今回は塾長不在のセミナーのお供(初)で、塾長がいないという点ホッとした半面、高橋師範の通訳兼セミナー事務方、ということで、出発前から一にも二にも大変緊張しての遠征でした。新宿支部での移動稽古(・・・のみならず?!)の厳しさで知られている高橋師範との5日間、思い返せば今もなおも緊張ですが、「出来る限りの事で役に立てるよう真っ向からぶつかって行こーっ!」と心に決め、師範と成田空港で合流です。
成田を経って約13時間、ミラノ着が現地時間の19:00(日本時間 2:00AM)。 「眠い・・・」と思いながら、22:00発バルセロナ行きの飛行機を搭乗口で待っている間、ふと高橋師範の一言。「イタリア人も似たような風貌のが多いし、それにしてもあの大きい後姿はレッチ(Lecci)(イタリア・ローマ支部の支部長)にそっくりだな。」「あーっ、ほんとですねー!」なんて目で追いながら、「さっきも何人か似てる人いましたけど、ノシノシした歩き方とかお腹の感じとか、あんなに似てるなんて、イタリア人の中にいるとたくさんレッチ支部長がいるみたいで、なんだかウォーリーを探す感覚に似てますね(笑)」なんて言っていると、そこに空道バッグをもったイタリア人2名が合流。「!!」「あれはそうだよな(笑)」と師範と笑っている間に、不思議と疲れも吹っ飛ぶ。イタリア組3名はすれ違いざまに当然気付くかなーと思っていると、まったく気付かず、なんと師範にまでも気付かず・・・。「まずいのでは・・・」と思いながらも、師範から、疲れているし明日のサプライズにしよう、ということになり、一方的な形ですが一応イタリア支部とここで合流。
24:00 バルセロナ着。横井先輩と合流。無事到着はしたものの、私は、今回のような、そう頻繁にはない技術セミナーでの単身通訳で「大丈夫かなぁ、どこまでやりきれるか・・・」と出発前からのドキドキは尚も収まっておらず、時差と睡眠などを無意識にも気にし始めてしまうと、益々ドキドキがつのる。師範に時差について話しかけると、「海外で時差は考えちゃダメなんだ!」と一喝。「・・・ですよね」で、すっきり解決。それでもドキドキは冷めやらず。何せ出発前の師範の一声に端を発し・・・。遡る事、出発の数日前、総本部にて、塾長と師範が偶然すれ違った際のやりとり、
師範「今度の遠征、由美子は道着持って来るんですよね?」
塾長「・・・?ん、ああ、そうなのか、それならそうだな、それならよろしくな」
と大雑把な受け答えで、
塾長からの連絡「お前、スペインで練習するのか?そういうことになってるぞ」
「・・・・・・え?!あの、、、全く聞いてないので・・・」と言うにも時既に遅しで、
「せっかくだからやってこい、基本と移動くらいできるだろ、そう返事してしまった」と塾長。
実はですが、一応十数年前に休会したまま残っていた、僅か一年間ばかりの籍があり(泣)、また、塾長に言われて、月一回程の気分転換程度の基本と移動を見てもらっていたこともあり(泣)、まさかそれがここになって自分の首を絞める事になるなんて・・・、と、思ってみても遅いので、覚悟を決めて、十数年ぶりの集団稽古に参加する流れに。スーツケースを詰めながら、「道着、なかったら大分軽いのに・・・」と、往生際悪く考えながらも、出発時には諦め、すっかりドキドキを倍増させ成田を飛び発っていました。
今回参加予定だったフランス支部が急遽来れず、空道に興味を持っていたポルトガルの見学者も連絡がなく不参加、等々となり、純粋にスペイン開催のスペイン支部のセミナーとなりました。スペイン支部のデイビッド(David)支部長は、今回のセミナー開催につき、うまくいくかどうか、開催の準備段階から大分気を揉んで悩んでいたとのことを横井先輩から耳にし、確かに会うなり、余裕なくあれこれ抱え込んでいる様子がひしひしと伝わってきました。
ここにまた当日ですが、空道ロシアの少年大会で優勝歴のあるという18歳のアレックス(Alex)さんも練習に参加。バルセロナの大学に留学するので、スペイン支部に興味を持って参加とのこと。18歳でロシアから単身スペイン留学、練習に飛び入り参加、目力は強めでした。
その他、女子3名の参加や、フルコン団体からの参加が14名、見学者数名も来て、セミナー参加は全36名。終了は夜9:00過ぎ。10:30夕食、横井先輩によると、食事の時間はスペインの一般的な食事の時間にぴったり当てはまっているそうです。
それにしても、皆さんと一緒に練習した後のご飯は格別おいしいんですね。師範からも「そりゃそうに決まってる!」と感動を後押しされ、なお感動。
問題発生・・・。そのため、朝食を食べないまま14:00までの4時間のセミナー通訳はやはりキツイ・・・。ちなみに、スペインの食事文化は、朝はほとんど食べず、ランチタイムが14;00頃、ディナーが21:00〜22:00頃だそうです。4時間のセミナーの間、瞬時にふと意識が飛ぶような状態を繰り返しながら、何度も気合を入れ直し、なんとか師範の説明のスピードに振り落とされまいと、渾身で終了。レベルは全く未熟ですが、内容改善の課題も発見。終了時は、安心というよりも、頭の中が真っ白な感じでした。
今回、セミナー参加者のために、A4で8ページにも亘る、師範作成のテキストブックを事前に配布していて、もちろん、私はこの資料英訳の宿題を出発前に頂いていたので、いくらか単語の選択肢のイメージを頭に広げることができてはいたものの、実際に瞬時にそれらを思い出して使いこなすのはそう簡単には行かず、スピードに付いて行くのに終始精一杯でした。ただ、レベルは低くとも、自分なりに学んで、乗り切れていた気がしました。のは、独りよがりの単なる気のせいなのかもしれない、等と考えるとガッカリですが・・・。
そんな訳で、この日は専らセミナーの訳と撮影に徹していたので体は動かしていませんが、それでもセミナー終了時は、クタクタでした。前例から、遠征日程中の事務方は、練習はせず塾長と海外のペースに合わせて皆さんと食べたり飲んだり続くのが大半なので、師範に「頭を使うとカロリーってどれくらい消費するのでしょうか」と興味本位で聞いてみると、「それは、もしかしたら頭を使った気になっているだけじゃないのか?」と冗談交じり(?)にサラッと返されたので、「ガーン・・・」。ショックは大きかったですが、師範とこんなやりとりを遠征期間中に繰り返していたので日に日に心がたくましくなっていく気がしました。夕方は師範もさすがにお疲れで一休み。その間、せっかくの時間で少しでも、使っていない頭ではなくせめて体を動かそう!(笑)と思い、街へ繰り出す。ピカソ美術館を目指すも、道に迷いながらで、着いた頃にはちょうど閉館時刻。ガッカリでしたが、意外にも土地勘が頭に入り、街の見え方がガラッと変わりました。迷うのもなかなかいいものです、と勝手に一人納得してやるせなさを収めました。
前日の朝のエネルギー不足(?)に学んで、朝食からチョコレートケーキのようなものもしっかり食べてセミナーに臨む。前日よりも技は高度になり、私には複雑化して難易度を増していた気がしましたが、しっかり朝ごはんも食べたので、心なしか気持ちは付いていけている気がしました。思ったのは、説明する方との息の合わせ方や細かいニュアンスの表現が難しく、回数を重ねていく中で、訳すタイミングや言葉の傾向を探りながら今後に繋げていこうと思いました。
4時間のセミナー、休みない師範の熱心な指導のため、参加者の方は、顔は疲れていても、休憩中にメモをとりながら興味深くいろんな技の説明を覚えようと熱心に受講していました。特にスペイン支部のデイビッド支部長からは、選手・支部長としての真剣さ・熱心さが伝わってきたのが印象深かったです。師範が注意・アドバイスしたことはすぐに何でも身に付けて実践し、師範が「デイビッドのタックルがいい見本のように・・・、」と説明すると、疲れた表情の中にも、満面の照れ笑いでした。一方、師範がアドバイスしてもなかなか言う事を聞かない方もいると、時折、師範も苦い表情でした。
セミナースケジュール無事終了。終わるや、「お疲れ様でしたー!」と師範の元へ行くと、師範も横井先輩も驚くぐらい汗だくで、
「やー、思った以上に疲れたね。のども乾いたし、たくさん動いて汗流して、早く練習後の一杯で美味しい昼食だな!」と茶目っ気たっぷりの師範の一言(笑)「・・・あのぉ・・・、わたしは・・・」と、とても羨ましく思い、同時にこの一言、塾長と全く同じような発言になっているのが可笑しく思えました。
昼食後、できた時間でバルセロナの世界遺産、サグラダファミリアへ。師範は、街中で全く関係のない建物を指さしては私に、「お、あれがサグラダファミリアだな」、のようなことがその時以前に2、3回あり、何も疑わず信じる私に、優しい横井先輩が「・・・あ、違いますからね・・・(笑)」「あんなに小さくないですからね・・・」と。毎回それを見ては微笑む師範・・・。本物のサグラダファミリアを目にしたときは、疑う間もなく、「うわぁ、ほんとだ、さすが本物ですね!全然違いますねー!」と驚きましたが、こんな私に見る価値があったのかどうか・・・、もったいない気がするくらい本物の名所でした。永遠に建設中のような様相が魅力的に思えました。
夜、スペイン支部・イタリア支部とのミーティング兼反省会で終了、帰国後に内容を塾長に報告し、無事終了です。
海外遠征に於いて、今回のようなアドバンスのセミナーには初めての参加でした。通常の海外セミナーは、空道を世界に一ヶ国でも多く普及することが目的で、基本と移動稽古が中心ですが、今回のようなセミナーでは、選手を目指す方や、他競技や他流とは異なった、‘空道’のおもしろさに興味をもっている方にとって有用な機会で、世界大会やワールドカップにおいての入賞国の多様化を期待するのにも今後も必要な機会だなと思いました。
印象深かった点は、高橋師範の指導内容で、まず、このような技研のセミナーでも、様々なコンビネーションを紹介する一方、基本と移動の大切さを繰り返し強調されていたこと、次に、空道の差別化(特徴化)や、空道が採用するNHGや拳サポーターなどの意味も説明されていたことで、限られた日程・時間の中で少しでも多くの技を紹介したいと、たくさんの内容を体系立てて組み込ながらも、休憩も利用し‘空道’の説明をされていた師範の熱意は参加された方々にも伝わっていたように思います。最後に、試合前の練習紹介の際に、試合は勝ち負けのみならず精神鍛錬の場、場数を踏めば必ずその結果は付いてくる、など、試合の出場についてアドバイスが印象的でした。
塾長不在の遠征に初めてお供をさせて頂き、塾長の‘体当たり力ずく遠征’と比べて、とても綿密で丁寧な遠征で、また違った視点から勉強をさせて頂きました。またイタリア・スペイン支部のレッチ支部長・デイビッド支部長からも、塾長との、(宴席での)飲んで歌えの気構えとはまた違う、真面目さが一貫して伝わってきて、そのような、空道に対しての誠実さを嬉しく思いました。そして、‘こうあるべき遠征’と思いました(笑)たいてい、塾長のKUDO説法は、宴席で繰り広げられ、一番の山場となります(泣)大道無門の大道塾ですから・・・(泣)
最後に、厳しくかつ温かく見守って下さった高橋師範、スペインでの段取りから何から何まで準備して助けて下さった横井先輩、どうもありがとうございました。たくさんのご迷惑おかけしました点、心よりお詫び申し上げます。今後ともどうぞご指導のほどよろしくお願い致します。
東由美子(総本部事務局)
更新日2011.10.15