氏名・所属支部名
佐藤順(さとう・じゅん) 東北本部
年齢(2016/5/1時点)
48歳
職業
小学校教員・宮城教育大学 大学院教育学研究科 高度教職実践専攻(2年)
出身地
岩手県盛岡市
スポーツ歴
中学校2年生から3年生の夏までの約1年間、バスケットボールをしていました。
その他の運動歴は全くありません。高校・大学は演劇部に所属していました。完全に文化系です。
空道歴
14年
家族構成(妻・子の年齢など)
妻、長女(大学1年生) 長男(中学校2年生) 二男(小学校5年生)
30歳以上になって空道を始めようと思ったきっかけは何ですか
私は小学校の教員として働かせていただいています。この仕事に関連して以下の3つの理由から空道を始めようと思い立ちました。
空道を始めようと思った一番のきっかけは2001年の大阪府池田小の小学生無差別殺傷事件です。当時1年生を担任することが多かった私は、この事件に大きな衝撃を受けました。「学校が地域に開かれたものである以上、今後同様の事件を防ぐことは難しいのではないか、自分は親御さんからお預かりしている児童の安全を守れるだろうか」と考えたからです。
2つめのきっかけは、ここ10~15年程で教育現場でも一般的になってきた、「発達障害」を持つ子どもの存在です。
コミュニケーション能力には問題はないのだけれど、文字の読み書きや算数の計算が極端にできない「学習障害(LD)」をもつ子ども。不注意、落ち着きがなくじっとしていられない多動性、突発的に行動してしまう衝動性の顕著な「注意欠陥多動症(AD/HD)」をもつ子ども。こだわりが強く、社会性、言語・コミュ二ケーション、想像力の障害を示すアスペルガー障害などをはじめとする「広汎性発達障害」をもつ子ども。文科省の調査によると、これらの「発達障害」をもつ子どもは、少なく見積もっても子ども全体の6.5%にも上ると報告されています。
私自身いわゆる「荒れた学級」を担任させられることが多く、そういった学級には少なからずこれらの「発達障害」が疑われる子どもが存在しました。これらの子どもが粗暴な言動をみせたり、パニックを起こしたりした時に、本人やまわりの子どもを傷つけることなく制圧し、落ち着かせるための技術が必要不可欠でした。
教師は子どもを殴ることはできませんが、キレた子どもにとってはそんなことは関係ありません。顔面なども平気で狙ってきますし、急所攻撃もしてきます。本当の意味で何でもありに近い技術が必要でした。それは極真でもなく、柔道やボクシングでもなく、私にとっては空道でした。
3つめのきっかけは、私自身が「教わる立場になりたい」と思ったことです。教師は教える側に立つことが多く、人として傲慢になってしまいがちな職業であると思います。「分からない」「出来ない」といった気持ちをもつ子ども達をもっとよく理解するために、自分自身が教わる立場になることが必要ではないかと考えました。そのためには体力的にも厳しく、技術の習得も時間がかかりそうな空道が最適であろうと考えました。
あなたにとっての空道の魅力とは
様々な国の、様々な職種、年齢、性別の人たちと共に汗を流しながら拳で語り合う事の楽しさでしょうか。
仕事・家庭と練習を両立させるうえで工夫していること(家族の理解・評判など)
仕事と家庭を両立させるために、自分自身の東北本部での稽古は週一回と家族で取り決めています。しかし一日でも稽古日数を増やせないかと、半ば無理やり長男を自宅近くの仙台東支部に入門させ、その送迎+αということで出稽古させていただいております。その他、試合前一か月は、仕事と家庭に支障をきたさない約束で週一回だけ稽古を増やすことを許されています。
もう10年以上、こんな生活を続けているので、家族はもう何も言いません。興味が無いことも無いのでしょうが、トロフィーを持ち帰っても「ふーん」という感じです。
空道を何歳まで続けようと思っていますか
武道に引退はないと思っております。様々な事情でいずれ試合に出られなくなる日は必ず来ると思いますが、稽古は一生続けていければと思っています。
「空道」という競技について、この先期待することや提案などあればお書きください
今大会でも活躍をみせてくれた目黒選手や清水選手のような、少年部を経験した子ども達が北斗旗にどんどん出てきてくれればと思います。進学や就職、結婚、転勤など、競技を続けていく上での障害はたくさんありますが、それでもこの「空道」を選んでもらえるよう、魅力ある大会づくりができればと思います。
ルールについては、もっとシンプルにすべきと思います。現在のルールは細かすぎて、一般の観客だけでなく選手や審判にも理解が難しいものになっているのではないかと思います。例えば寝技では、現在は「使用が許された技」が細かく規定されていますが、この規定にあてはまらない技が無数にあり、これでは新たな技の開発が阻害されてしまう気がします。「空道」は様々な技術、戦略を駆使して闘えるのが大きな魅力です。本当に危険な行為や技だけを禁止事項として明記し、技術の自由な発展を保証していただければと思います。
各地域で様々な工夫がされていることとは思いますが、県や地域ごとの合同練習、道場生同士の交流をさらに深めていければと思います。少年部と一般部・シニアが共に稽古することで得られるものも多いのではないかと思います。合宿などで、あえて他競技(ボクシング、伝統派空手、サンボ、柔道、柔術など)の選手やコーチを招待し、セミナーを開いても面白いのではないかと思います。一部地域で定期的に行われている、選手や道場生の試合経験を積ませる意味でのワンマッチ大会なども、各地で開催できるようになればと思います。
数年前に東北本部でアレクセイ・コノネンコ師範に連れられ、ロシア、ウラジオストックに遠征させていただいたことがありました。この時の経験が私自身の大きな財産となっています。特に若い選手に、はやいうちに海外での大会・セミナーにどんどん参加させて経験を積ませてほしいと思います。
その他自由にお書きください
空道をはじめて14年ほどになります。その間、よほどの大きな怪我がない限りは試合に出るようにしてきました。1度出場をやめてしまうともう2度と出られなくなるような気がして半ば強迫観念に駆られての出場でした。
これまでの東北交流戦での成績は準優勝2回、優勝16回となります。
全日本空道シニア選抜では2008年重量級準優勝、2009年中量級優勝、2011年重量級優勝、2014年軽重量級優勝、そして今年度2016年重量級優勝となります。今後も無理のないペースで、全国の仲間たちと拳を通して交流していければと思います。
空道を始めてから、私の人生は何もかもが好転したように思います。道場での人間関係にも恵まれています。家庭も円満ですし、仕事もうまくいくようになりました。けがも少なくはありませんが、それすら笑って過ごすことができています。小さなことでイライラすることも無くなりました。自分に自信をもつことができるようになったことが大きいのだと思います。
空道に出会えた私は、本当に幸せ者だと思います。