リトアニア遠征
リトアニアセミナー参加レポート神山信彦(文・画像)

4月26日〜5月1日までリトアニアセミナーに同行をさせて頂きました。
リトアニアはバルト三国(リトアニア、ラトニア、エストニア)のひとつ。旧ソビエト連邦政府の強い支配下に置かれた国でもあります。また、日本の旧外交官で、数千人のユダヤ人を救うため「命のビザ」を書き続けた「日本のシンドラー」こと杉原千敏(すぎはらちうね)氏が有名です。彼の記念館や石碑などがあり、現在でもリトアニアでその功績が称えられています。

遠征に赴く前、リトアニアは、旧ソビエト連邦国やロシアの過去の関係から、社会主義国特有のすこし暗い雰囲気を想像していましたが、実際にその地に足を下ろすと想像とは違い、明るく穏やかでのんびりとした雰囲気で、とても平和な感じがしました。実際に現地に赴かないと、その国の雰囲気や様子は分からないものです。 気候はこれから夏に向かうところで、これから約3ヶ月間が夏のようです。日没は21時頃。我々が訪ねた時期は、短い夏を楽しむ様に野外で過ごす人達が目立ちました。良い時期に訪れたように感じました。冬場には−20℃〜−30℃になるそうです。

出発当日、成田空港を後にし、ヘルシンキを経て、現地時間の夕方にリトアニア首都ヴィルニスに到着しました。そこから車で約2時間掛けて今回の滞在先カナウスに到着しました。到着後、「やかた」という日本料理店(滞在期間中、先方接待の行きつけの店となります。)に直行しました。そこで、イルガラス支部長はじめ、トーマス(Sviyazas Thomas 先の第三回世界大会、第一回ワールドカップ共にU270第3位)、ビルス、もう1人と我々6人が顔合わせをし、夕食をとりながら自己紹介をしました。支部長はじめ、我々を迎えてくれたみなが好印象でした。

翌日は、2時間掛けてヴィルニウスまで赴き、「リトアニア ナショナルオリンピック委員会事務局長」に表敬訪問をしました。リトアニアでは、国が空道を認知しており、援助をしています。今回の表敬訪問も将来のオリンピック加盟を見据えてのこと。今回のセミナー中にブルガリアからも国の承認を受けたと連絡が入りました。空道を各国ごとに正式に認知されるような活動が広がっていることを改めて感じました。日本も頑張らねばいけません。

表敬訪問後、カウナスに戻る途中、カラカイ城を観光しました。カラカイ城は、湖畔に浮かぶ中世のレンガ作りの古いお城です。静かで落ち着いた雰囲気で、湖畔の周りは別荘の様な建物があり、ヨーロッパの避暑地を思わせる場所でした。
観光中、偶然にも現地の結婚式に出くわしました。日本で行なわれている結婚式とは違い派手さは感じられませんでしたが、シンプルでほのぼのとした結婚式でした。約1時間の観光後、お城を後にして「やかた」に直行し、夕食を頂ました。(「やかた」利用2回目です。)

さてセミナーですが、今回はリトアニア支部の主催で、近隣の国にも呼びかけ、約200名もの参加者が集まり、2日間にわたり開催されました。
セミナー初日は、新移動稽古の指導が中心となりました。海外勢は、力強さはありますが、突く時に肘を外側に張りすぎたり、蹴りも軸足が外側に開き過ぎたりなど、細かい箇所の雑さが目立ちました。当初の予定時間を1時間ほど延長しましたが、それにも関わらず最後までセミナー参加者は熱心に取り組んでいました。セミナー中、指導で参加者の間を見てまわっていると、自分を呼び止めて「これで良いですか?」「こうするのですか?」「どうやってやるのですか?」など沢山の必至な質問を受けました。そんな少しでも技を吸収しようという姿勢から、参加者の一生懸命さが強く感じられました。どこの国のセミナーでも、参加者はみんな熱心に質問をしてきます。日本では、分かるのか、分からないのか等々、反応が薄く、いまひとつ熱心さが伝わってこないことが多々あります。空道を学ぶ機会に恵まれている日本と、空道を日本人から教わるという機会が希な海外とは、機会の貴重さなどの度合いから比べることは出来ませんが、今の日本の若者には生き生きした躍動感がかけているのかもしれないと感じさせられる場面でした。

3日目のセミナーでは、前半に昨日の続きを行い、後半には審査会が行なわれました。昇段、昇級を含め9名が審査を受けましたが、審査を受けない者も昨日に続き参加していました。また審査を受ける9名も、審査のことなど気にしていないかのように、前半のセミナーから力を押さえること無く、全力で対人稽古をこなしていました。もちろん、審査を受けない参加者達も昨日に続き、力一杯体を動かし生き生きと汗を流していました。

海外遠征での行程は、毎度時間にルーズなことがお決まりですが、今回のセミナーでは、全てが時間通りに運びました。主催者の支部長や塾生は、疲れを顔に出すことなく、滞在期間中の我々の接待、ホテルの送迎や稽古の段取りまで細かく気を配ってくださり、イルガラス支部長はじめ、塾生たちの実直さがとてもよく伝わりました。加えて、我々の接待やセミナーでの疲れがあるにも関わらず、そんなことをお首にも出さない彼らの様子に、塾長はじめ我々全員が感心させられました。現代の日本人が忘れがちになった「気配りの精神」を異国の地で見たような気がしました。

トーマスやビルスに至っては、自分たちが昇段や昇級審査を控えているにも関わらず、運営やセミナーの進行、通訳と尽力してくれました。イルガラス支部長の日々の指導の賜物であり、さらに塾長に対する温かい思いが強く感じられました。そんな過酷な中でのトーマスとビルスの昇段/昇級には、ほっと胸を撫で下ろすことができました。

どのセミナーでも、参加者は一様に、次回何年後に日本人から指導を受けられるのか分からないだけに、皆真剣に取り組み参加しています。技的にはまだまだ日本人の方が優れていると思いますが、取り組む姿勢は海外の塾生の方が真剣ではないかと思うほどです。もともと地力がある海外勢が真剣に技など覚えてしまうと「地力+技」で日本人を簡単に超えてしまいます。その傾向が顕著に見られるのが、ロシア勢ではないかと感じます。ロシア人とて地力はありますが、技に関してはまだ、日本人の方が、一日の長であるように思います。しかし、メンタルな部分では海外勢の方が勝っている様に感じます。海外勢は、日々「第四回世界大会」や「第二回 ワールドカップ」を見据えて稽古に励み、優勝を目指して、凌ぎを削っています。日本も母国の意地、プライドを掛けて稽古に取り組み、気持ちの面はもちろんのこと、「日本空道の技」というものの確立を目指さなければいけないと、改めて感じさせられました。

海外遠征では毎度、塾長、奥様に大変お気を使って頂き、本当に感謝しております。有難うございました。また同じくセミナーに参加した盛岡支部の狐崎支部長、フランス支部の土田支部長、総本部の清水指導員、遠征中はお世話になり、有難うございました。
留守中、支部を守ってくれた支部幹部達、我が三姫(3人娘)、いつも支えてくれている妻に感謝です。そして、海外遠征にご理解頂いている支部のご父兄の方々に感謝しております。有難うございました。今回の遠征で学んだ知識や経験を、今後の稽古指導に生かしていきたいと思います。

神山信彦(日進支部)

更新日2012.5.7

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