アンケート回答(支部長)

以下の文章はワールドカップ遠征参加者を対象に行われたアンケートの回答から転載したものです。(五十音順)
【アンケート項目】
1)今大会の感想
2)日本の選手と勝ったロシアやウクライナの選手は何が違うのか?
3)今後、日本が勝つ為にはどうすればいいか?

1)今大会の感想
神山支部長

「第一回ワールドカップ」は大成功だと思います。
しかし、準決勝戦以外の大会進行はスムーズではなく特に気になった事を下記に箇条書きします。


(1)選手呼び出しから登壇までの時間がかかった事。(選手係りがいない)
(2)バンテージの問題等(バンテージの使用を再度検討する必要)主審以外チェックする係りがいない。
(3)進行表やトーナメント表が審判団に配られない為、全体の流れが分からなかった。
(4)一部選手の態度(試合後マスクをセコンドに投げたり、延長戦前のインターバル30秒の間に正座をしなくても良いが、足を投げ出したりする態度は教育的にも良くない。)


細かい所をあげたら限がなく、重箱の隅を突くような事になってしまいます。 全体的に演出はプロが行ったという事でパフォーマンスも派手でした。 しかしまだ、日本での大会(世界大会)進行には及ばないとの感想です。(細かい所が欠けている。 )先の塾長からの文章にもありましたが、ロシア側の選手はプロだとか…? 公になった時、今後の国際大会に他国選手は出場をして来るのかが心配になります。 又、プロとアマチュアの境が微妙な立場の選手もいるみたいです。今後の参加者規定枠の検討が必要かと思います。

コノネンコ師範代

今回大会はとてもよかったです。ロシア連盟はその実施にとても大きな力を入れたことが伝わりました。日本では大会会場で純粋に試合を行い、興味ある人が見に来ますが、正直に状況を理解する関係者ではなければ大会の魅力、見所があまり伝わらないのでただ見に行きたい一般人はあまりいないと思いました。ロシアで空道が人気で、魅力があり、観客が試合をみに来たり、テレビで試合が放送されたりすると聞きました。今回の大会で、あの会場設営、照明、音響、司会でやれば空道の魅力度はとても高く、試合を見ることが面白いと思いました。

ただし、ああいう見せ方するにはとても大きな費用と人件費がかかり、それを基準にすると他の大会を主催することが難しくなりそうです。


大会は大きなところがよかったですが、こまかいところはとても雑でした。運営の詳細はあまり考えられてないので大会の進行がよくなかった。海外選手の宿泊、食事、移動の対応も課題が沢山あって、不安、不満を感じた海外お客さんは沢山いたと思います。

村上支部長

日本審判団が中心となって試合を裁いたこともあり、スムーズな試合進行であったと思います。
欲を言えば、現在何試合目であるのかが(ロシア語をわかっていれば無問題だったのでしょうが)、ひと目でわかる工夫(掲示板に何試合目であるのか掲示するといった)があれば選手としてもありがたかったと思います。総じて、お金のかかった華やかな大会という印象でした。

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2)日本の選手と勝ったロシアやウクライナの選手は何が違うのか?
コノネンコ師範代

一番大きく違っていたのは、ロシア、ウクライナ選手は体力的に優れていて、自信をもって畳の上の空間を精神的に支配していた。

技術の面で以下の通り:
違った点は(ロシアとウクライナはとても似ています)打撃中心の戦い方をしています(組技得意の選手も)。

組技はあまり上手ではない(背負い系の投げはほとんどなかった、組んでからの打撃はほとんど膝蹴りのみで肘と他の打撃がほとんど見られない)、寝技もいまいちでした(基本的な腕十字は皆が上手ですが、他にあまり多様性がないです。何回か三角締めがありましたが、これはとても分かりやすい技で30秒でかけるのも、かけられるのもあったということは寝技のレベルの低さを物語る)。

一方、打撃は特色をもってとても得意です。拳を大きく振り回すフック系が多く、理論的にガード、カウンターされやすいですが、実際に回転スピードが早く、リーチが長いので当たります。当たり方も、ほとんどの日本の選手のようにちょっと下から、または縦拳で、ガードされやすいパンチではなく、大きく体を倒して、又は肘をあげて、拳が斜め上からガードの間に入ります。

戦いのスタイルはムエタイや、キックのようなスタイルではなく、元はオリンピックボクシングでそれに蹴りを加えている感じです。つまり、

攻撃パタン:大きい技で飛び込んでから早い回転のパンチで続く、又は体をよせながらフックや、アッパを打ってからパンチの連打、

カウンターパタン:左パンチや左足の蹴り、体の動きで相手を誘って、相手が攻撃に出たときに体でスエーしてパンチの連打を打つ。どっちのパタンも最後に蹴りがくるので、回し蹴り、後ろまわし蹴り、どっちもとても伸びる距離で蹴る。

村上支部長

軽量級に関していえば、やはり、アゼルバイジャン等の旧ソ連圏選手の身体能力は高く、選手は大変であったと思います。しかし、中村、平安両選手とも、少なくとも相手選手に力で圧倒されるような場面は(多少押されるような場面はあったとしても)なく、旧ソ連圏選手とほぼ互角といえるような体力を身につけていたのではないかと思います。これは、選手の日々の精進に加え、体力面に一定の力点を置いた強化合宿の一つの成果であったと考えます。

技術的にも遜色なく、身びいきですが、後半、平安は、右フック、後ろ回し蹴りといったコリャンの得意技をすべて封じ、優位に試合を進めていたと思います。

ではなぜ負けたのか。

平安−コリャン戦を振り返れば、結局(強化合宿で平安自身教えられたはずの)、相手の不用意な蹴りをキャッチ、コントロールして打撃という流れでコリャンが効果をとり、それが勝敗を決しました。
中村の準決勝も、ほぼ互角ながら微差で判定負けを喫しています。

ロシア選手というとパワーで圧倒する印象があり、確かにそうなのですが、軽量級についてわが国の第一線の選手と戦う場合、むしろ、着実にポイントを稼ぐことを意識している、いいかえれば、しのぎあいで着実に勝つことができる力(技術)を身につけているといえます。
コリャンの場合は、自分は前に出ず、むしろ少しずつ下がり、相手が不用意に前に出たところに攻撃、相手がバランスを崩したら嵩にかかって攻め立てるというのがパターンかと思いますが、対平安戦では、単発の攻撃以外、前に出る場面がほとんどなかったと思います。
スキの探りあいの中で、不用意なこちらの蹴りがキャッチされ着実なポイントにつなげられた。これをやられてしまったわけです。
ポイントを取ってからの後半、平安は明らかに相手の攻撃を封じ、優位に試合を進めていたと考えますが、前に出てこない相手に効果的な打撃はなかなか合わせられず、かといって不用意な接近は自滅の道と、挽回につながる攻撃をすることはできませんでした。無論、ステップワークでコリャンをそれなりに追い詰めていたとは思いますが、効果といったポイントにつながるものではありませんでした。

この、旧ソ連圏選手のしのぎあいで着実に勝つことができる力というのは、結局、選手層の充実、言い替えれば強敵が多いということによっているのではないでしょうか。

平安の準々決勝、アゼルバイジャンの選手も、平安は効果をとって危なげなく勝てたように傍目には見えますが、平安によれば身体能力はコリャンに勝るとも劣らない選手であったとのことです(一国の代表ですから、それくらいの力量は当然であるかとも思いますが)。
旧ソ連圏選手の強さは、強敵とのしのぎあいのなかで、着実にポイントで勝つ能力が身体化されていることにあったと、軽量級に関しては思います。
強化合宿においても、「相手の隙を突いて勝つ」ことは徹底して強調されており、平安−コリャン戦は、そのお株を奪われた形です。
我々なりに「勝利の方程式」を構築、身体化し、あの舞台でそれなりに実現できていたことを考えると、今回の敗北は大変に悔しいものがあります。

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3)今後、日本が勝つ為にはどうすればいいか?
神山支部長

考えが重なりますので、同じ回答をします。

この問題の関しては、一言では語れないし各選手の思いもあると思います。無責任な事は言えませんが、私個人の考えを述べさせて頂ければ、よくいわれている体格等の問題もありますが、空道という競技の捕らえ方だと思います。 空道は打撃、投げ、寝技といったトライアスロン競技の様なものです。総合的に何が欠けてもゴールすることは出来ません。全体的な技のバランスが必要。 しかし全てにおいて一流になる必要はありませんがバランスです。


日本独自の空道スタイルの確立
1.ボクシングとは違った突きのスタイル(長田支部長やコノネンコ師範代の出し方や膝の使い方等)
2.柔道とは違った打撃からの投げや体を崩す技、崩してからの投げ技の習得。柔道ではなく日本空道独自の技の開発と習得を目指す。


簡単にあげれば以上です。 先にあげた歴代選手も含め、他選手の技の真似をする必要はありませんが、技の基本理論を学び、自分のスタイルに取り入れ、独自にアレンジして血や肉にするべきではないでしょうか。

キックスタイルや柔道スタイルをそのままを持ち込んでくるのでは通用しません。特に海外勢との戦いや世界大会、ワールドカップでは通用しない事は結果として答えは出ています。2年後の「第四回世界大会」に向けて、日本人独自の日本空道スタイル、技の確立なくしては勝因ないのではないでしょうか。 強化練習も同じ階級同士との稽古ではなく、二階級上の選手と稽古を重ね技の習得や工夫すべきではないでしょうか。(ご承知の通り、海外勢は同じクラスでも力が二階級上と同じです。)

コノネンコ師範代

組織的に練習量を増やす、2週間の合宿、等が現実的にできない状態であれば練習をもっと計画的にするべきだと思います。
今の合同練習は技の講習会か、スパリング中心という形を持っていましたが私の想像する計画的な練習というのは:
選手がそれぞれの得意と苦手なところを持っているので先ずそれを分析する。得意なところを最大限に発展させる(どんな相手にでも、どんな状況でも効かせる技)、苦手なところをできるだけカバーするように

1人1人の選手の戦法を変えるためにどのような練習が必要か考える。人の行動を変えることなので時間がかかります。
数週間のトレーニングプランを作成して選手に徹底させ、その忠実な実行を求める。

いくら技がよくても前にでるために自信が必要であり、自信を持たせるためにスタミナトレーニングと体力作りトレーニングも徹底させる。

村上支部長

一階級も取ることができなかった、という事実を厳粛に受け止めなければならないとまずは思いますが、冷静に考えて、一昨年の第三回世界大会と比べた場合、日本選手団は一昨年以上の活躍をしたのではないかと思います。

すべての試合を見てはおりませんが、旧ソ連圏相手に、日本選手団は互角の試合をなしえていたと思います。日本選手の実力は、世界大会時と比べ、飛躍的に向上していました。このことは、総本部主催の強化合宿の成果であると思いますが、強化合宿を成果あるものにしたのは、何より、「世界大会の経験」であったと思います。世界大会から二年も過ぎないうちにワールドカップがあったこと、言い替えれば、世界大会を経験していた選手の体が世界の壁を記憶していたこと、世界大会の熱気がまだ冷め切っていなかったことが、強化合宿における選手、そしてコーチの練習に対する真剣な取り組みにつながったのではないかと思います。
その意味で、第三回世界大会の経験は多少なりとも、いや大いに生きた、と考えます。

常時世界大会クラスの選手がせめぎあいをしている旧ソ連圏に対し、日本選手がせめぎあいの経験を積むにはやはり、世界大会クラスの大会で経験を積ませ、その経験を強化合宿等においてフィードバックせしめ、選手団として共有し、活かすことが必要と思います。世界経験の日常化、これが大切と思います。

上記の、海外での経験を活かすということは、すでになされてきたことですが、これからは、(無論、海外における普及が重要であることはいうまでもないのですが)海外における普及に加え、日本選手の実力向上を中心的な目的とした海外遠征をさらに一層推進し、その上で、海外経験を国内にフィードバックする作業を自覚的に遂行していく必要があると考えます。

今回の強化合宿の方針(私の見たところですが)、身体能力・体力育成の重視+試合に勝つテクニックの練成については、その方向性に間違いはないと思います(それしかないともいえると思いますが)。「力をつけて技で勝つ」これしかないと思います。体力も、技術もまだまだ向上できます。それと、世界大会当日に最高のパフォーマンスを可能とする年間レベルでの練習スケジュール作成も、代表選手には必要と思います。
体作りの時期とパフォーマンス向上の時期(無論両者は相互に密接に関連しているのですが)を自覚的に分け、ウエイトに力点を置いた体作りに対し、自重を生かした体力・反応力練成(強化合宿でなされていた補強がこれにあたると思います)ミット、対人での技量向上を目指す、パフォーマンス(技術+スタミナ)重視の練習を試合に向けて行うといったことが必要であるかと思います。体に筋肉をつける時期と、つけた筋肉を体になじませる時期を自覚的に分け、いずれに練習の重点をおくか、各選手が年レベルでスケジュール調整をする必要があるかと思います。

上記は、世界の舞台で勝つ選手を育成するために、
      ・海外での経験の蓄積と国内へのフィードバック。
      ・「力をつけて技で勝つ」 海外経験をしっかり活かす機会をもつ、強化合宿等の定例開催。
といった内容の意見ですが、基本は、国内における選手層の充実にあると思います。

「優勝」という「結果」につながらなかったとはいえ、アウェイで戦った日本選手団の活躍は、胸を張って情報宣伝していいと思います。国家的支援、企業のバックアップ等、ロシアに一日以上の長があることは否定できない事実ですが、逆輸入が興隆をもたらすということも日本の場合にはよくあることです。今回のロシアにおけるワールドカップの結果については、国内において積極的にアピールすべきと思います。大会DVDの頒布、販売等も含めて、今回大会の具体的な内容紹介を積極的に行い、空道の魅力をアピールすべきと思います。
国内における空道の認知度アップにつなげることが必要と考えます。

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