【プロフィール】
多田英史 (練馬支部)
今回はインド2度目。インド大好きです。会社の近くのインド料理屋でインドカレー食べまくってます。
北斗旗体力別大会の手伝いで俺はその時、仙台の会場にいた。インド出発2日前の5月5日。ビデオ判定用に設置されたカメラの前に座って、いつものように漠然と試合を見ていた。時間の進行と共に次々と消化されていく試合。自分が試合に出ないとなると、なんとも気の抜けた、間抜けな感じで座ってるオッサンだよ。「20年前はあそこに立ってたんだよなぁ〜」口がポカ〜ンって開いてる。そんな時『能登谷』という名前のアナウンスを聞いたんだ。「あれ、能登谷も出てるんだ〜。そういえば、2日後インド、能登谷も行くんだよな〜。2日後か〜。2日後の今頃、俺もインドにいるんだろうな〜。なんか、不思議だな〜。インド行ったら毎日カレー食うのかなぁ〜。インド、久ぶりだな〜。飛行機墜ちないかなぁ〜」とか頭の中でどうでもいいような事を色々考えていた時、「ボキーッ」と能登谷の脚から音がした。脚が折れた!能登谷の脚が折れたんだよう!うずくまってる能登谷。人があんな風に痛がっている姿、久々に見た。「ノトヤ〜!」能登谷が急にかわいそうになった。皆さんは知らないかもしれないけど、あいつは性格がよくて、真面目で、謙虚な奴なんだ。つまり、すごくイイ奴なんだ。世の中不思議なもので、そういう奴に限って脚が折れたりするんだよ。「能登谷、痛そうだな〜、どんぐらい痛いんだろな〜、かわいそうに・・・」という極めて感覚的、感情的な思考に占拠されている俺は、試合場にうずくまって応急処置をしてもらっている能登谷をじっと見ていた。ふと東先生の方に視線を向けると、先生も能登谷の事見ていた。「う〜ん、先生も心配なのかな〜。やっぱり心配だろうな〜」と、その時思い出したんだよ!「あ、能登谷、インド行けないじゃん!」と心の中で俺は叫んだ。まさか車椅子か担架に乗せていく訳にもいくまい。段々思考が巡ってきた。「インドでは俺が一番下っ端かよ〜」ちょっと不安になった。45歳にもなって下っ端ですよ〜。インド一緒に行く事になっている新宿支部の高橋師範が俺の顔を見て「おい、多田、インドではお前、能登谷の分もちゃんと働くんだぞ!」と言うし・・・・・・。担架で運ばれながら能登谷は俺の顔を見つけて「センパ〜イ、インド行けなくなっちゃった〜。ゴメンナサイ〜」普通だったらちょっと感傷的になって「ううう・・・、能登谷、がんばるんだぞ!」とか涙交じりの言葉のひとつでも掛けてやったかもしれないが、「・・・・・・・・・いや〜、能登谷、一緒にインド行こう!うん、大丈夫だよ、うん」という、ほとんど動顛(どうてん)してるとしか思えない意味のない言葉をかけてしまった。それ以来、これを書いている現在に至るまで能登谷の顔は見てない。
フライトの3時間近く前に成田空港集合だ。200メートル先からでも俺は東先生の存在を認識することが出来るよ。「押忍!東先生、おはようございます!」10メートルぐらい近づいても誰なんだか見分けがつかない人もいるけど、東先生は、200メートル先からでも「あ、塾長だ!」と認識できるんですね。「俺なんかもっと遠くにいる時も分るもんねぇ〜500メートル、1キロ先からでも分るもんねぇ〜」とか、さらにすごいツワモノが塾生の中にはいるかも知れんが、シルエットというか、何というか、「あ、塾長だ!東先生だ!」という認識になるんですね。先生はそういうオーラを出されてるのかもしれないね。
「多田様のフライトはキャンセルされています」チェックインのデスクで航空会社のお姉さんに言われた。「はぁ?それは能登谷の間違いじゃないですか?」すると「いえ、多田様がキャンセル状態になっています。代理店に電話して、訂正して頂けなければ乗れません」ハトが豆鉄砲食らったみたいな顔をした俺を東先生は無表情で見ていた。我々のチケットはインドで手配しているので、インドの支部長に電話で問い合わせるしかない。早速東先生が国際電話するも支部長応答なし。インドは日本より3時間半遅れの時差だ。まだ寝てる時間。とにかく1時間以上、由美子さん、東先生、高橋師範が色々なアイデア出したりして、すったもんだしていた。「お前、トランクの中に入って行け」とか先生の無茶要求とかもありましたな。そうこうしている内、あっという間に搭乗締め切り間近に!
「お前、なんで安心し切ったような顔してんだよ!」と東先生。「お前、違う航空券手配するからな、後で絶対来いよ!来ないと破門だぞ!」その時の先生の目が怖かった。「オ〜ス!」先生は、俺がなんとも呑気な顔をしているから、コイツ、もしかして来ないんじゃないかな?と思ったのだろうか?ところがどっこい、俺は海外に行くのが好きなのだ。なので、どうやっても行きますよ!何で海外行くのが好きなのか?いくつか理由はあるが、まずひとつは、電話とかメールから逃げる事が出来るでしょ。日本にいると追いかけられっぱなしでしょ。ウルサイッつうんだよ!海外に行って電話、メールほとんど電源入れないんですよ。せいせいするね!もうひとつ、良く眠れるんですよ。海外だと熟睡できる。どんだけ日本でプレッシャーに押しつぶされてるのかな!タコ社長はつらいよ!おまけに今回インドでしょ!インド肌に合うし!みんな親切だし大好き。カレー美味いしなぁ。一人で飛行機乗るのは慣れてるし、今回は現地に到着すればインド支部の人が迎えに来てくれるし大丈夫!大丈夫!たまには独りで読書したり妄想にふけったりしながら、一言もしゃべらずにインド入りするのも良しじゃ!
カンダーラというムンバイから200キロか300キロぐらい離れてるリゾート地に俺は到着した。今回我々が呼ばれたインド支部の合宿場は学校の建物だった。車から降りると青やら白の空道着を身につけたインドの少年少女がワンサカいる!皆、俺の顔を見ると「オス!」と言ってお辞儀しながら挨拶してくれる。なんて礼儀正しいんだ!こんなの、日本では夢のまた夢だよ!家庭で苛められ、職場でバカ社長とか後ろ指差され、飲み屋で部下にボロクソ言われ、飲み屋の女に金を巻き上げられ、ズタボロだよ!スッテンテンだよ!そんな汚れたフンドシみたいな俺に「オス!」なんて挨拶してくれる。「ウン、このままインドに住んでもいいんじゃないかな〜」とか思うの当たり前でしょ。どんだけ日本で惨めなんだよ俺は!
俺より半日ほど前にインド入りしている先生一行は、すでにセミナー会場で指導しているらしい。とりあえず、到着のご報告をするため、講堂に行くと舞台上に先生の姿が!
「押忍!先生、到着いたしました!」成田からアブダビ経由ムンバイ入り、そして車で2時間でカンダーラ。家を出てから24時間近くかかっての到着です。「あ、着いたか。うん」先生目の端に自分を捉えると、指導に集中してるいつものように、すぐ生徒に向き直った。先生の姿の奥に見たことあるような顔の白人が。ファビオだった。彼とは一度、世界大会の飲み会で会った事があるのだ。フランス出身でシンガポール在住の銀行マン。総本部に所属していた塾生だ。「どうやら、俺が一番下っ端というわけではなさそうだな・・・」
その日は少しセミナーに参加して、夜はちょっとした飲み会。さすがに俺も疲れてたのか、その時、話していた内容は何も覚えていない。でも、その晩はここ数年味わったことのない熟睡を楽しんだ。次の日の朝まで眠ることの快楽をとことん貪ったわけです。
驚いたのは東先生の英語指導だ!セミナーの後の昼食の時、先生に聞いた。
天骨(多田)「先生、あの、先生の英語指導は、フォーマットみたいなものがあるんですか?」
塾長「ああ、あれはその場でのノリだな。特に決めたものはないよ」
天骨「すごく解り易かったです。もう、慣れたものですか?」
塾長「そりゃー、プロだもん。当たり前だろ!!でもな、学校英語としては、70点位だろうが、これで食っているんだからな、分り易さには自信を持ってるぞ、エヘン。」
東先生は年に何回も海外に指導に行っているわけで、英語もペラペラ。基本稽古から移動稽古、空道の概念まで流暢な英語で表現する。この様子は俺が撮影した動画を見てもらえればいいだろうな。
先生の指導の元、基本稽古をするインドの空道生徒。将来が楽しみです!
滞在中はセミナーだけでなく、試合の審判したり、観光したり、毎晩パーティーしたりして毎日楽しく過ごしていた。そういう事は由美子さんとか高橋師範が書いてくれるだろうから、俺独自の視点で後いくつか感想を書く事にしますね。
まず今回驚いたのはファビオさんだ。彼は35歳とか言っていたが、フランスのエリートですよ。エリート!フランス語、英語、日本語、もしかしたら、その他の言語も喋れるかもしれない。詳しい事はよく解らないが国際的な銀行に務めていてということで、この時点で俺とは社会的に真逆ですな。日本語もよく話せないドン底のタコ社長と棲んでる世界が違います。彼は今回すべての通訳を完璧にこなしたし、東先生が何か質問したら完璧に答えた。「おい、今日行った観光地の遺跡なんだっけ?」と先生が聞くと「オス!○○○○○です」とすぐ答える。なんで「○○○○○」と伏字にしているかというと、俺は今現在でもどこに行ったのか分らないし思い出せないからです。時々酔っぱらうと、自分がどこにいるのか、さらに自分が誰なのかも解らなくなる俺が、行った場所なんか覚えるわけないですね。
おまけに彼は今回黒帯の審査受けたのだ。おそらく15人以上はインド人生徒と闘ったと思う。途中口から血を流してもマスクを取ろうとしない根性の持ち主だよ。大したもんだよ。おまけに酒飲むと踊るし、歌うし。酔っぱらうと結構ブッ飛んだ事を言ったりする!もう完璧な男ですよね!逆立ちしても勝てませんよ!世の中には恐ろしい男がいるもんですねぇ〜皆さん。
夜は毎晩パーティーだった。ホテルの中に宴会ルームのような部屋があって、ここにDJセットを持ち込んでインド支部の幹部の人たちが踊るわけです。幹部といってもみんな20代から30代で若いですね。インドと言えばテクノトランスが本場ですが、彼らはみんな、踊りまくりです。俺も中に引っ張り込まれて踊ってたんだけど、すごいんですよ、何がって、みんな本気で笑ってるんです。手なんかバンザイしちゃって「ワハハハハ〜、」って。本当に腹の底から笑って踊って歌ってる。これ、日本人は中々できない人が多いんですよ。日本にいてもそんなに笑う事ないでしょ。笑う事忘れてんですよ。俺が笑ってるの見たことある人はいるかもしれないけど、目が笑ってないでしょ。まあ、笑ってられないような複雑で深刻な状況になってるという事もあるんですけどね。
とにかくこのインドのパーティーで最初は吊られて笑ったりしてたけど、途中からあまりにも皆が笑ってるもんだから本当に可笑しくなってきて、俺、笑っちゃいましたよ。笑ったの久々だね〜。
というわけで、色々ありましたが書き出したらキリがないので、俺が編集している『ドラゴン魂』(発売元 オルタナパブリッシング )の第2号にもページを作ってインド遠征の事書こうと思います。動画も収録すると思いますよ。
それにしても、インドは大好きな国ですね。ちょっと別件でまた行く予定なんですが、友達も沢山できたし、再会が楽しみです。今回の遠征ではファビオの10分の1ぐらいしか役に立たなかったけど、今後もインド空道の発展の為に何かしたいと思います。今、こういう事を机に向かって、仏頂面して書いてるんですね・・・・・・。「もう、何もかも捨てて、インド行っちまうか!住んじまうか!」今後、日本で苦々しい思いをした時は、そういう事を考えて己を慰めることにするか。オッサンにも逃げ場残しておく必要あるでしょ!
道着を着ていると本当に礼儀正しいのだが、最後のサヨナラパーティーの時、
子供たちの好奇心が爆発した! 取り囲まれて握手攻め!
2015.5.21更新