審判 中川 博之 多賀城

2025空道World Cupブルガリア大会レポート

 

多賀城支部支部長の中川です。今回審判団及び副団長としてワールドカップに参加してきました。簡単にまとめてみましたのでご覧ください。

 

  • ジャックダニエル
  • 長い乗り継ぎ
  • 会場設営
  • 大会雑感
  • 谷井キャプテン
  • ジュニア勢が参加することに意義のあった大会
  • 副団長の役割
  • 審判の心得
  • ブルガリア
  • 小川支部長痛風発症
  • 腕返し
  • 中川道場の道場生へ
  • 3か月後再訪

 

 

 

  • ジャックダニエル

今回の遠征は1週間、しかしその半分近くは移動に時間を費やす為、たまにしかお会いすることのない方々とコミュニケーションを取るのも一つの目的でもあり楽しみでもある。

羽田を出発し、トルコのイスタンブールに着いたのは13時間後。

そこから次の便まで8時間もある。

もちろん飲まずにいるわけもなく、狐崎塾頭、平塚後援会会長、小川、コノネンコ両支部長と日本代表の勝利を願って乾杯!

しかしそこはイスタンブール空港。トルコのインフレ、通貨安に相まって空港ということもあり物価が物凄く高い!

後にフードコートでパスタとドリンクのセットを食べたのだが5,000円という、イオンの4倍以上はあるんじゃないかという値段。

狐崎塾頭以外はビールを頼んだのだが、思っていた通りの2,500円くらい。

塾頭は海外、レイバンのサングラスという雰囲気を大事に、俺はジャックダニエルだ!とわずかグラスに1cm程度のストレートを頼む。

まあ日本だと800円から1,000円程度では飲める。

会計6,000円!!

その後Duty Freeでジャックダニエルが売っていたのだが、一瓶4,000円くらいだった。

※塾頭が帰国してからカードの利用をチェックしたら実際は8,000円だったらしい…

 

 

  • 長い乗り継ぎ

今回の行程は前もって把握していたが、往路はフライト13時間20分、待ち時間が

14時間半。

復路が13時間半のフライトに15時間20分の待ち時間。

フライトはともかく、待ちが長いのはかなり体力を消耗する。イスタンブールであれば快適なところもあるが、ソフィアの10時間は座っているしかなく、おまけに飛澤氏が掏りグループらしき者を見つけ、万引きGメン並みの眼力と集中力を使ったせいで余計に疲れも溜まった。

おかげで待ち10時間の後半は掏りグループなんぞどうでもよくなり、ソフィアの涼しい風に吹かれながらベンチで眠りについた。

観た映画3本。華麗なるギャツビー、ワンスアポンアタイムインハリウッド、ジョーカーフォリ・ア・ドゥ。

ジョーカーフォリ・ア・ドゥは評判が悪かったのだが、この機会にと思って観た。

ジョーカーの1作目を観た時にそうなるだろうと予想していたので、特にマイナスでは無かった。

ワンスはめちゃくちゃ面白い。ブラピがカッコいい。そういえばブラジル代表に銀髪のブラピがいたな。

 

  • 会場設営

選手計量中、小松、中川、両ヒロユキが会場設営のアドバイザーとして後日行われる会場に赴くことに。

今回の会場は前回アジア大会の行われたカメイアリーナよりも遥かに大きいキャパシティー。

ロシアの大会までとはいかないが、ブルガス市の助成も受け華麗なるギャツビーな大会になるのだろうと予想していた。

車で会場まで向かうと、外観でかい!エントランス広い! どこまで設営できているのだろうと扉を開けると、そこにはギャツビーならぬギャランドゥならぬ、がらんどうの会場が。

まじか。ここにきて寮生気分を味わうことになるとは。

ジョイントマットを梱包から外し、公式図の通りに並べるのだが、まずスタッフの人数が少なすぎる。ジョイントマットの1辺が1mなので縦〇m横〇mに何枚並べると現地スタッフに説明するが、俺の歩幅の方が正確だと、ブルガリア支部のジョルジュが譲らない。

どう見てもジョルジュが測る1歩は1.5m以上ある。

何度言っても聞かないので、両ヒロユキとジョルジュの目隠し10m対決を開催することに。

結果、両ヒロユキはほぼ10m!ジョルジュは遥か先に。ジョルジュよ、1mは意外に短いんだぞ。

その後ジョイントマットを並べ終え、長机、椅子の配置を手書きで伝え、なんとか完成に。

明日が思いやられる。

これは私感だが、準備から会場の雰囲気やスタッフの働き、マニュアルが選手のパフォーマンスに影響を与えると思っている。世界大会を満員にしたいのは収入の為ではなく、

選手を満員の舞台で戦わせたいことと、その高パフォーマンスな試合を大勢の人に観てもらいたいからだ。

結果的に素晴らしい試合の連続だったが、ここは改善すべきところだろう。

 

 

  • 大会雑感

やっと大会について書ける。ここまで飛ばし読みした方は戻って読むことをお勧めする。

さらにジャックダニエルを片手にすると尚良い。

今回は一般5名、ジュニア20名弱の大所帯だったが、私が審判を担当したのはU16以下。

2日間で審判を70試合、そのうち主審が半分という集中力の持続がかなり必要だった大会だった。

さて日本勢から。正直な感想をいうとU16以下は日本の強さが際立っている。特に投げ技は有効な攻撃手段であることは間違いない。他国のほとんどは投げではなく、転ばす為の投げ技となっており、繋がりを意識していない。

打撃、掴み、投げ、寝技と独立している。日本はこのままの方向性を極めていくことが世界で戦うには有効であると考えられる。

しかし反省点や課題もある。

ジュニア世代は1分半という短い時間の為手数を多く出す傾向にあり、不必要な打撃が隙を作ってしまう。

逆に海外勢は一発の強さが際立つ。これは単純にパワーだけの問題ではなく、出してしまう日本スタイルのデメリットな部分である。

もう少し、出す前の動きや出させる動き、出さずに追い込む技術を身に着けるといいだろう。

しかしながら、ジュニア勢のイキイキとした動きは、何かを背負わされた感のある昭和世代にとって頼もしい限りである。

一般勢の試合は審判の都合上ほぼ観られなかったが、無差別、体力別と日本では敵無し状態だった中上の敗退は衝撃を受けた。目黒、谷井、小野寺にも緊張が走っただろう。

この3人の試合はAコートを担当した審判、選手達が書くだろうからあえて書かないが、ホッとした。強かった。

海外勢でいうと、ジョージアが強かったがウクライナ、フランスも揃っている。

躍進といえばインドの技術的な向上とアメリカのフィジカルを活かした戦いは、今後脅威になるだろう。

インドは大会翌日にヒンズースクワットを選手全員で行っていた。

日本でいえば、大会翌日に全員で四股を踏むことだろうか?

そういえば四股を踏むと何かが宿るらしい。

 

 

  • 谷井キャプテン

今大会のMVPは-240で優勝した谷井だろう。今回の遠征が決まってから選手側をまとめてもらうのは谷井しかいないだろうと思っていた。

今回谷井はジュニア勢全ての名前を覚え、可能な試合はほぼセコンドに付いていた。

日本代表が一つに纏まり、総合優勝を勝ち取ったのは彼の力によるものが大きいだろう。

試合に関しては決勝しか観ることが出来なかったが、左ミドルで相手のガードを潰し、腕が下がった後半、スマッシュ気味のストレートを効果的に入れて本戦での完勝!

殆どの選手はWorld Cupという国際舞台、自分の試合に集中したいだろう。しかし献身的なサポートと自らの優勝を成し遂げた。私もだが今回出場した選手、保護者の皆さん全てが彼の優勝を心から願い、そして喜んだだろう。天晴れです!世界一おめでとう!

 

  • ジュニア勢が参加することに意義のあった大会

今回の日本代表は一般の数の3倍U19以下の出場があった。

遠征には多額の出費と準備が必要になる。昨年秋に開催された全日本の成績で今大会の代表が決まったわけだが、成長期にあるジュニア世代からすると、体重管理を含めたコンディションを維持することはご家族も本人も容易ではなかったと思う。

それでも今回の遠征は参加することに大きな意義があったように感じる。

一つは代表選手と1週間行動を共にするということ。日本で行われる世界大会は支部ごとに行動することが多く、代表と言っても選手団が行動を共にすることはほとんどない。

遠征では普段過ごすことの無いトップ選手達と1週間行動を共にすることで、肌感覚に動きを共有し合い、さらには日本代表であることを強く意識できたのではないだろうか。

もう一つは国際交流ができたこと。小学生や中学生時代に国際交流をする機会は一般的にはごく稀で海外に行くことはおろか外国人と触れ合う機会も少ない。

大人には飲みニケーションという最強の手段があるが、子供たちはそんなものは必要とせずにボールで遊ぼうぜ!日本語でこれはなんて言うの?みたいな感じで交流していた。

子供達が成長する上で、この時間は今後の生活に良い影響しかないのでは?とさえ感じ、我が子を含めた、道場の子達が次の機会に参加できるよう頑張らなければと、さよならパーティで踊りまくる子達を見て思った。

 

  • 副団長の役割

今回私は副団長という役を仰せつかった。

団長は狐崎塾頭、副団長は東亮汰塾長秘書と私という体制であった。

副団長と言っても、ほぼ本部が主導で行っていることもあり、私はサポートとしての役割だったが、何かできることはないかと考えた結果、保護者と選手、審判団の繋ぎをすることにした。選手をまとめるのは谷井にやってもらおう。保護者とは積極的にコミュニケーションを取ろう。選手一人一人とも会話をしていこうと決めた。

選手も日本代表とはいえ普段はライバル関係。保護者も見たことはあっても話したことが無い人達ばかりなのだ。

たぶん選手も保護者も審判団の方が馴染み深いはず。すれ違うたびに声掛けや挨拶をするようにした。

これがどのような結果を生んだかはわからないが、私も楽しく過ごせた。きっと選手、保護者の皆さんも来てよかったと感じる遠征になったと思いたい。

もちろん殆ど会話することができなかった方もいる。

そういう方は今度会場でお会いした際に、ぜひ思い出話をしましょう。

ちなみに私のことを副団長と呼んでくれたのは、東秘書のご子息タカト君だけだった。

 

 

  • 審判の心得

審判の心得というと大層に感じるが、この機会に審判をする上での私なりの考えを記したいと思う。

今大会に限ったことではないが、特に国際大会となるとジャッジに異議や不満を漏らす者も多くみられる。気持ちはわかる。自国を愛する故の行動だろう。

基本的に人間は応援しているとバイアスがかかってしまい、公平な見方が出来なくなってしまうものだ。

また自分側に有利なジャッジはラッキーと受け入れても、不利なジャッジは見過ごすことができない。

しかし審判がそのような見方をしていては話にならない。

今回も2-2で旗が割れ、主審に判断を委ねる試合が数試合あった。

これは私の感情ではあるが、一切迷うことはない。副審4人のジャッジに自分の考えは影響を受けるものではなく、信念に基づいてジャッジしている。

例えばそれが自国や、自分の道場であっても同じだ。

もちろん応援する立場からすれば自国や自分の道場に勝ってもらいたい気持ちはある。近くで見て一生懸命努力をしている姿もみている。

しかし審判として自国や自分の道場を勝たせたいという考えはあまりに視野が狭いのではないか?

他国や他支部の道場生も毎日稽古し努力をしているだろう。その子には応援している仲間や家族もいるだろう。自分側の選手じゃなくとも、負けて涙を流す選手を見るのは辛い。

そう考えると自分の個人的な感情でジャッジすることがどれくらい愚かなことかわかるはずだ。

これは審判だけじゃなく、セコンドを含めた応援する人にも心に留めて置いてほしい。

審判は偏った愛ではなく、全ての選手に愛を注ぎたいものです。

とまだS級ではなくA級の審判が語ってみました。

 

 

 

 

  • ブルガリア

なかなかこういった機会の無い限り、日本人がブルガリアに足を運ぶことはないだろう。

私は今までも、エストニア、コロンビアと旅行で行くことのないような国に遠征で行くことができた。アメリカやオーストラリアも行ったが、殆ど知識の無い国の方が発見は多い。

今回のブルガリアに日本人が抱くイメージと言えば、ほぼ100%近くがヨーグルトを思うだろう。

私もそう思っていた。日本では無いようないろんな種類のヨーグルトがあって、好みを選ぶのかな?とか、飲むヨーグルトみたいなものも沢山あるんじゃないかな?とか。

結果からいうと、そのまま食べるヨーグルトは日本と変わらなかった。

朝食のビュッフェで出るのは1種類のヨーグルトのみ。会場設営の時にジョルジュから、飲むヨーグルトを頂いたのだが、こちらは日本の飲むヨーグルトには珍しい甘みの無い酸味の強いもの。日本もヨーグルトはたくさん普及しているし変わらないんだなと思っていたのだが、

実はブルガリアではサラダやスープなどの料理に使用することが多く、会場でチキンと一緒に出たヨーグルトにキュウリなどの野菜を和えたものは美味しかった。

今度家でも作ってみよう。

その他の料理だと肉はトルコ風の物が多いのかな。シシカバブーみたいな?

ブルガスだと黒海で取れているのか、アジのフリッターが美味しかった。

食事はそんなところでしょうか。

その他ブルガスで気付いたのは、信号があまりなく歩行者が横断歩道を渡ろうとすると、必ず止まってくれること。ここは文化として根付いている感じがした。

それ以外にもいろいろあったが書ききれないので、そのうち小出ししようかな。

そんな4日間でした。

 

 

  • 小川支部長痛風発症

今回は狐崎塾頭、小川支部長、コノネンコ支部長、平塚後援会長と行動を共にすることが多かったが、大会以外は飲んでいる時間が殆ど。

良く飲むな~と感心していたのだが、小川支部長が2日目あたりかな、親指が痛いとぼやくようになった。

『それは痛風ですよ』と痛風歴20年の私が言う。

でもまだ歩けるくらいの痛みらしい。その後も酒の勢いは止まらず、最終日そこにはスーツケースという杖無しでは歩けなくなるレジェンド小川英樹がいた。

ご子息は優勝し、初の親子2代世界チャンピオンになったというのに。

おめでとうございます。そして酒をちょっと控えてみましょう。押忍。

 

 

 

 

  • 腕返し

柔道の技の一つで腕返しという捨て身技がある。

以前YouTubeチャンネルをやっていた時に紹介した技なのだが、今回シニアで出場した新出さんがYouTubeを観てトライしようと思っていたらしい。

なかなかタイミング的に難しい技ではあるが、決まれば一本まで取れる技なので

どんどんトライして頂けると嬉しい。結構この技の反響は大きくいろんな支部の方から声を掛けられる。

3,4年前?の昇段審査で朝岡支部長に3、4回仕掛けられヒヤッとした。紹介した側が掛けられたらなんとも情けない。投げられなくて良かった。

おふざけ系のYouTubeも何名もの方から、あれを観て大道塾に入会しましたと声を掛けられたことがある。おふざけ系はもうやらないとは思うが、技術系は復活してもみようかな。

新出さんと私は同い年で、高校野球もやっていたということもあり話が弾んだ。

彼は上宮高校で元木や黒田とチームメイトだったとのこと。

私はチームメイトに有名人はいないがサンドウィッチマンが一つ下で野球部に入ろうとしていたということだけ伝えておこう。

同い年の方が活躍してくれるとやっぱり嬉しいですね。

新出さん第3位おめでとうございます!

 

 

  • 中川道場の道場生へ

1週間道場を空けることで、一般道場生、ジュニア・キッズクラスの道場生にはご負担をおかしました。私が不在の間は黒帯道場生が代わりに指導を担当してくれ助かりました。

保護者の皆さんもありがとうございました。

今回中川道場からは島橋陽也君がU16男子-48kgで出場し、入賞は逃しましたが日本代表として頑張ってくれました。2日目は悔しい思いが残る中、他の代表選手の応援に回り

総合優勝に貢献してくれたと思います。

きっと秋の全日本でもこの経験を活かし良い試合をしてくれるでしょう。

このかけがえのない時間を、道場のみんなにも経験させてやりたいですね。

またみんなで頑張っていきましょう!

 

 

  • 3か月後再訪

実は3か月後の10月同会場で行われるヨーロッパ大会に審判としていくことになりました。

審判として連続で国際大会の経験を積めることは大きいと思います。

大会の運営も学べるといいですね。

また、会場設営など進化しているか楽しみなところもあります。

同行していただける理事長、諸先輩方よろしくお願いいたします。

 

 

  • 最後に

役員、選手、審判、保護者の皆さん、遠征ではお世話になりました。

東事務局長、事務局次長ありがとうございました。

今回の経験を今後の指導、審判等に活かしていければと思います。

今後ともよろしくお願い申し上げます。