2018.11.04
ギリシャ遠征報告
秋田支部長 小松 洋之
押忍
10/12~16、ギリシャでの昇段審査会及びセミナーに指導員として随行させて頂きましたので、ご報告致します。
【ギリシャ共和国について】
ギリシャの基礎データを以下に示す。
・面積 : 約132万平方km(日本の約1/3)
・人口 : 約1,080万人強(日本の1/10弱)
・首都 : アテネ(人口約300万人)
・在留邦人 : 293人
私たちの地域がようやく稲作を始め、地域的政治集団を徐々に形成していった紀元前数百年頃、当該地域では既に民主主義の下、都市国家を運営している。格闘技では、ご存知の通り、打撃と組技を体系化した古代パンクチオンを生み出した偉大な国である。古代パンクラチオンはBC6世紀には競技として確立されており、打撃の練習方法は、「ピリクス」と呼ばれる「型」にも似た反復練習であったともいわれている。近年では、2004年のアテネ五輪、柔道81kg級と90kg級で金メダルを獲得している武道大国でもある。
空道への参加は遅くはなく、2005年の第2回世界大会から選手を送り出している。私は同大会の重量級第1回戦でギリシャ代表のコンスタンティン・ガリウス選手と対戦させて頂いた。たった3分というかくも短く長い瞬間に拳を交えた彼の国の空道の発展に寄与したい、という事が、今回の遠征の参加希望理由であった。
【セミナーについて】
2日間を使用し、同じ受講者へ3回の稽古をした後に昇段・級審査を行った。その為、参加者の顔と志向・嗜好・その時点での実力を適宜把握しながらセミナーを進めることが出来たと考えている。稽古全般、私は、大きく且つ揃った気合を出させ、常に美しい整列を保たせる、という基本中の基本を五月蠅く注意して回る役割をさせて頂いた。
クラス別の講習では、立ち組・投げを担当させて頂いた。受け身や八方の崩しなどの基礎的な事から始め、全員が簡単な連絡技を使える、というところまでを行った。更に能力のある者には投げからの極めや腕十字の指導を行った。毎度の海外指導と同じく、ある程度の修練を積んだ他競技有段者は、皆、基礎の反復の意味を深く理解している為、熱心に行ってもらうことが出来た。一方、この度は、武道や格闘技の経験の浅い若者も多く、彼らの集中力の維持には特に配慮を行った。対策として、肘・膝・頭突を使用し、八方の崩しに、上下の崩しも加えた講習も行った。掴み打撃を持つ空道は、肘・膝・頭突き等の打撃を投げの崩しに使用することにより、八方の崩しを、十六方向にも二十四方向にも展開させる事が可能となる。生意気盛りの若者たちの目の輝きが、その都度増していくことを確認しながら稽古指導する事は、元来教え好きの私にとって、この上もない喜びである。
おかげ様で、現地滞在中は、睡眠と食事と稽古を延々と繰り返す、という夢の様な時間を送ることが出来た。
【昇段審査について】
この国で初めての大規模昇段審査であったため、参加者の技術レベルや覚悟の量にそれなりの差があったことはいた仕方ないと考えている。大半が伝統派空手からの転向組なので、拳を打ち抜く事や蹴りを振り抜く事、仲間の顔面を強打することに戸惑いがあったように見えた。しかしながら、中には数名、組み手の中で自らの補正を成し遂げた者もおり、今後、ある程度の時間をかけて、反復稽古と思考の変換を行えば、皆、適宜、各々の経験を空道に変換出来るだろう。
私たち随行員は、審査の審判を行うのみで、黒帯取得の是非を判断する権限は付与されていなかった為、審査の結果は知らぬところではあるが、昇段を許された者には、ギリシャ空道を担うものとしての責任を果たし、活躍してもらえれば、その昇段を裁いたものとしてこの上ない喜びであると感じている。
【ギリシャ支部の人々について】
私たち日本と同じく、非常に古い歴史を持ち、すべてのものに心が宿っていると考えるギリシャの方々は、同時に、強烈な地元愛に満ちた人々でもあった。ホテルと道場の移動時は、常に哀愁をおびた大音量のギリシャ音楽と美しいエーゲ海があり、この国が、この地域が如何に美しいのかをずっと力説してくれた。強烈な地元愛は歓迎会でも強く表現されていて、全ての面々が、笑顔で乾杯を繰り返す、まさに大道塾・空道的世界が広がっていた。そういう世界を見せられれば、私も居ても立っても居られない。自ら率先して、ヤマジ(ギリシャ語で乾杯)の元立ちを志願した事は言うまでもない。いつも通り、この遠征でも、とても大きな夜を持たせて頂いた。
【日本からの派遣団について】
塾長へ随行するは、飛永北海道地区運営委員長、狐崎東北地区運営委員長、渡辺関東地区運営委員長、神山中部地区運営委員長、の4地区の運営委員長、そして、全日本王者の実績を持つ山田(住友電工同好会)責任者。この度もまた、非常に濃密な修行の旅となった。
4地区運営委員長方から勉強させて頂いた多くのことに感謝する事は勿論であるが、この度の遠征で最も印象に残っている事は、「元気印」の山田君の存在である。一企業人として緻密なISOに携わりながら、情熱的かつ真摯に空道の修行に身を捧げる姿は、その名の示す通り、壮快であり、まさに社会体育を実践しようとしている若者の姿であった。海外セミナーの随行員に、若く強い意志を持つ者が自ら率先して加わる事は、大道塾空道にとって喜ばしいことである。
【まとめ】
欧州スポーツ界の重鎮であるジョージ支部長が、この度、大道塾・空道を選択した事は、非常に重要なマイルストーンとして、永く大道塾・空道の歴史に残るであろう。その記念すべき行事に随行させて頂いたことは、空道家としてこの上ない誇りである。同時に、種を蒔いた者の責任と義務を強く感じるものである。今後も同国の空道の発展に、微力ながら寄与したいと考えている次第である。
【謝辞】
この度もこのような機会を与えて下さった塾長と奥様先生、大道塾・空道にお礼申し上げます。
同行中、様々な気付きや反省を与えて下さった、渡辺関東運営委員長をはじめとする4地区の運営委員長方に感謝致します。あらたに「こういう場の面子」に加わってくれた山田君には、感謝のみならず祝福を送ります。また、このような状態の私を快く送り出してくれた秋田支部の仲間には、お詫びを含め心からのお礼をします。
私たちを招聘してくれたジョージ支部長、ずっと傍で通訳をして下さった宇戸さん、そしてギリシャ支部各位にお礼致します。
最後に、ギリシャ空道の発展のため、自ら進んで同国へ残ってくれた、山田君と私の二つのNHGには万感の思いを込めて感謝を送ります。今まで、私たちの頭部を護ってくれてありがとう。次にどこかで会う日まで、ギリシャ空道をよろしく頼みます。
押忍