マルタ遠征記 髙橋 英明

国際空道連盟理事長

髙橋 英明

 
ヨーロッパ空道ジュニア選手権大会に大会審判長と審判員を派遣する形で、6月30日の夜に日本を発ち7月5日の夕方に帰国という日程で、コノネンコ支部長と亮汰との3名でマルタに行ってきました。
今年の3月末のKIF総会で制定が承認された大陸委員会規程では、各大陸委員会は、委員会に所属する国が参加する国際大会および国際セミナーを企画しなければならないとしています。そして、大陸大会を開催する場合は、KIFから大会審判長と2名の審判員を派遣するということにしています。また審判員の育成を委員会の義務とし、A級以下の審判ライセンスの承認は委員会が判断し、KIF総本部に報告することで認可されることとしています。
大陸委員会は次の4委員会を設置し、それぞれに数名の委員を任命しています。私自身は、全ての大陸委員会のスパーバイザーであるとともに、ヨーロッパ委員会の委員長を務めています。

  • アメリカ委員会
  • アジア・オセアニア委員会
  • ヨーロッパ委員会
  • 中東・アフリカ委員会

今回のヨーロッパ空道ジュニア選手権大会については、5月にフランスで開催したヨーロッパ支部長会議において、中東・アフリカ委員会に所属する国からの参加も認める、主催国からは各カテゴリーにつき4名まで、他の国からは2名までの参加者を認めるということを決定しました。
現在の状況下では、ロシアとウクライナからの参加が見送られたことは致し方ないことと思います。ビザの関係で、当初参加を予定していたアルメニアとアルジェリアからの参加がキャンセルされたこと、またフランス国内ストライキの影響でフランスのレンヌからの参加がキャンセルされました(パリからの参加はありました)が、合計で8ヶ国から45名の選手の参加がありました。キャンセルがなければ、10か国から62名の参加が予定されていました。
大会運営面では、改善の余地はありますが、少ないスタッフで効率的な運営がなされていたことが印象的でした。試合場は1面でしたが、スマホとPCを連動させて、1名がアナウンスと計時および掲示係のすべてを担当していました。トーナメント表も、自動で作成するシステムが利用されており、大会前日夕方の計量後に、このシステムで迅速に組み合わせが作成されていました。
大会前日には2時間の審判講習を実施しましたが、道場に大型モニターが設置されているので、これを利用することとし、100ページを超えるパワーポイントでのプレゼン資料を準備していきました。動画を多用したので、ページ数が多くても、約30名の参加者には、集中力を切らさずに参加してもらえたと思っています。このうち12名については、翌日の大会で審判を務めてもらうことを通して、ライセンス認定を行いました。結果として、B級4名、C級4名、D級4名をヨーロッパ委員会として認定し、KIF総本部に報告することとしました。12名のうち2名は、イタリアとマルタの女性審判員です。
規則では、大陸大会や他の国際大会において主審を務められるのはA級以上となっていますので、ロシアとウクライナを除くと、主審を務める資格がある者はまだいないという状況であり、日本からの派遣が必須です。受験者の中の1名は4段だったので、できればA級をと思っていたのですが、B級認定に留めました。まだ経験を積むことが重要です。ただ、今まではロシアとウクライナ以外には公式審判員がいなかったということを考えると、大きな前進です。10月末にはローマで空道イタリアンオープンを開催する予定なので、その時には今回よりも細部に踏み込んだ内容の審判講習を予定しています。空道のルールは、2時間程度の講習で理解するのは無理です。しかし次回にあと2時間あれば、かなり理解を深めてもらえると思います。
大陸委員会制を導入し、各大陸で大陸大会をはじめとした国際大会を定期的に開催していくことを決定したとき、主催国として手を挙げる国があまりないのではないかという懸念が示されましたが、ヨーロッパについてはマルタおよびイタリアからすぐに手が挙がりましたし、リトアニア、ジョージア、アルメニアからは、次にヨーロッパ大会を主催したいという要望が示されました。フランスも十分に大会を開催できる力があります。
国際大会や国際セミナーを定期的に開催し、国際的な活動を活性化したいというのが、大陸委員会制を導入した大きな目的です。9月末にはブラジルでパンアメリカン空道選手権大会が予定されていますし、11月の仙台での一般部の大会は、来年の世界大会の国内最終予選であるとともに、アジア大会として開催することを検討しているところです。
各大会に審判長として参加することは、体力的にかなりの負担なのですが、当面の間は、全大会に参加し、世界における空道の発展に貢献したいと考えています。
参考までに、私が担当したセミナー部分の資料と、審判講習資料(実際には動画が張り付けられています)を添付します。