文責 全日本空道連盟広報部・朝岡秀樹
写真 全日本空道連盟広報部 はいチーズ
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[総評]
韓国・モンゴル・インド・タイ・日本の選手によって争われた今回のアジア選抜大会は、2023年5月13~14日に国立代々木競技場第2体育館で開催される世界選手権に向けて、日本代表を決める最終選考大会であった。コロナ問題による活動(日々の稽古・大会)休止期間が生じたことに加え、空道創始者である東孝・大道塾塾長が逝去されたこと、ロシアのウクライナ侵攻により社会・スポーツ界での国際交流が難化したこと……と、三大ショックに見舞われたなか、長田賢一・第2代大道塾塾長のもと、あらたなスタートを切った運営陣による大会は、試合場のライティング(照明)などにも、選手を引き立てる工夫がなされた、出場する選手、観る側、双方へのホスピタリティー溢れるものであった。「これなら、数十か国とやり取りをして、選手を招聘~アテンドせねばならない世界選手権も、無事に開催できるだろう」と運営陣に対する安心感は高まったが、一方で、肝心の選手の方はどうか? 各階級「これなら世界と闘える!」と思わせてくれたかどうか……。
[アジア空道選抜選手権 ダイジェスト]
■男子-230
全日本連覇記録(2022年でV7)保持者・目黒雄太(大道塾新潟支部)を、前回アジア選手権の王者・谷井翔太(大道塾横須賀支部)が、再延長で退けた。これで、両者の通算対戦成績は、5戦して谷井が3勝、目黒が2勝。円熟のツートップは、U19カテゴリーから昇格してきた活きのよい若手の出場が目立った今大会を「お互いに壁になろう」(目黒)「決勝でやろうよ、負けんなよ」(谷井)と声を掛け合って迎えたという。決勝を終えた後は、若手に対しては「穴がないわけじゃない。彼らはまだこれから」(目黒)、「やることが多い競技だから、まだまだ、身に着けるべきことは多いのかな、と」(谷井)と、貫録をみせる一方で、前回世界選手権で、目黒、谷井、中村知大を連破して王者となったウラジミル・ミロシニコフに対しては「現時点で、もう一回やれば勝てる、というような感覚はない」(谷井)「私たちが国内の若手にやるように、ここを取れば大丈夫というところを計算している」(目黒)と、気を引き締めていた。それでも「優勝を狙います」(目黒)「230は日本が守ってきた階級なので、取られた時期もありましたけど、絶対にそこは譲れない」(谷井)と世界王座奪還へ向けての覚悟は揺るぎなかった。
1回戦、目黒(青)は、腰車(首投げ)からキメ突きで効果を奪い、小芝裕也(大道塾名古屋北支部)に本戦旗判定5‐0で勝利。小芝は2019全日本準優勝のトップコンテンダーであるだけに、世界選手権最終選考大会の初戦で目黒と対戦し、世界への道を断たれるというのは、気の毒な気もした。初戦がこのようなトップ選手の対戦だったり、新人同士の対戦だったり、海外選手同士の対戦だったりするケースが今大会では多々あったが「実績順に上位2名をヤグラの両端に配置し、次の上位2名をその対抗の位置に配置し、それ以外の配置は恣意的要素が入らぬようランダムに……」といったトーナメント作成のルールを定めるべきではないか?
1回戦、中川昇龍(青・大道塾岸和田支部)と田口洸輝(大道塾仙南支部)の20歳同士、キャリア10年同士の東西対決は、積極的な打ち合いの末、中川に旗が3本、田口に旗が一本上がり、主審は中川の勝利を宣告。
1回戦、18歳の佐々木龍希(白・大道塾総本部)は、ジュニアルール王者(2021・22U19-230)ならではのハイキックと、アマチュアボクシング経験者ならではの速いパンチで、大道塾札幌西支部でムエタイの技術を教えるソムチャイ・ヌアナーから本戦旗判定で副審3本の旗を得て、延長旗判定5-0で勝利。
1回戦、谷井翔太(白)は、左ストレートで有効と効果を奪い、本戦で板敷宗治(大道塾札幌南支部)に勝利。
準決勝、目黒(青)vs中川は、本戦で目黒が3本の旗を得るも引き分け。延長戦終了17秒前に目黒がマウントパンチで効果を奪い、勝利を決めた。
準決勝、谷井(白)は長い蹴りの攻防から、一気に前に出て頭突き、密着してのヒジ打ちからタックル、寝技……と、遠間と近間の攻防だけを選び、中間距離での打突の優れる佐々木につけ入る隙を与えない。ベテランならではの戦略的な展開で、本戦で旗3本、延長で旗5本の勝利。
決勝、今大会唯一の再延長、9分間に渡る激戦の末、 延長戦終了のブザーとほぼ同時の右フック(サウスポースタイルの前拳フック)で効果を奪った谷井(白)が目黒を制した。延長戦中盤までの展開では、投げ技の攻防をはじめ、目黒が競り勝っている場面も多く、谷井自身「制圧されているな、と思い、判定では負けるな、なんとかしなきゃな、と」思って勝負をかけたとのこと。あっぱれ。
■男子-240
U19全日本優勝の経歴を経て、昨年、一般クラスにデビュー、いきなり全日本決勝進出を果たした遠藤春翔(大道塾総本部)。昨年はその決勝で谷井翔太に敗れ、今年も全日本決勝で伊東宗志(大道塾日進支部)に敗れ……と足踏みが続いていたが、今大会の決勝で伊東にリベンジを果たし、遂にビッグタイトルを獲得した。遠藤は、今回の大会前に「この大会で優勝して、競技生活にひと区切りをつけたい」と宣言してが、本当にそうなってしまうのだろうか? 日本代表最終選考大会を制した者が世界選手権出場を辞退しようとしているこの状況、2018年の世界選手権でこの階級の日本人としてはただ一人ベスト4に進出した服部晶洸(大道塾横浜北支部)、同じく世界選手権代表であった曽山遼太(大道塾岸和田支部)、2019年の全日本王者・寺口法秀(大道塾大阪南支部)、2009年の世界選手権に出場し、2014年の世界選手権では出場権を逃し、2018年に日本代表に復活し、2023年に再度の代表権獲得を目指した田中洋輔(大道塾御茶ノ水支部)ら、出場権獲得確定を逃した者たちは複雑な心境なのではないだろうか。-230優勝の谷井は、ジュニアクラス出身者が早熟な分、早期引退する傾向に対し「ここで燃え尽きてんじゃねぇよ、とは思います」と語っていたが、遠藤にしろ、5歳からはじめて、小学生時代から、通常の稽古に加えて、1日3時間に及ぶ自主練習を週5日行って、20歳とはいえ15年のキャリアをもつのだから、心がすり減るのも無理はない。遠藤の気持ちが翻ることを願う一方で、彼がこのまま第一線を退くのであれば、それがジュニア競技の在り方を考えるよき契機になればよいとも感じる。
1回戦。春の全日本をコロナ罹患により欠場した服部(白)は三日月蹴り、アキレス腱固めとテクニカルな攻め、一方の田中は圧力を掛けて前に出る闘いを展開し、本戦旗判定は旗3本が田中、1本が服部に上がるスプリット。延長終了13秒前に右ストレートで効果を得た田中が勝利を決めた。
1回戦。豊田隆興(青)をハイキックで脅かし、支え釣り込み足→キメ突きで効果を奪った曽山が本戦旗判定5-0で勝利。
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1回戦。寺口は三浦敏彦(白・大道塾木町支部)から投げ→キメ突き、掴んでのパンチ、ヒジ打ちでそれぞれ効果、パンチと左ミドルの連係でダウン(有効)を奪い、本戦で勝利。
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2回戦。遠藤(青)は田中のタックルや、カウンターの左フックなどに苦しめられながらも、打撃戦で攻勢を保ち、本戦旗判定5-0で勝利。
2回戦。曽山(青)とハヌル・パク(韓国)の対戦は、美しい上段蹴りの応酬となり、曽山が本戦旗判定5-0で勝利。
2回戦、伊東(青)vs寺口は、本戦で寺口に旗が2本、伊東に旗が1本挙がり、副主審と主審が引き分けを支持する拮抗した展開。延長で、伊東の右ストレートに寺口が一瞬、腰を落とし、勝負あり。伊東は春の全日本に続き、9月開催のパンアメリカン大会でも優勝するなど着実に実績を重ねており、激しい打ち合いが続く中で後半にパンチをねじ込む集中力を身に着けている。
2回戦、モロムジャムツ・エンフバット(白・モンゴル)は、オウム・タコレ(インド)を豪快に投げ、腕十字を極め、本戦勝利。
準決勝、曽山(白)vs遠藤。ジュニア選手権で優勝を重ねた者同士、23歳の曽山(白)と20歳の遠藤の対戦。一進一退の攻防の中、遠藤が右ストレートで効果を得て、本戦旗判定5-0勝利。
準決勝、伊東(青)vsエンフバット。エンフバットは左右のハイキックや右ストレートをヒットさせ、本戦は旗1本を奪う(伊東に旗2本、副主審・主審は引き分けを支持)。延長で伊東が右フックをヒットさせ、効果を奪い、勝利を決めた。全日本のディフェンディングチャンピオンから旗を奪うモンゴルの選手の強さ、伊東の後半戦での集中力の高さ、どちらにも感嘆。
決勝。前後へのステップで間合いをはかり、サイドへの回り込みで死角からパンチを突く伊東(白)に対し、遠藤は打ち合いを避け、コンパスの長さを活かしたハイキックや下腿へのローキック(いわゆるカーフキック)に繋ぎ、間合いを潰しては大外刈りなどの投げ技へ。組み付こうとする遠藤に伊東は右アッパーで迎え撃つが、遠藤は支え釣り込み足からのキメ突きでポイントをゲット。延長旗判定5-0で勝利を収めた遠藤、気になる去就に関しては「いろいろみなさんにも言われていますので、しばらくゆっくりして、自分の気持ちを整理してから、一から考えたいと思っています。寮生になって(卒寮となる3年目を迎えているのに)実績がなくて、プレッシャーで苦しかった……」とのこと。
■男子-250
昨年2021年、18歳にして全日本準優勝、今年、全日本優勝を果たし、この階級の日本のエースの立場に躍り出た小野寺稜太(大道塾総本部)が、その後、コロナ感染の影響で血栓症を発症し、今大会を欠場し、世界選手権に出場できるかは、今後の回復具合と、強化練習における査定試合の結果次第になるであろうという状況となった。そんな中、決勝に進出した寺阪翼(大道塾総本部)は、空道以外の格闘技キャリアがなく「中学時代に『はだしのゲン』を読んで(中略)自分は間違った教育を受けているのではないか、そもそもそんなことを考える自分が異常なのではないか……と悩み、それから人と話せなくなって、自室に引きこもって親と対立し」青森に住む祖母の下で暮らすこととなり、高校時に八戸で入門して以来、大阪、東京と各地区の大道塾道場でキャリアを重ねてきた26歳。一方の佐川太郎(大道塾仙台東支部)は、2019年にシニア(いわゆる壮年部)の全日本を制し、その後、一般カテゴリーに挑戦し、この春、その全日本選手権でも準優勝を果たした〝オヤジ・ドリーム〟47歳。キャラの濃い二人のアジア頂上決戦となった。
1回戦。佐川(青)は2022全日本空道シニア選抜選手権・重量級優勝の平田裕紀 (大道塾東中野支部)から右ストレートで効果を奪い、タックルを決め、本戦旗判定5‐0勝利
1回戦。東北予選優勝の高橋直人(白・大道塾仙台東支部)はシタンシュ・シェスに絞め技を掛けるが、立ち姿勢から頸椎に負担を掛ける方向への引き込みながらの展開とみなされ、反則扱いに。その後、腕十字で一本を奪った。
1回戦。寺阪(青)は西日本予選優勝の中村凌(大道塾日進支部)を腕ひしぎ裏十字固めに捕える。一本を奪うには至らなかったが、本戦旗判定5-0勝利。
準決勝。佐川(青)は右ストレートで2回、高橋から効果を奪い、本戦勝利。
準決勝。寺阪(青)vs飯田諭(大道塾大宮西支部)は、ボッコンボッコンのフック合戦の末、本戦旗判定4-1で寺阪が勝利。
決勝、寺阪(白)vs佐川。本戦、寺阪が右ストレートを決めれば、佐川はタックルでテイクダウンを奪いニーインベリー。キメの突きを放たんというところでタイムアップとなり、本戦、両者ポイントなく、延長戦へ。疲れのみえ始めた佐川に、寺阪は掴んだ状態で前蹴りを放ち、効果を奪い旗判定5-0で勝利。
■男子-260
前回アジア選手権で岩﨑大河を後ろ回し蹴りでダウンさせ勝利している韓国のイ・ウォンチョルが今回のアジア大会において唯一人の日本人以外の王者となった。極真空手で茶帯取得後、空道に競技転向したイは、膝のケガにより手術を行ってからまだ100パーセントの回復はしていない状況だという。半年後の世界選手権では、この日以上のパフォーマンスを発揮するに違いない。もはや日本の敵はロシアのみではない。それは、喜ぶべきことでもあろう。
1回戦。押木英慶(白・大道塾新潟支部)vs麦谷亮介(大道塾行徳支部)は、本戦旗判定で3本麦谷に旗が挙がるも、副主審・主審が引き分けを支持。延長では、押木が首相撲からの左膝蹴りで麦谷を宙に浮かせ、延長旗判定5-0.逆転勝利を収めた。
1回戦。イ(白)はニーインベリーからのパンチ連打でドゥルフ・パ二カール(インド)から効果を奪い、絞めで一本勝ち。試合時間約1分。
1回戦。今年の全日本-260優勝者・近藤瑞起(青・大道塾岸和田支部)は、今年の全日本ジュニアU19 -260優勝者・田中衆太(大道塾西尾同好会)を再三投げつけ、ニーインベリーからの突きの連打で効果を1つ奪い、本戦旗判定5-0勝利。
1回戦、宮原譲(白・大道塾東中野支部)は、上段回し蹴り、上段内回し蹴りと、フルコンタクト空手で輝かしい実績をもつ者ならではの蹴り技で東北予選優勝の高橋新(大道塾仙台東支部)を翻弄しつつ、右ストレ-トで2回、マウントパンチで1回効果を奪ったうえ、左フックで技有を奪い、本戦で完勝。空道の選手としての完成度の高さをみせた。
準決勝、押木(青)は膝で攻め、イはタックルでテイクダウン。本戦・延長と両者決め手なく、押木が消極性で1つ金的攻撃で1つ警告を受けていたため、規定により、延長終了時点で、イの勝利が決まった。反則によって負けてしまうことは、実にもったいないこと。世界選手権では出場権が巡ってきたならば、このようなことがなきよう、戦略の準備を重ねて欲しいところだ
準決勝、近藤(白)vs宮原。宮原の蹴り技を凌いだ近藤は、道着を掴んでのアッパー連打で効果を奪い、投げてからの抱きつきで時間を消費し、本戦旗判定5-0で勝利。
決勝、イ(青)vs近藤。本戦、近藤が右フックで効果を奪い、延長では、イがニーインベリーからのキメ突きで効果を奪ってポイント1-1に追いつけば、近藤が掴みからのパンチ連打で効果を奪い再びリード、するとイが再びニーインベリーからのキメ突きで効果を奪ってポイント2-2に追いつき、延長旗判定4-1でイが勝利した。近藤は、ジュニア王者、フルコン空手の実績者……と、難敵を下してきたのに対し、イは、空道の競技レベルにおける後進国の選手との対戦があったことが、残存体力・気力の差をもたらしていたのかもしれない。このあたりの国際大会ならではの現象を乗り越えるだけの力量を身に着けねば、世界選手権での勝利は得られまい。
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■男子 -270
2018年世界選手権明けの2019全日本から2021年まで全日本選手権の最重量級260+クラスを連覇し(2020年は全日本選手権がコロナ禍で中止)、2022年は岩﨑大河に敗れたとはいえ準Vと、紛れもなく今回の世界選手権シーズンの日本のトップであるはずの奈良朋弥(大道塾青森市同好会)が、新人選手に競り負けた。世界の強豪を迎え撃つには、日本のこの階級は脆弱な状況と言わざるを得まい。今後半年の奮起により、5月の代々木でギャフンと言わせて欲しい。
リーグ戦、奈良(青)はインド王者のニシャイ・シャルマから右のパンチで有効1つ、効果3つを奪い、圧勝。
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リーグ戦、西尾勇輝(白・大道塾岸和田支部))は、シャルマから右ストレートで技有りを奪う。そのままシャルマは棄権した。
リーグ戦、事実上の決勝となった奈良(青)vs西尾。0分49秒に右ストレート、1分53秒に右ストレートで西尾が効果を奪い、2分12秒に奈良が右ストレートで効果を奪い返し、2分51秒に西尾が再び右ストレートで効果を再び奪い、本戦で決着。西尾は関西の大学の日本拳法部を経て就職後、空道に取り組み始め、当初は下段蹴りに苦しめられていたが、その下段蹴りを磨き抜き、今やそれが得意技だという。今回の試合でも、ストレートを打つ前の仕掛けとして、効果を発揮していた。一方の奈良は、相手の得意フィールドである右ストレートの間合いでの打ち合いに応じてしまっており、相手の光を消すような戦略の選択が出来ていなかった。
■男子270+
初戦は1分未満で絞め技で一本勝ち、2戦目(決勝)は2分1秒で9ポイントを奪いフィニッシュ(空道では8ポイントを先取するとその時点で勝利)。岩﨑大河(大道塾総本部)が圧勝を収めた。優勝を決めたバックマウントを奪ったうえで仰向けとなり、相手の顔面を直接打撃する技術は、岩﨑自身が審判講習会に出向き、反則でないことを確認したうえで用いたもの。「自分の試合というより、大会全体、試合を観ていて物足りなさは感じました。東先生の掲げた社会体育という言葉を、仕事をしているからこれくらいでいいんだ、という言い訳にして欲しくない。自分も空道の指導とアルバイト(牛丼屋店員)をしながら、限られた時間の中での稽古を積んでいる」という試合後の言葉には、後進の規範となる覚悟が感じられた。一方、対抗馬と目されていた目黒毅(大道塾多賀城支部)は、稽古中に眼窩底骨折を負ったために大会直前で棄権したが、今回のみならず、大会直前やトーナメント序盤戦のケガで棄権することが毎度のよう。大会直前に怪我をせぬよう逸る心を抑えて稽古の強度をセーブするとか、試合においてケガをするリスクの高いやみくもな打ち方をしないとか、そういうことが出来ないことが弱さの表れなのだということを自覚して欲しい。
1回戦、岩﨑(青)はタックルでテイクダウンを奪い、0分52秒で大里佑人(大道塾香取支部)に肩固めで一本勝ち。
1回戦、長沢新(白・大道塾岸和田支部)は“手技”と分類されることの理(ことわり)の相応しさを感じさせる背負い投げをみせ、ヴルティック・デサイ(インド)からマウントパンチで1つ、投げ→キメ打撃で2つの効果を奪い、本戦勝利。
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決勝戦、岩﨑(白)が42秒でマウントパンチによる効果を奪ったのを皮切りに、ハイキックでダウンを奪い、グラウンドでの打撃でも技有りを奪い、僅か2分1秒でフィニッシュ(空道では8ポイントを先取するとその時点で勝利)。
■女子 -220
2017年全日本―215クラス優勝後の膝靭帯損傷により2018世界選手権日本代表争いから外れ、その後、キックボクシングの世界で名だたるトップファイターたちと拳・足を交えてきた大倉萌(大道塾吉祥寺支部)が、2021モンゴル選手権優勝者であり伸びのあるパンチを連打するダヴァジャルガル・プレヴジャブの突進を前蹴りによるストッピングやステップワークでいなし切り、完勝。念願の世界選手権初出場、制覇に向け「ロシアの選手に似たスタイルの選手を捌きながら闘うことが出来たこと、逆に課題がまた、いくつかみつかったことはよかったと思います」と笑顔をみせた。
2回戦。熊倉彩夏(青・大道塾新潟支部)が膝着きの諸手背負いからのキメ突きで効果を先に奪い、パンチもヒットさせるが、ダヴァジャルガル・プレヴジャブ(モンゴル)は右ストレートで効果を奪い返し、ポイント1対1のイーブンで本戦旗判定へ。副審は白に旗2本、青に旗1本、副主審は引き分けを支持し、主審が白……プレヴジャブの勝利を宣告した。
2回戦。大倉(青)は投げからキメ突き、マウントパンチ、中段膝蹴りでそれぞれ効果を奪い、ポイント3-0でインドのナーズ・パテルに本戦勝利。
決勝戦、大倉(白)が、本戦は右ストレートで1回、延長は右ストレートで2回、上段右前蹴りで1回、効果を奪い、ポイント4-0でプレヴジャブに圧勝。
■女子 220+
リーグ戦で争われたこの階級、事実上の決勝戦となったのは、内藤雅子(大道塾横浜北支部)vs小関沙樹(大道塾仙台東支部)。離れては右ストレート、左ミドル、組んでは内股からキメと、常勝パターンにはめ込んだ内藤が完勝を果たした。世界選手権でカテゴリーが設けられるようになってからの4大会すべてでロシアが優勝を独占している女子部門。果たして、日本人初……というか、ロシア人以外で初の女子世界王者は誕生するか?
リーグ戦。小関沙樹(青・大道塾仙台東支部)はインドのヤミニ・パテルに腕絡みを決め掛け、本戦旗判定5-0で完勝。
リーグ戦。内藤(白)はインドのヤミニ・パテルから効果3つ(投げ→キメ突きで2つ、右ストレートで1つ)、有効1つ(パンチ連打)を奪.い、ポイント7-0で圧勝。
リーグ戦。内藤(白)は、コンパスを活かして小関の出際を蹴りで捕え、近づいては膝からの投げで試合をコントロール。延長戦、投げからのキメで効果を2つ奪い、優勝を決めた。
■雑感
今大会、試合場を強く照らし、試合場以外の照明を落とすことで、より選手の闘いを鮮やかにみせる配慮がなされており、さりとてスモークを焚いたり炎を噴射したりポップな曲を大音量で流したりといったプロ格闘技のようなショーアップはなかった。武道に相応しく、かつ選手のモチベーションを上げうるベストな演出だったと感じた。
そんな中で、モンゴル・韓国の選手は目を見張る強さを発揮し、インドの選手は「大丈夫?」と心配になるほどのやられっぷりをみせた。こういったレベルの差が出るのも国際大会ならでは。安全維持への配慮さえ確保されていれば、微笑ましく感じてよいものだろう。
各カテゴリーともかなり絞った人数でのトーナメントとなっており、日本代表は、西日本・関東~信越・東北・九州と、各地区の予選を制した者が選ばれ、予選で上位に入賞しなかった者に出場権が与えられていなかった(北海道は推薦のみで出場)。これも、よいと思った。柔道などでも、全日本体重別~国際大会は各カテゴリー8名ほどに絞った選手でトーナメントを行うことが一般化している。それくらいの方が、大会が間延びしないし、「こんな選手が出られるの?」と思わされるような低いレベルの攻防も少なくなるし、予選大会の緊張感も高まる。
世界選手権の日本代表選考に関しては、今大会の各クラスの試合内容から考えて「重量級は1クラスに日本代表は1名、もしくは出場無し、その分、軽いクラスは多めの人数を出場させる」くらいの傾斜配分が妥当ではないかとも感じたが、そんなことが日本に許されるのであれば、世界各国にも「我々は、重量級が強いから-270に5人出させて。その代わり、-230と-240はゼロでいいから」などといった主張を許さねばならなくなり、収拾がつかなくなるということか。
それにしても、空道の始祖、東孝・大道塾初代塾長は、独自性と面白さを備えた競技(ハード)を創り上げ遺してくれたものだ。これだけ素晴らしいハードがあるのにソフト(選手)を増やすことが出来なかったら、それは、引き継いだ世代の責任だろう。準備せねばならぬ用具に掛かる費用を下げるとともに、連盟に加盟し大会にエントリーするのに必要な手間を減らすことで、大道塾のみならず、様々な所属の選手が空道に親しめるようにしてこそ、その責任は果たされるに違いない。
美しきライティングにより試合が映えたことに加え、青空応援団のパフォーマンスや、白川竜次・神武錬成塾道場長を中心とした合気道の演武も、大会を盛り上げた。
2022 アジア空道選抜選手権大会 結果
入賞者。前列左から、熊倉彩夏(女子-220クラス3位、日本・大道塾新潟支部)、ダヴァジャルガル・プレヴジャブ、大倉萌、内藤雅子、谷井翔太、目黒雄太、遠藤春翔 、伊東宗志、モロムジャムツ・エンフバット(-240クラス3位、モンゴル)、後列左から寺阪翼、佐川 太郎、高橋直人(-250クラス3位、日本・大道塾仙台東支部)、イ・ウォンチョル、近藤瑞起、宮原穣(-260クラス3位、日本・大道塾東中野支部)、西尾勇輝、岩﨑大河
■男子
230以下:優勝谷井翔太(日本・大道塾横須賀支部)準優勝目黒雄太(日本・大道塾長岡支部)
240以下:優勝遠藤春翔(日本・大道塾総本部支部)準優勝伊東宗志(日本・大道塾日進支部)
250以下:優勝寺阪 翼(日本・大道塾総本部) 準優勝佐川太郎(日本・大道塾仙台東支部)
260以下:優勝イ・ウォンチョル(韓国)準優勝近藤瑞起(日本・大道塾岸和田支部)
270以下:優勝西尾勇輝(日本・大道塾大阪南支部)
270超: 優勝岩﨑大河(日本・大道塾総本部)準優勝長沢 新(日本・大道塾岸和田支部)
■女子
220以下:優勝大倉萌(日本・大道塾吉祥寺支部) 準優勝 ダヴァジャルガル・プレヴジャブ(モンゴル)
220超:優勝内藤雅子(日本・大道塾横浜北支部)
最優秀勝利者賞岩﨑大河
[■2022秋期全日本空道ジュニア選手権大会 ダイジェスト]
U16男子-68キロクラス決勝。熊谷慈英(青・大道塾仙南支部)は巧みな足技で佐藤歩(大道塾仙台西支部)からテイクダウンを奪い、優勝を決めた。大人(一般)ルールの技術への移行のステップを着実に踏んでいることが感じられた。
U19男子-240クラス2回戦。佐々木惣一朗(白・大道塾仙台東支部)が佐々木虎徹(大道塾吉祥寺支部)からパンチで効果を2つ奪い、勝利。U19クラスでは、決勝ならずとも、もはや一般カテゴリーと遜色ない技術戦が展開されていた。惣一朗は続く決勝で、佐々木翼(大道塾長岡支部)を下して優勝。それにしても佐々木姓が多い……。
2022秋期全日本空道ジュニア選手権大会 結果
入賞者。
U11女子 34kg以下優勝千葉紗空(登米)準優勝 相内結衣(青森市)
U11女子 44kg以下勝利者楯 らめる(岸和田)
U11男子 34kg以下優勝内藤雄星(新宿西)準優勝檜野 岳(仙台東)
U11男子 44kg以下優勝平山瑛人(多賀城) 準優勝三浦泉海(仙台西)
U12女子 42kg以下優勝相内美希(青森市)
U12女子 52kg以下優勝春本侑里(日進)
U12男子 42kg以下優勝佐藤蓮太(仙台西) 準優勝滝田隼汰(総本部)
U12男子 52kg以下優勝村山陽音(仙台西)
U13女子 42kg以下優勝廣田舞央(弘前)
U13女子 52kg以下優勝菊地菜々乃(仙台東)
U13男子 42kg以下優勝亀田 空(総本部)準優勝島橋陽也(多賀城)
U13男子 52kg以下優勝鈴木奏多(仙台西)準優勝佐藤大峨(総本部)
U16女子 43kg以下優勝五十嵐心桜(三沢)
U16女子 53kg以下優勝槻田ゆい(木町)
U16男子 48kg以下優勝坂本天音(塩釜)
U16男子 58kg以下優勝相原琉唯斗(仙台南)準優勝飛澤周希(盛岡)
U16男子 68kg以下優勝熊谷慈英(仙南)準優勝佐藤歩(仙台西)
U19女子 215以下優勝相内春花(青森市)
U19男子 230以下優勝曽山隆聖(岸和田)
U19男子 240以下優勝佐々木惣一朗(仙台東)準優勝佐々木翼(長岡)
U19男子 250以下勝利者佐藤裕太(横浜北)
※氏名の後ろのカッコ内表記はすべて「大道塾〇▽支部」の略。