキリがないので、まずはできることを、というところで、組織の規模も考慮した上で一番求められていることは、規程の順守(よくあるうっかりドーピングの防止、海外特有事例の注意喚起、参加選手には“ドーピング”について意識してもらうこと、が規定の順守につながります)、一定数の検査の継続(検査数を減少させない)、教育機会の確保・継続、各加盟国への活動推進です。

 

現在、日本国内で開催されている国際大会ではドーピング検査等のプロセスなどが整備されてきてきちんと行われてきていますが、それは日本のアンチドーピング機関(JADA)がきちんと機能しているからです。かたや海外では、一国に一つのアンチドーピング機関がなく数か国に一つのアンチドーピング機関として存在していたり、一国内には存在しているが当該機関の信用度の低い国があったり、助成金が出る国や出ない国があったり、AD活動に関する状況は様々です。

 

今後、世界各加盟国でのAD活動を重点的に推進し、これから徐々に海外の各種主要大会でもドーピング検査を行っていくことになると思います。選手にとっては一見煩わしいかもしれませんが、ドーピング行為を防ぐことで、選手のフェアプレーを守ることができます。その他に、選手の身体への害や健康被害が及ぶ可能性を防ぎ、観客やスポンサーの方には、空道という競技や連盟に対しての一定の信頼感も与えることができます。また、不正を容認しない環境下で練習や試合をすることは努力や誠実さ、忍耐力などを鍛えることにもつながります。

 

最近のアンチドーピング教育では、“Value-based education”(大切な価値に基づく教育)が重視されており、これは空道・大道塾の創始者・東孝初代塾長が大道塾を創始したときに発案した、道場訓と結びつけることができます。「勝つためには何をしてもいい」、のではなく、「正々堂々と戦うことが大切」、という価値観の元に競技に取り組んでいただきたい、「禁止されているからダメ」ではなく、「自分の信じるスポーツの価値観に反するからやらない」という倫理観の元に、誠実さや、公平性、責任感、他者を尊重する気持ちなどを育み、社会に貢献するために、空道という武道を実践していただきたい、という創始者の願いに通じるかと思います。

 

今回の大会でも、他国の観戦・応援マナーの悪さが目立つ例も多々ありましたが、今後連盟としてもそれも含めて、単に日本発祥の格闘技を世界規模で広めているだけでなく、日本にしっかりとルーツをもった武道として価値観も含めて一緒に広まっていってほしいと実感しました。空道の加盟国数が増えるだけでなく、文化や言葉も異なる国々が、話し合いやコミュニケーションの場を多く持ち、共通の倫理観や価値観をもって競技を広めていけたら、ブレることない強固な国際組織になっていくのではないかと思っております。そういった気持ちで海外でのAD活動も普及していきたいと思います。

 

最後に、今回のWCではジュニアの選手ならびにご父兄の皆さまにも参加いただき、過去最大の大所帯での遠征となりました。大会会場では観客や関係者が少なかった分、ご家族と選手との距離も近く、ご家族やサポートされる皆様の弛まぬ支えが、選手の活躍につながっていることを改めて実感しました。また、東京から片道3本の飛行機を乗り継ぎ30時間以上もかけてブルガリアに渡航したにもかかわらず、大きな事故や紛失、その他のトラブルにも巻き込まれることなく、無事遠征を終えることができたことに、ほっとすると同時に深く感謝しています。ご協力くださった皆様、ご家族の皆様に心から感謝申し上げます。遠征中も常にご理解・ご支援くださり有難うございました。皆様の今後の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。今後とも何卒お願い申し上げます。