ブラジル遠征記 KIF理事長 髙橋英明

【地球半周の行程】

9月25日にブラジルのポルトアレグレという都市で開催された空道パンナム選手権大会のため、ブラジルに行ってきました。3年前にコロンビアで大会を開催して以来のアメリカ大陸での国際大会となります。

成田空港に集合したのが22日の19:30で、カタールのドーハ(FIFAワールドカップ2022の開催地)およびブラジルのサンパウロを経由してポルトアレグレの空港に着いたのが、その38時間後の、現地時間で23日の21:30(時差が12時間なので、日本時間では24日の9:30)という、長い長い行程でした。地図を見てください。アジアを横断し、アフリカを横断し、そのあと赤道を横切って大西洋を横断するというルートになります。

ポルトアレグレは、カルロス・トーレス支部長(KIFの理事でもあります)が道場を開いている街で、「陽気な港」という意味のようです。翌24日は、その道場で、午前中に約2時間半の審判講習を、午後は約4時間半のセミナー兼昇段審査会を実施しました。

 

【審判講習】

審判講習では、神山歩未S級審判員に審判員動作についての講習をしてもらい、私の方では海外での審判講習用の資料を完成させていたので、これを使って、時間内でできる限りの講習を実施しました。

神山は、2019年のコロンビアの大会にも随行してもらいましたが、今回、新たな気づきと学び、および向上があっただろうと思います。私は、マルタで実施した審判講習時に作成していた資料を改定する形で、事例としての動画を多用した約100ページのパワーポイント資料と、具体的な説明を中心とした、同じく約100ページのパワーポイント資料の二部構成の英語版資料を作成して、事前に支部長に送っていました。今回は、時間的に、動画を多用したほうの資料の説明が中心になり、もう一つの資料は、出された質問に答える際に使用する形となりました。マルタと同じく道場に大型モニターがあり、今後も訪問国でこれを利用できると便利です。

翌日の大会で審判を務めてもらい、新たにC級を2名、D級を8名、認定しました。

 

【セミナーおよび昇段審査】

セミナー兼昇段審査会は、東亮汰塾長秘書が基本稽古と移動稽古を丁寧に指導し、昇段審査採点表に基づいて、12名の受験者を3名で分担して採点しました。投げや寝技については、セミナーということを考えるともっと時間がほしいところでしたが、限られた時間の中で実施できる範囲に限定せざるを得ませんでした。この範囲では不合格者は出ませんでしたが、受験者の半数は、合格ラインぎりぎりというところです。

組手審査に代わって定法での審査の希望者が2名いたので、続いて、支部長審査用に設定していた10パターンの定法の講習を私が担当して実施し、最後に組手審査を実施しました。試合審査を希望している者が多く組手審査は4名と少なかったので、スムーズに実施でき、定法での審査受験者を含めて5名を合格、1名を不合格としました。残りの6名が試合審査で、まだ勝敗を見ていませんが、たぶん大方が保留だろうと思います。

 

【空道パンナム選手権大会】

翌25日の空道パンナム選手権大会は、ブラジル、米国、メキシコ、コロンビア、ボリビア、それに日本からの選手参加がありました。直前までチリやキューバからも参加の可能性がありましたが、残念ながら参加できなかったようです。

トーナメント表が当日にならないとわからなく、また大会本部席に一式しかなかったので、審判の組み合わせなども開会式直前に割り振らざるを得ないという問題などはありましたが、こういう問題の存在を想定して事前に組み合わせフォームを準備していたこともあり、予定通りに10:00に開始し15:00には表彰式などの一切までを滞りなく終了できました。大会の主催国であるブラジルのトーレス支部長に感謝です。

日本から参加した伊藤選手は、地元で絶大な声援を受けている選手との完全アウェーでの決勝戦でしたが、見事に(辛くも?)優勝しました。本人にとって、いろいろな点で替え難い貴重な経験になったと思います。ここでしか経験できなかったことが、いくつもあったと思います。彼からの遠征レポートを楽しみにしています。

神山歩未S級審判員は、英語に不自由ないので、大会においても審判団の統括的な役割を担ってもらいました。その分、私の負荷が減りますが、私一人ですべてを仕切る(以前は東先生と私とで行ってきたことを、私一人で行う)のは、そもそも無理です。

KIFは今後も国際大会や国際セミナーを積極的に支援し遠征することになりますが、基本的には通訳が付くわけではないので、通訳を介さなくても何とか意思疎通ができ、かつ審判の指導や技術指導ができる人材が不可欠です。

今回の遠征の成果のひとつとして、来年の世界大会には少なくともアメリカ、メキシコ、コロンビア、ブラジル、ボリビアからの選手の参加を見込むことができたこと、それに、世界大会に出場しても恥ずかしくないレベルの選手が何人も居たことです。

 

【おわりに】

アメリカ大陸については、来年は南北に分かれて国際大会等を開催する方向に指導しましたので、たぶんそうなると思います。海外遠征は、いろいろな意味で面白いので、多くの随行希望者から手が挙がることを期待しています。

私は、KIF理事長として、各国際大会に審判長および審判講習者という立場で出席する責務がありますが、併せて、世界中の「I Love Kudo」と言ってくれる空道家が喜んでいる姿を見ることが、自身の喜びです。大変な思いをして行く海外遠征に対するモチベーションは、それ以外にありません。KIFの理事長でいる間は、すべての国際大会に出席したいと考えていますし、遠征に限らず、喜んでもらえるサービスを提供し続けたいと考えています。