2018.10.24   ギリシャ遠征レポート 浦和/北本/大宮西支部長 渡邉慎二

ギリシャ遠征レポート

10/12(金)より16(火)までギリシャ遠征に行ってきましたので、そのご報告です。

最初にこの話をいただいたのが、7月の後半。「ギリシャのアテネで新しく支部が開設されるので、セミナーをやりに行くことになった。誰か協力者を求む」とのこと。

関東地区運営委員長として、各支部長あてに連絡を入れるも、色よい返事は皆無。(泣)

責任を感じて、、、という訳だけでもないのだけれど、私自身、「そういえば、しばらく海外には行けてないなぁ」(※前回は3年前のモンゴルでのアジアカップ)という感じだったので、渡邉家最高師範に平身低頭し(笑)、参加の許可をいただいて、行ってきました。

例によって超長文のレポートとなっておりますが、「渡邉支部長のレポート好きです」と言ってくれる人も何気に多いので(本当か?:笑)、調子に乗っていつものように書きますから、読まれる方は「ご自身で参加した気分」で読んでくださいね。

このレポートを読んで「俺も海外遠征に行きたい!!」って思ってくれる人が一人でも多く出てくれますように。

 

10/12(金)

朝6:45に家を出て、7:00に大宮駅前発のONライナーで成田へ。少し渋滞はあったものの定刻通り9:00に空港着。今日の集合時間は10:00だからかなり早いのだけれど、ちょうどよい時間の便がなかったので、、、。

ネットで事前予約していたモバイルWifiの受取口がなかなか分からず、空港内を右往左往したものの(苦笑)、無事ゲットし、皆を待つことに。

10:00、トラブルなく全員集合。今回の遠征メンバーは東塾長以下、狐崎支部長、神山支部長、飛永支部長、小松支部長、山田(壮)同好会長に私の計7名。

12:15アエロフロートに乗り、中継地であるモスクワへ向かう。約10時間のフライト中は、通路側の席だったのを幸いに、ちょくちょく席を離れて、ストレッチ。偶然だったけれどストレッチジーンズをはいてきてよかった~。

ほぼ定刻通り、、、だったのかな?! 無事モスクワ到着。で、トランジットに約2時間半。

18:40にギリシャに向けて、さぁ出発、、、のはずがいつまでたっても飛び立たない。何がどうしたのかと思って待っていたが、最終的には一旦搭乗した機体から、また降ろされる羽目に。どうやら機体に異常が発見されたらしいけど、この後いつどうなるのか不明。何もできずにただひたすら待つ。「まぁ、飛んだ後で異常が見つかるより、まだいいか?!」と納得させるしかないね?!(苦笑)

結局、用意された別の機体に乗り換えて(?)、無事ギリシャはアテネの空港に着いたのが、予定よりも1時間半遅れ、、くらいだったかな?! 午前0:00を回っています。既に、家を出てからほぼ24時間経過。

で、ようやく着いたと思ったら、宿泊先はアテネ市内ではなく、ここから更に80km先だと言う。マジか?!orz

ほとんど他に車の走っていない高速道路を推定速度130-40km/hでかっ飛ばすこと約1時間。今度こそ、ようやくホテル着。

暗い中で見ても、何かずいぶんオシャレな感じ?! ちょっと大道塾らしくないって思ったり(笑)

ツインルームに二人一組で宿泊、、、の予定だったけれど、私と飛永さん、小松君と山田君のペアはツインが取れずにダブルだと言う。ひぇ~?! でももう何でもいいから、とにかく早く休みたい。

でも実際部屋に入ったら、Wベッドの他にもう一つ、ちゃんとシングルベッドが追加で置いてありました。良かった、良かった。「恨みっこなしよ?!」とじゃんけんの結果、私はWベッドをゲット。

改めて部屋を見ても、やっぱりオシャレだな~。でもシャワー室の扉は閉まらないし、トイレではペーパーが流せない。orz ギリシャでは下水事情が悪いので、使ったペーパーは流さず、備え付けのダストボックスに入れるのが一般的だと、「地球の歩き方」にも書いてあったけれど、、、う~ん、やっぱ嫌だな(苦笑)。

(※ちなみに今回の遠征中、気を付けてはいたけれど、こういうものは習慣的に無意識でやってしまう行動なので、「ついうっかり」ペーパーを流そうとしてしまったこと、数度、、、。その度、そのペーパーを素手で(!)取り出すはめになりました:大泣。)

シャワーを浴びて、就寝できたのは3:30くらい。家を出てから約27時間の長旅でした。疲れた、、、。orz

ホテルの室内の様子。
ホテルの外観。とてもオシャレです。

 

10/13(土)

7:30起床。睡眠時間は約2時間。残りの2時間は眠れずに悶々としていただけ。海外に来るといつもこんな感じですね。ワクワクドキドキ興奮しちゃって。ちなみに昨日の日本でも一睡もできませんでした。遠足前の小学生みたいですね(笑)。途中の機内でも、1時間くらいはうつらうつらとしていたけど、基本ほとんど寝ていません。これは眠れなかったのでなく、寝ないようにしていました。ここで寝ると時差ボケに苦しむことになるのでね。

ま、そんなこんなで二日間合計の睡眠時間が約3時間。身体は少ししんどいけれど、気力は充実。

8:00、ホテルに隣接するレストランへ。明るいところで見ると、やっぱすごいオシャレなホテル。撮った数枚の写真を家族ラインに送ったところ、娘が「え~~~~オシャレすぎる。インスタ映えどころの騒ぎじゃない!!」と大興奮していました。(笑)

ともあれ食事。レストランはオーシャンビューのなんてハイソな雰囲気(笑)。食事自体はよくある感じのバイキング形式なれど、食べ物美味い。チョ~美味い!! 特に野菜が新鮮で美味い。ただの生野菜にオリーブオイルとビネガーをかけただけのものが、こんなに美味いなんて、感激、、、と言うかちょっと衝撃?!

ホテル隣接のレストラン。こちらもとてもオシャレ。

レストランから見えるオーシャンビュー。
ホテルのバイキング。朝からがっつり食べました。

9:40、ホテルからセミナー会場に向け、出発。グーグルマップで調べたところ、この辺はルートラキという都市らしい。ホテルの名前も「ルートラキ・ポセイドン・リゾート」だ。もうちょい先に行くとコリントスという有名な観光地がありますね。

ちなみに大道塾の遠征っていつもこんな感じですね。行きと帰りの飛行機の便が事前に知らされるだけで、どこに行くのか、どういうスケジュールになっているのかも、参加メンバー皆よくわからないままという。(笑)

15分くらいも車で走ったかな?! 「BMW」の名前が冠してある体育館に到着(命名権でも買っているのかしら???)。

ルートラキの位置を示す地図(グーグルマップより)
セミナー前にホテルにて。真ん中の大柄な人は送り迎えをしてくれた方(名前は忘れました:笑)。その隣の方はブルガリアのディンコ支部長。

で10:00過ぎ、セミナースタート。今回、ギリシャ全土(とブルガリア等の周辺諸国からも?!)集まった参加者は約150人。 糸東流、松濤館流等の伝統派空手の人たちが大多数に、フルコンカラテや柔術の道着を着ている人も2割くらい、、、だったかな?! かなり大規模なものになりました。ちなみにギリシャの伝統派空手は、ジョージ・タナスという世界チャンピオンがいたこともあり、結構盛んだと伺っております。もう一つちなみに、今回のセミナー主催者である新支部長のお名前もジョージですね。なんかギリシャではメジャーな名前なんでしょうか???

セミナーに集まってきた人たち。伝統派の黒帯を中心に約150名。

 

余談はさておき、東塾長からの挨拶と私達指導員の紹介の後、実技スタート。

まずは全体での基本、、、だけれども、伝統派の方たちが多いので、予想どおり、両手を挙げて構えさせることすら難しい。orz  狐崎支部長、神山支部長は慣れたもので、すぐに列に入って、手取り足取り(?)、直接指導。私もそうしたほうがいいか?! と一瞬考えるも、それでは前で手本を見せるひとがいなくなってしまうので、そのまま居残り。模範演武(?)をしつつ、前から3列目くらいまでの人をターゲットに時々声掛け指導をしました。

セミナーでの私の指導の様子

あまり「ちゃんとできている」とも言い難い感じなれど(泣)、一通り、基本のパンチと蹴りの稽古が終了。で、今日はここから「打撃」、「投げ」、「寝技」の3部門に分かれて、個別のテクニックセミナーを実施する形とするそうな。あれま、珍しい。今日は合宿形式で進むのね?! と思った次の瞬間、塾長から声が掛かる。

 

「慎二!!」

「押忍」

「寝技だ。」

「押忍?!」

「寝技の指導をやれ。パスガードからだ。」

「お、押忍!!」

 

あちゃ~っ。ギリシャに来る前、いろんな形のシミュレーションをして、セミナーで使うことになりそうな英語を確認してはいたものの、この状況は想定外だった。orz

しかも先ほどまでの進行で分かったけれど、何気にギリシャの人には英語が通じなくて(英語が理解できる人が4割くらい?)結構苦労しそう。ただでさえこちらは怪しい英語なのにさ?!(苦笑)

(ちなみに宇戸さんという日本語、英語、ギリシャ語のトリリンガルの日本人女性が1名、通訳としていてくれてたんですが、当たり前ですが計150人の3グループを相手にするのには、一人じゃ足りな過ぎて、、、。orz)

また先述の通り、今回のセミナーには「寝技経験ゼロの空手の人」と「ブラジリアン柔術経験者」とが参加しています。その両者を一緒くたにして、寝技を指導するというのは、これはかなり過酷な任務。(笑) 「さぁ、これはヤバいぞ。どうしよう?!」と、脳がフル回転を始めます。

まず「何を教えるか?!」だな。一口に「寝技」といっても、本来、空道の理念的には、「寝技の展開にならないよう努める」べきだし、護身術としての側面にスポットを当てるのなら、「立vs寝」を考えなければならない。競技としての部分で考えれば「寝vs寝」のシチュエーションだろうけれど、ただ寝技をやるだけでなく、そこに打撃を組み合わせて「柔術的な寝技の攻防にならない攻防の仕方」を工夫する部分が「空道の寝技」だろうしなぁ。でもそもそも柔術的な寝技の基本ができない、分かっていない人間に対して打撃ありの寝技の攻防なんて教えられないか?! 塾長からのオーダーは「パスガードから指導しろ」とのことなので、通常の競技試合の中での柔術的な「寝vs寝」の攻防を教えるということでOKかな??? 瞬間にバババッとそんなこんなのいろいろなことを考えていると、幸いなことに、「せっかくなので、自分の経験がないグループに参加して勉強してください」とのアナウンスが入って、結果、私のグループに集まった人たちは皆、伝統派空手の道着を着ている人たちになりました。いや~、何か命拾いをしたような気分。ちょっと一安心。(笑)

でも一応、念の為、最初に「今日はvery basicな柔術の技を指導します。空手やキックボクシングのようにstrikingをして、柔道のようにthrowingをして、そして柔術のようにground fightをするのが空道ですから」と断りを入れて、皆の反応を伺う。それに対して、「うんうん」と納得の模様で、「何だよ、そりゃ?! そんなつまんねぇ内容かよ?!」というような反応もなかったので、よし、OK。これでGo!!

「何を教えるか」の基本方針さえ決まってしまえば、その具体的内容とそれを「どう教えるか?!」もすぐ決まりました。チョイスしたメニューは、a)インサイドガードからのパスガード2種、b)横四方からの極め技2種、c)横四方に対し、エビによるエスケープでガードポジションへ、d)ガードポジションからのスイープ2種。

パッと見ていただいても分かる通り、そのままこの順番で攻防が流れるようになっています。

あとはe)マウントからのエスケープまで行ければ攻防が一周して、そのままスパーの形までもっていけたんだけれど、残念ながら時間切れ。

でも全体を通じて、皆、ダレることなく、テンション高めに楽しんでもらえていたようなので、良かったです。ホッ。

セミナー終了が13:00くらいだったかな?! いったんホテルに戻って昼食、、、だけれど、この後、また15:00から2回目のセミナーが待っている。のんびり食っている時間もない。慌ただしいね。(苦笑)

と言いつつ、結構がっつりと食べてしまいました。だって本当に美味いんだもの。これまでセミナーやら試合の審判やらで、いろんなところへ海外遠征に行ったけれど、食べ物はここギリシャが一番だなぁ。チョ~、満足。生野菜も美味しかったけれど、焼き野菜も美味しいですね。

で、午後のセミナー。

準備体操の後は、大道塾の通常スタイルで、パンチはジャブから肘まで通しの号令での基本稽古。2回目なので先ほどよりはましとは言え、全然できていないんだけれど、このまま流していいんかしら??? 時間の制約もあって仕方ないとは言え、これじゃ「基本が大事」っていう部分は伝わらないよなぁ、と思ったり。

形(カタ)を廃止した大道塾において基本や移動っていうのは、大道塾における形であって、、、で「形から入って自在に至る」というのは、日本文化の特徴というか本質の一つだと思うんだけれどなぁ。で、武道というのは紛れもなく日本文化の一つであって、であれば大道塾が武道である、日本の文化の一つであるとの主張があるのならば、もうちょっとこの辺は何とかならないんだろうか??? う~ん???

指導の最中、そんなこんなを考えていたら、あっという間に基本終了。で、また午前と同様、3グループに分かれての個別セミナーを続けますとのこと。いかん、いかん。自分の仕事に集中、集中。

「さっきの続きをやろうかな?!」と考えていたら、「午前に習ったのとは、違うところに行きましょう」とのアナウンスが。そして私の前に来たメンバーの1/4くらい(?)は柔術着を着ているし、、、。orz

さぁ、今度はほんとに困ったぞ。何をどうするか、もう一度頭をフル回転させるも、出てくる結論は同じ。1/4のメンバーのために、3/4に泣いてもらうわけにはいかんだろうな。やっぱり柔術のベーシックを教えるしかないか!?

覚悟を決めて、午前同様「今日はvery basicな柔術の技を指導します。空手やキックボクシングのようにstrikingをして、柔道のようにthrowingをして、そして柔術のようにground fightをするのが空道ですから」と宣言(←今回は午前と違って、どう反応されても知ったこっちゃないわという気分:笑)してから、寝技セミナースタート。

チョイスしたメニューも、午前同様、a)インサイドガードからのパスガード2種、b)横四方からの極め技2種、c)横四方に対し、エビによるエスケープでガードポジションへ、d)ガードポジションからのスイープ2種。今回は基本稽古を流した分、まだ少し時間があったので、加えてe)ガードポジションからのスイープをもう1種類。さらにf)マウントからの肩ブリッジを使ったエスケープ。

寝技が初めての人の為に「寝技の攻防の流れがわかる」ように技のチョイスをしたことは、先にも書きましたが、もう一つ、これらの技のチョイスは「動きや技の原理原則が分かるように」という理由もありました。 a)のパスガード2種は、まったく違うものではなく「一見違う技に見えて、実は同じことをやっている(=相手の脚のロックを切って、その脚をつぶして、上体に攻めあがる)」もの。それからd) e)のガードポジションからのスイープ3種は最初の技を外された場合のテクニックが2番目のもの、それがうまく決まらない場合の対処が3番目の技、といった具合にリンクさせています。そしてf)のマウントからのエスケープも含めて、「下のポジションの人が上のポジションを取り返すテクニック」として考えれば全部一緒なので、先に習ったd) e)と同じ理論、原理原則(=右手と右脚を殺して、右に回す)で対処できることを説明。

これは私の持論なのですが、普通の指導者は個々の技をそのまま、並列して教えてしまうんですね?! すると「群盲、象をなでる」といった感じになってしまう。そうではなくて、まず全体像を説明する。その上で各技がそれぞれ全体像の中のどういう位置づけになっているのか、それを説明しつつ、個別の技を説明する。別の言い方をすれば、技を一つ一つ個別に教えるのでなく、体系づけて説明する。それができるのが優秀な指導者だと思います。

今回の指導内容は、何度も言っている通り、とても初歩的、基本的なものばかりだったので、柔術の経験者にとっては、それぞれ「あ~、もうそんな技は知ってるよ」というものばかりだったでしょうが、こういった風に原理原則に基づいて体系的に指導された経験はあまりないのではないかなと、ちょっと自画自賛。(笑)

頑張ったかいあって、指導終了の際には、(柔術の人たちからも含めて)こちらが戸惑うくらいの熱心で長い、大きな拍手をいただきまして、、、。押忍、ありがとうございました。恐縮です。

そんなこんなで午前、午後とも自分のパートの指導は上手くいってホッとしましたが、参加者と組手稽古(=マススパー)ができなかったのは残念でしたね。ご存知の方も多いと思いますが、今の私の組手スタイルは自身の創意工夫により「あれって古武術ですか?! それとも伝統空手ですか?!」と言われるような、一種独特のものになっています。なので(一見or表面的には)似たスタイルの伝統派空手の人たちとお手合わせをして、自分のやっていることがどこまでどう通用するのかを試してみたかったなぁ。

午後のセミナーも無事終了し、ホテルに帰って一息。その後、歓迎パーティーのレストランへ。

着いてみたら、、、うわっ、すごい大人数だな?! 先ほどのセミナーのほとんどの人が居残ってる模様。

超強烈なギリシャ酒(※おそらく「チブロ」という酒。ワインを作った後の搾りかすを蒸留して作るもので、アルコール度数は約40度)で乾杯の後、食事を楽しむ。スプラキという串にささった肉料理がメイン。これも美味しいね。

画像中央のグラスに入った透明な液体が(おそらく)チブロというギリシャの蒸留酒。

近くの席に座った女性は、元松濤館空手の世界チャンピオンだそうで。よく分からないながら、耳に入る情報をまとめると、たぶん「船越義珍カップ」で優勝した経験があるということらしいです?! (※日本に帰ってからいろいろとネットで調べてみたけれど、残念ながら確認できないまま)。で、そのまま話を聞いていると「金澤先生」だとか「村上(学)先生」だとか、あるいは「拓殖大学」だとか、興味深いワードもいろいろと飛び出して。

その昔、1990年代の末から2000年の頭、ギリシャの空手連盟(※もちろん伝統派)が中心になって「2004年のアテネオリンピックで、パンクレーションの名称で空手をオリンピック競技としよう」という運動が起こったことがありました。それが日本に入ってきたとき、窓口になった(?)国際松濤館連盟宗家の金澤弘和先生は「東君、これはそっちが本職の世界の話じゃないかね?!」と大道塾に話を振っていただいて、国際松濤館と大道塾、両者協力体制によりパンクレーションの推進普及運動に関わったという時期がありました。で、その際、私も金澤先生と村上さんにはご面識を得ていまして。また第一回の全日本パンクレーション選手権の中量級の優勝者は私の生徒(※飯島進弐段)だったりします。それから私自身、空手部ではないとはいえ、一応(?)拓殖大学出身だし、、、。

まぁ、そんなあれやこれやの話もこちらから振ってみたかったけれど、残念ながら込み入った話をできるほどの英語力がないし、それ以上に疲労故(先に書いたように、ここ二日間の合計睡眠時間が3時間:笑)、英語でコミュニケーションをとり続けるエネルギーも残っていなかったので、そのまま話を聞いているだけで彼女との会話は終了。今度来るときはポケトークみたいな自動翻訳機を借りてこようかしら?! どんなレベルで翻訳してくれるか分からないけれど、少しでも助けになればまた違うかな???

もう一人、このパーティー中に話をしたのが、前述の、通訳をやってくれていた宇戸さんという日本人女性。糸東流のマークの付いた道着と黒帯を締めていたので、てっきりセミナーに来たものの、その能力を買われて、通訳の役も急遽やらされるはめになったのかと思っていたら、そうではなくて最初から通訳として雇われてきたそうな。それ故「私もセミナーを受講したい!!」という気持ちを抑えるのが大変だったとか。特に過去経験のなかった寝技については興味津々だったようで、「皆さんがすごく楽しそうにやっているのを傍から見ていて、『私もやりたい~!!』って、うずうずしていました」とのこと。あらら、それはそれはご愁傷様です(笑)。今回は残念でしたけど、せっかくなので、これを機会に寝技も含めた”総合”にもチャレンジしてくださいね?!

「これは常日頃から東塾長もおっしゃっていることですが、、、」と前置きしたうえで、「空手のような打撃系をされている人は間合いが勝負なので、間合いを取ることが習い性になってしまって、普段の人付き合いでも、つい物理的のみならず精神的にも間合いを取ってしまうんですよ」と伝えたら、本人自身、ものすご~く思い当たる節があったようで、彼女の背後に『ガーン!!』という書き文字が見えるくらいに衝撃を受けた模様でした(笑)。

「対して組技系というのは練習自体が人とのスキンシップになるので、そういう部分がなくなるんです」と伝え、更に「でも組技ばかりでもダメです。例えば日本の警官は剣道か、柔道、どちらか習うのが必須になっているんですが、事件の際、暴漢に刺されるのは圧倒的に柔道をやっている人らしいんですね、これは有名な話なんですけれど。なので組技ばかりをやっていて自分に自信を持ってしまうと、悪意ある他者の接近に対しても無頓着になりやすい。だから人間形成の意味でも”総合”っていうのはとても重要なことなんですよ」と伝えるとかなり感銘を受けた模様で、、、。最後にパーティーがお開きとなった際にも、宇戸さん、ススッと寄ってきて「さっき言われたこと、あれからずうっと考えています」とわざわざ伝えてくれました。おぉ、それは良かった。私自身は何ほどのものでもないですけれど、こうやって人の人生に影響を与えられる「何か」を伝えることができるってのは、まぁ幸せな人生だなと、改めて、、、。こういった人生が今送れているのも空道、大道塾のおかげだなぁ。塾長、ありがとうございます。押忍。

ホテルに帰ってからも宴は続き、最初は小松君、山田君との3人で、その後神山支部長も加わり、4人で酒を飲みながら雑談、、、というか激論?!(笑) 噛み合う話もあり、噛み合わない話もあり、、、というかほとんどが噛み合わない話だったような気もするけれど(苦笑)、そもそもが費用と時間と労力をかけてこんなところにやってくるメンバーは、皆「空道愛」「大道塾愛」に溢れている人たちであって、その「愛」の大きさ故に、「空道は、大道塾は、もっとこうあるべきだ」との思いも強いのであって、、、そしてそんなメンバーたち個々の熱い思い、それぞれの信念が「完全一致」することなんかは絶対ないのであって、、、。でも、ものすごく貴重な時間。こういった激論ができるのも海外遠征ならではの魅力だよなぁ、と思ったり、、、。

以下はあくまでも個人的意見ですが、、、私は空道を「武道スポーツ」と定義しています。最近では、東塾長も「空道は武道だ」という言い方が増えてきましたが、私が大道塾に入門した1983年の頃は「格闘空手(当時。今ならもちろん空道)は武道スポーツだ」という表現が多かったように記憶しています。

元はと言えば、超実戦的と呼ばれる北斗旗の闘い、あるいは新進気鋭の武道団体として注目を集める格闘空手大道塾に対して「“武道”は“武術”を通過して出てきた概念である。“武術”とは“ルール無用の殺し合い”の中から生まれてきたのだ。だからルールを決めて試合をする時点でそれらは皆スポーツ競技だ。」とかといったような頭でっかちな(?)批判があって、それに対して「面倒くせぇな。だったら武道スポーツでいいよ。『武道』であり且つ『スポーツ』でもある。それでいいだろ!?」といった感じの、極めて大道無門的な(笑)塾長の反論の造語だったように記憶しているのですが、記憶違いだったらすみません。ともあれ、私はこの「武道スポーツ」という定義が大好きです。

「武道スポーツとは何か?!」と問われれば、その言葉通り「武」と「道」と「スポーツ」ですね。「武」は現実の闘いの場で有効な技術体系。「道」はその道を旅していかに魂が成長するか?自分の人生を豊かにし、人としての成長を目指すもの。そして「スポーツ」は文字通りスポーツ競技の部分。せっかく技を練習し、マスターしたとしても、その習得度合いを健全に測れるスポーツ競技の部分がないと楽しみは半減する気がするし、逆にそれを変な「実戦」に求めてしまう危うさも出たりするのではないかなと。なので、あくまでも個人的意見ですけれど、現代武道にはこの「武」と「道」と「スポーツ」の3要素が必要だと思います。と同時に、ここにはある種の「黄金バランス」があるのではないかと。例えてみれば、女性のBWHのスリーサイズみたいなものでしょうか?!(笑) 世に様々な武道、格闘技がありますが、この「武」と「道」と「スポーツ」のバランスを見た際に、空道ほど美しい黄金バランスを持つものはそうはないんじゃないかなぁ?! というのが私にとっての空道の魅力です。

もちろんその「黄金バランス」は固定されたものである必要はなく、人によって趣味嗜好の差があって当然です。先ほどのスリーサイズの例で言えば、「俺はもうちょっと胸のあるほうが好きだな」とか(笑)、「いやいや、まずくびれでしょ。華奢なウエストこそが萌えポイントですよ」とか、、、すみません、これ、ものすごく分かりやすい例え話だと思うんですが、今の時代、セクハラのなんのと責められそうなので、もう止めます(笑)。話を戻すと、その三つのバランスがいびつになりすぎない範囲で、「武」の部分であったり、「道」部分であったり、はたまた「スポーツ」の部分であったり、個々人により、あるいは同じ個人であってもその時期により、フォーカスする部分に差があって当然ですし、その差は許容するべきものだと思います。

個人的な話をすれば、私は「武」の部分に今一番興味が集中しています。私は現在56歳。年齢を重ねていくと「道」の部分にフォーカスが当たっていく人が多いと思うのですが、個人的にはそこにスポットを当てたくないですね。今、これを読んでくれている多くの皆様もご存知のことと思いますが、この業界には怪しげな「ブドー」の「センセー」が結構多かったりします。で、またそういうセンセーに限って武道(の「道」の部分)を強調して、心がどうとか礼儀がどうだとかにものすごく口うるさかったりします。自分のことは棚に上げながら、、、(苦笑)。個人的には「あぁはなりたくないな」、「ああいう人と一緒にされたくないな」というのが正直なところでして、そういった意味でも「武道」「武道」と声高に叫ぶのには躊躇してしまいます。

もちろんこんな私でも「武道」という部分に関し、こだわり、譲れない部分は持っています。そしてまた同時に、自分自身、「道」という部分では足りないところの多い、まだまだ至らない人間だという自覚があり、そこは本当に反省、改善すべき点なのですが、それでも「そこにスポットを当てたくないな」という感覚が抜きがたくありまして、、、。そういった部分は大事なものであるがゆえに、「スポットを当てて」、「こだわりを表に出して」アピールするのでなくて「透けて見える」程度でいいんじゃないかなぁ、と。

それよりも「道」が透けて見えるくらいの「武」が欲しいです。「武道」は「武」と「道」がつながっているからこそ「武道」なのであって、「武」は「武」、「道」は「道」と、それが別になっているようならそれは「武道」ではないのですから、、、。

と、まぁそんな分かったような、分からないようなことを悶々と考えていたら、今日もまた3時間くらいしか眠れませんでした。(笑)

 

10/14(日)

いつものことなれど、だんだんとレポートの枚数もとんでもないものになってきました(笑)。先を急ぎます。

この日も10:00から午前のセミナー。

ここでは午後の審査会に備えて、まず全員で移動稽古をやって、そのまま全員で「投げ」「寝技」「打撃」のセミナーを受ける形で進みました。やっていないものがあれば不足を補った形になるし、一度やっているものは復習になりますね。

ここでは私は、通訳の宇戸さんに任せっきりにして、全部日本語で説明。いや~、楽でいいな(笑)。相手役をやってくれた山田君もありがとう。

そういえば昨日、3グループに分かれた際には、宇戸さんの姿が全く見えないなと思っていたら、小松君に「私のそばから離れないでください」と言われて、ずっとそうしていたそうな。「英語での指導に自信がなかったので、、、」と言うことだったらしいが、いやいや小松君、それはずるいぞ!?(笑)。

またこのセミナー中、山田君とペアを組んで「打撃」の部門の指導をされた神山支部長の受け返しの動きは、無造作な感じでパパッとやりながらも、その動きは本当になめらかで、目を見張らせるものがありました。先に書いた「”道”が透けて見える”武”」の話とも繋がりますが、見た人に「あぁ、この人はこの技、この動きを身に着けるために、千日も万日も努力を積み重ねてきたんだろうなぁ。そして今でも修練を欠かさないんだろうなぁ。さすがは七段の先生だ」と想像させるに足る動きで、本当に素晴らしかったです。

とりあえず午前のセミナーも終了。後は午後の審査会を残すのみ。さぁ、もうちょっとだ。

「これが受験者の一覧です」と名簿を渡されて、皆で手分けをしながら「あぁでもない、こうでもない」と連続審査の組み分けを実施。少し時間は掛かったけれど、なんとか終了。

一旦昼食を取りにホテルに戻って、例によってパパッと食べたら、また体育館へとんぼ返り。

「さぁ始めるぞ」と思ったら、さっきの名簿は男女混合で書かれて区別されてなかったという、、、。orz しょうがないから慌ててもう一度確認しながら、また皆で手分けしてようやく組み分けが終わったと思ったら、「応募していなかったけど、やりたいからやらせてくれ」って奴が出てきて、また更に一部追加&組み直し。勘弁してくれ~。(泣)

それでもなんとか組み終えて、改めて「さぁ、ようやくスタートだ」と思ったら、今度は防具の用意がないと言う、、、。orzもうこの辺は「海外あるある」としか言いようがありません。(泣)

こんなこともあろうかと思った、、、わけではないだろうけれど、日本からマスクを持ってきていた小松君と山田君のファインプレイ(!!)により、とりあえず一組は確保。それから伝統派空手の人たちがほとんどなので、拳サポとスネパッドは皆持っていて、とりあえずOK。あと足りない分は参加者が持ち寄ってきた、ボクシングヘッドギアやらグローブやらをかき集めて(それでは空道ルールにならないだろとも思うけれど、背に腹は代えられない気分)何とか審査開始にこぎつけました。

審査のレベルはと言うと、、、正直高くはなかったかな?!(苦笑) 何度も書いている通り伝統派空手の人たちがほとんどなので、これまで「当てるな」と教わってきたものを、急に「当てろ」と言われても、そりゃ無理ですよねぇ?! 審査中、何度も「Hit hard! More!!」とか「Full-contact!!」とか指示をしても、全然そうならない。両者、ライトタッチのレベルでしか組手にならず(それじゃあマススパーだよ)、ほとんどの組手審査が引き分けになりました(苦笑)。でもそんな中でも、ジュニアの子は適応が早かったかな?! 現時点ではまだまだだけれど、これから空道スタイルに切り替えて練習を積めば、比較的早めにものになりそうです。後は組手になるとやっぱり柔術の人のほうが強かったですね。組技をやっているとそれだけで体力がつくので、こういうフルコンタクトの揉み合いありの闘いでは、突き蹴りの技術が劣っていても、フィジカルで何とかなってしまう。「格闘ルール」では投げを中心に引き分けに持ち込み、「空道組技ルール」と「寝技ルール」とで勝ち点を稼いで終了するって人が多かったです。

できる限りスムーズに行くよう頑張ったのですが、最後の1人が終わった時間は18:00過ぎ。これも先述の通りにギリシャ全土から集まっていたので飛行機の時間の問題で途中退場する方も多くて、この時点で会場に残っているのは10数名くらいだったでしょぅか?! ちょっと締まらない終わりになってしまったのは、とても残念でした。(泣)

ともあれこれでセミナーの全日程終了。

ホテルに帰って一息ついた後、今回のセミナー主催者であるジョージ支部長とその奥様と一緒に夕食。ジョージ支部長は元々伝統派空手の世界にいた方で、同時にいろいろとスポーツ政治の世界に詳しい方。(詳細はこちら、塾長の速報をどうぞ。http://daidojuku.com/jp/2018/10/15/news-77/

ここでもいろいろと興味深いお話をたくさん聞けましたが、諸事情あって割愛します。(笑)

 

10/15(月)

今日はもう帰国の日。

昼の便までの間、時間も全然ないのだけれど、ほんのちょっとだけ観光を。

最初に書いたように、今回の滞在場所はルートラキと言い、隣にはコリントスという有名な観光都市があるのですが、その間にある運河を見に、連れて行っていただきました。

コリントス運河

これはすごかったです。切り立った崖の長さは6km以上。Wikiによるとこのエーゲ海とコリンティアコス湾とを結ぶ運河は1893年に完成したとのことで、今現在の技術でも大変であろうに、当時の開削技術を考えると、どれだけの大工事だったのか??? 想像するとクラクラしますね。

その後、アテネ方面へ高速道路をひた走ること約1時間。短い時間であってもパルテノン神殿を見ようとしたけれど、やはり道路が込んでいて断念。代わりにオリンピック体育館(?)を見学。

オリンピック体育館(?)外観

ちょうどテコンドーの大会が開催される(された?)そうで、体育館の床には6面の試合コートが、、、。観客席は傾斜が強くて、吸い込まれそうな感じに試合場が見えますね。いいなぁ、くそぅ。いつかここで満員の観客を集めて、空道の大会がやれるようになりたいねぇ。ちょっとそのシーンを妄想したら、武者震いが起きました。(笑)

そしてジョージは、そのまま、この建物内に設置されているギリシャ空手連盟の事務所へ行き、「中を見せてあげるよ」とばかりに私たちを伴ったまま、入室。おいおい、いくら元顔役とはいえ、いいんかしら???(苦笑) まぁでも貴重な体験でしたね。

この体育館には他にカンフーとかキックボクシングの事務所も設置されていて、これらの競技もオリンピック参加の機会をうかがっているし、同時にここに事務所を構えられるのも、ひとつのステイタスなんだろうし、でもやっぱり悔しいな。早く空道連盟も世界各国のこういった場所に事務所が構えられるようになりますように。

最後にもう一つ、オリンピックスタジアムを見学して終了。

体育館内部の競技場の様子
その建物内にあったギリシャ空手連盟オフィスの表札。ちなみにギリシャ共和国の英語正式名称は”Hellenic Republic”であって”Greece”ではありません。なので(読みにくいかもしれませんが)、ここも”Hellenic Karate Federation”。

 

そして一路空港へ。12:00くらいでしたかね?! 無事に到着できたのは。

ジョージ支部長、いろいろとお世話になりました。ありがとうございました。とりあえず世界大会でまたお会いできるのを楽しみにしています。

時間もぎりぎりだったのだけれど、空港内の免税店で何とかお土産を購入。良かった、これで日本に帰れるわ(笑)。いろいろと海外遠征を経験してきたけれど、これほど密度の濃い日程の遠征は初めてだったかも??? 皆様、お疲れさまでした。

東塾長、いつも貴重な経験を積ませていただいてありがとうございます。至らない弟子で申し訳ありませんが、愛する空道と大道塾の為に何かしらの力になりたいと、いつも衷心より願っております。今後ともよろしくお願いします。押忍。

狐崎支部長、お世話になりました。ありがとうございました。セミナーの際、正座するのも辛そうに見えましたが、御身体ご自愛ください。

神山支部長、お世話になりました。ありがとうございました。本文でも書きましたが、セミナーでの動き、素晴らしかったです。私も頑張ります。

飛永支部長、撮影係お疲れさまでした。ありがとうございました。また少年部の指導に関して、いろいろと教えてください。

小松君、熱い叱咤激励、ありがとう。そしていろいろと申し訳なかった。君の期待に応えられるように頑張ります。

山田君、一番若い支部長として、そして(塾長を除けば)今回の遠征で英語に一番堪能なメンバーとして、大活躍だったね。お疲れさまでした。いろいろと助けてもらった部分がありました。ありがとう。

最後になったけれど、留守にしている間、道場の皆には迷惑を掛けました。特に、指導を引き受けてくれた黒帯、茶帯の生徒達にはありがとう。おかげで有意義な時間を過ごさせていただきました。この経験を自分だけのものにすることなく、いろんな形で皆に還元できればと願っています。押忍。

 

浦和/北本/大宮西支部長 渡邉慎二

p.s.

と、まぁこんな感じで今回の「種まき」は終了しましたが、このまいた種が上手く根付いて、芽を出し、花を咲かせ、実をつけてもらう為には、今後「水やり」をやってくれる人が必要でして、、、誰か「1年くらいギリシャに留学したいです」って若い子はどこかにいませんかねぇ??? 少年部から大道塾をやってきて、今、黒帯茶帯を持っているような大学生なんかは、全国どこかにいそうだけれどなぁ。もちろんいろんな問題や不安は数あれど、とにかく行ってしまえば、ものすご~くかけがえのない「人生の財産」と呼べる経験になるのは間違いないんですがねぇ、、、。