押忍、吉祥寺支部の田中俊輔です。
この度、東塾長・アレクセイ コノネンコ先輩・東由美子さんと共に参加させて頂きましたウクライナ遠征についてご報告させて頂きます。
19時半成田空港到着。
海外へ出るのは今回が初めての僕は成田空港に来るのも今日が初めてで、広い空港で迷子にならないか不安に思いながらもとりあえず出発前に体を軽くしておこうとトイレに入った所で、偶然コノネンコ先輩に会う事が出来たので一安心。
先生、由美子さんとも合流し搭乗手続。さすが国際線ともなると搭乗きも一筋縄ではいかないようだ。事あるごとにパスポートやチケットを見せさせられる。何度もカバンから出し入れするから、真新しいパスポートがもうしわくちゃになった。先生も由美子さんもコノネンコ先輩も当然海外通、手慣れた様子で手続きを済ませて行くが、僕は置いて行かれないよう必死で皆に喰らいついて歩いた。手続きを終わらせて夕食。そして早速ビール。4人で出発前の祝杯をあげた。(この時点でコノネンコ先輩は大ジョッキをおかわり)まずはパリまでの長い旅路、13時間の拷問が待っているのだ。乗り物嫌いの僕にとっては飲まなきゃやっていられない。
ところが、機内は予想以上に快適だった。映画も見られるし、ゲームもある。さすが国際線エールフランス航空だ。
意気揚揚と最近話題の「アバター」を鑑賞していると、突然思わぬ敵が背後から迫ってきた。ドリンクサービスだ。どうやらパリジェンヌのCAは日本語を話してはくれないらしい。ここであたふたして「この日本人、海外初めてだな」となめられてはいけない。
元々僕が空道を始めたのは人からナメられない男になる為だ。こんな所でパリジェンヌのCAにナメられていたのでは、大道塾の看板にも傷をつけることになる。僕出来るだけ手慣れた振る舞いで「ウォーター」と頼むと、CAは笑顔で答えてくれた。
コップの中身はコーラだった・・・結果オーライだ。
頼みもしないコーラをおいしく頂いたところで、次にやって来たのが機内食だ。もちろん機内食も初めて、どんなものか一度食べてみたかった。「フレンチorジャパニーズ」・・・なんとフランス料理か和食かを選べるらしい。
僕は少し迷ったがジャパニーズを選択。
せっかくフランスの飛行機なのでフレンチをとも思ったが、逆にあえて僕は彼等の作るジャパニーズフードを食べてみたいと思いそうした。見たところ副菜やデザートはフレンチもジャパニーズも同じでメインだけが違うようだ。
フタを開けてみるとどうやらかつ丼のようだ。
中国上空のフランスの飛行機の中で食べるかつ丼も悪くないと思い(さすがにはしは無いので)フォークを入れてみると、カツと思っていたものの中身は豚ではなくサーモンだった。日本にこんな料理はないと思うが、味はとても美味しかったので、ここも結果オーライだ。
そうこうしている内に13時間経ち、中間地点のパリに到着。パリは朝の4時。次ぎの飛行機まで3時間の空きがあったが、空港内の飲食店は早くて6時開店。6時まではベンチで休みコーヒーショップ開店と同時に生ビールとつまみに生ハムとモッツアレラチーズの盛り合わせを注文し又乾杯。こんな早朝から飲んでる我々に対する現地の人々の軽蔑(?)の視線などものともせず、皆で本場ヨーロッパの味を堪能した。
短かったパリでの一時を終えウクライナ行きの飛行機に搭乗。首都キエフの空港までは3時間。パリまでの13時間を考えたらほんの一瞬だった。空港にはイーゴリー・サモヒン支部長はじめウクライナ支部の方々が迎えて下さった。
見た目はイカツク恐い人達に少しひいてしまったが、とても快く迎えてくれている印象だった。
キエフ空港に迎えに来たサモヒン支部長(怖!)と
(編集部注:コメントは東塾長)
空港周辺には農村風景が広がり、以外にも僕の地元の北海道にとても良く似ていた。
ホテルまで車で1時間。都心に近づくにつれ、初めて見る美しい街並みに目を奪われる。まるで映画の中に入り込んだような気分だ。そして僕のテンションはホテルに着いたところで最高潮に達した。最高級5つ星ホテル。5つ星ホテルというのは、つまり星が5つついているホテルのことで、誰が星を5つ付けたのかは分らないが、とにかく要するに最高級なのだ。
先生方はともかく自分のような者にこんな素晴らしい待遇をして頂いたウクライナの皆様に感謝し、チェックイン。
昼食まで少し時間があるとの事なので、それまで部屋で休むことになった。部屋はコノネンコ先輩と同室。さすが星が5つもつけられているだけあって、広々とした室内で、テーブルの上にはウエルカムフルーツが盛られていた。昼食までの小一時間程、僕とコノネンコ先輩はフルーツを食べながら、空道の技術論から精神論までかなりディープな話をした。・・・というよりも自分が一方的に質問攻めにしたのだ。僕が今回の遠征で一つ楽しみにしていた事なのだが、空道の大先輩であり、北斗旗絶対王者のコノネンコ先輩からすこしでも多くの事学び、吸収したいと思っていた。元々先輩とは今まで挨拶程度の会話しか交わした事がなく、殆ど初対面に近い状態だったので、今回こうしてゆっくり話が出来る事をとても楽しみにしていた。
・・・というよりも自分が一方的に質問攻めにしたのだ。
話は尽きないが昼食の時間が来たので、ホテル内にあるレストランへ。8Fの僕らの部屋から2Fのレストランまで当然エレベーターに乗るわけだが、そのエレベーターに日本ではあるはずのない物を発見した。階数のボタンに「0」があるのだ。
「0」とはつまり1Fのフロントのことで2Fが「1」のボタン。ということは僕らの部屋のある8Fは「7」か、というとそうではないらしい。考えると頭がパニックになるので、僕は男らしく階段を使う事にした。
サモヒン支部長を交え5人で昼食。話題はやはりウクライナにおける空道の発展状況が主だ。コノネンコ先輩が通訳に入り、先生とサモヒン支部長がとても難しい話をしていたが、とにかくウクライナで空道はものすごく広まっている。ということはなんとか理解することが出来た。前回先生が遠征された10年前とは比べものにならない程の発展を遂げているらしい。そして明日のセミナーには150名もの塾生が参加するらしい。それを聞いてすごく緊張した。
昼食を終えたら、夕食までは自由時間。部屋に戻りシャワーを浴びて仮眠(爆睡)をとる。夕食はホテルから車で15分程のウクライナ料理レストランへ。まずは地ビールで乾杯。料理はやはり肉中心。野菜といえば全てピクルス。世界三大スープの一つボルシチも出てきた。当然白米など無い。普段は和食が多い僕の胃袋は突然の黒船来航に最初はやや戸惑いながらもすぐに受け入れ、無事国交樹立を果たした。
夕食を終えそのまま皆でキエフのメインストリートを散歩。すれ違う女性は皆8等身や9等身、あげくの果てには10等身だ。 先生は「あの長い足で膝蹴りもらったら効くだろうなぁ」と言っていた。確かにあれは刺さりそうだ。
6時に起床し、一人地下のフィットネスジムへ。そうここは5つ星ホテル。フィットネスジムの一つや2つあったからといって、なんら不思議なことではないのだ。しかも、その上プール、サウナまで完備されている。という事に至ってはまはや驚いたり、はしゃいだり、鼻息を荒げてみたりする必要はどこにもないのだ。なぜならここは5つ星ホテルだからだ。
軽く汗を流した後は朝食だ。2Fのレストランへ向かう。(2Fということは、つまりエレベーターの「1」だ。)
やはり来た。バイキングだ。僕は生涯一度もバイキングで成人男性の理想的な食事というものを取れたことが無い。
しかも朝食だというのに、大量のケーキまで並んでいるではないか。僕は前に一度ケーキバイキングに行って食べ終わって帰ろうとした時、席から立ち上がれなくなったことがある。少しでも動くと胃袋が破裂するというところまで喰い漁ったのだ。
そういった過去の苦い経験を思い出し、ここはケーキを4個で我慢することにした。
セミナー会場まで車で15分、着いてみると本当に昨日話に聞いていたとおり、子供から大人まで総勢150名の塾生が我々を出迎えてくれた。道着に着替えいよいよセミナー開始。東先生の号令で、準備体操、基本稽古と通常の稽古のように行うのだが、動作の意味やポイントを先生が一つ一つ丁寧に解説しながら進めて行く。
キエフエミナー
それを聞くウクライナ支部生の目はとても真剣だ。そして僕自身も基本の重要性を改めて考えさせられる良い機会になった。
何より印象的だったのが、久し振りに拝見した先生の基本稽古だ。足技のキレ、高さ、そしてバランス。
とても還暦を過ぎた人間の動きとは思えない。これには本当に驚いた。基本稽古が終わり、10分間の休憩の後、先生、僕、コノネンコ先輩の順に空道の実践的な技を紹介して行くことになった。まず、先生は相手の蹴り足の裾を掴み相手のバランスを崩すと同時にフック等で反撃するというまさに攻防一体の空道特有の技を紹介。
僕は空道的に応用した肘打ちの技術を、コノネンコ先輩は相手の蹴りをキャッチし、相手の反応に応じた様々な投技からグラウンドへの移行する技術をそれぞれ紹介した。当然先生と僕は言葉が通じないので、コノネンコ先輩に通訳に入って頂いての指導になる。僕はこんな大勢の人達相手に、しかも通訳を通しての指導など初めてなので、ひどくぎこちなかった。技の説明の後、二人一組になり各自その技の練習に入るのだが、皆予想以上に器用にこなしていた。
最後に皆で写真撮影をして第一回目のセミナーが終了した。
昼食は中華料理店へ。ウクライナの中華ってどんなだろうと思ったが、中華はどこの国でも大体美味しいみたいだ。ここで先生は早くもウォッカを注文。僕も頂いたが、運動で汗を流した後に飲むウォッカはなかなか効いた。食事のあとは、何やら凄く有名だというキリスト教の信仰にあつい人にとっては聖地のような所らしく、我々酔っぱらいが入って大丈夫かとも思ったが、何とか無礼のないよう一通りの観光を終える事が出来た。
その後、またキエフ空港へ向かう。明日のセミナー会場であるドネツクという町まで夜のうちに国内線で移動するのだ。深夜一時にドネツクのホテルに到着。ここのホテルもなかなか立派で部屋も広く良い所だったが、そんな事はどうでもいいくらいその日一日の疲れがピークに来たのでその日は即就寝。
7時起床。朝食へ。やはりここもバイキングなのだが、昨日のホテルと比べるとえらく質素。どうやら我々を含めて、宿泊客はごくわずかだったようだ。昨晩は暗くて気がつかなかったが、ホテルのすぐ前は海だった。これがあの有名な黒海(編集部注:アゾフ海)だ。
今日はいよいよセミナーだ。そしてセミナーの後には昇段審査も行うらしい。セミナー会場までホテルから車で20分程。
見えて来たのは巨大な屋内サッカー場だった。今日のセミナー参加者はなんと200名以上。しかも今日地元のTV局が取材に来るらしい。これはえらい事になってきた。会場内に入ると、人工芝が敷き詰められた恐ろしく広いアリーナの中央に、すでに200名の塾生が整列し我々を迎えてくれた。高い天井に200人の「押忍!!」の声がこだました。
セミナーの内容は昨日と同じ。先生の号令で準備体操。基本稽古と一つ一つ留意点を解説しながら進行していく。基本稽古が終って10分間の休憩の後、又それぞれの実戦技の紹介に入った。昨日のセミナーとは少し違う技だが空道特有の実戦的な技術を紹介した。最後に写真撮影をし、セミナーを終わる。昼食へ。
昼食の後はいよいよ昇段審査だ。
海外の選手のスパーを見るのは初めてなのでとても楽しみ。4〜50名の選手が4面に分かれて組手を行った。
審判は東先生、コノネンコ先輩、サモヒン支部長、そしてこの日ロシアからお見えになったウラジミール・ゾーリン支部長の4人だ。僕は初段なので昇段審査の主審をする資格はない。ここはひたすら見とり稽古に徹した。見たところ、やはり身体指数が高く勘の良い選手が多いようだ。特に軽い階級の方は打撃に関して言えばレベルはかなり高かった。ところが、組み、寝技となると力ずくでやっているという感じで、全体的に技術不足を感じた。しかし逆にいえば彼等が少し首相撲や柔術等の技術を身に付ければ、飛躍的に総合力がアップするポテンシャルを持っているわけだ。・・・うん、多分そういう事だ・・・。
中には世界大会に出場した選手も何人かいたので、なかなか見応えがあった。組み手が終わり審査の合否が発表され、セミナー、審査会の全てが終了した。
そして、ウクライナ最後の夜。今夜はさよならパーティーが盛大に行われるのだ。パーティー会場ではサモヒン支部長をはじめ今日セミナーに参加した3〜40名の塾生の方々と豪華なウクライナ料理が我々の到着を待っていた。
意外と僕と同年代の人が多かった。言葉が通じないので所々由美子さんに通訳をお願いしながら、あとはカタコト英語とジェスチャーで、会話し、交流を深めた。皆ガンガン酒をすすめてくるので多分最終的にウォッカをショットグラスで2〜30杯は飲んだと思う。そして最後はなぜか全員で東先生の号令による基本稽古をやって幕を閉じた。こうしてウクライナ遠征全ての行事が終了した。
翌日、ドネツクからキエフ、キエフからパリ、そして日本へと3本の飛行機を乗り継いで無事帰路に着いた。
今回このような貴重な体験をさせて頂いた東塾長をはじめ、遠征中いろいろと面倒をみて下さったコノネンコ先輩、由美子さん、それからウクライナ支部の皆様本当に有り難うございました。
今後必ず今回の経験を私の武道人生に役立てて行きたいと思います。
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