2024年第二回ヨーロッパJr.大会於マルタ 日進・長久手支部 神山歩未

日進・長久手支部

神山歩未

 

押忍

日進・長久手支部の神山歩未です。

2024年2月1日より6日までの、マルタ遠征について報告いたします。

 

【背景】

いまから10年前

2014年の世界大会のテーマを覚えているでしょうか

 

「道はここに在る」

 

東先生が掲げられたこの言葉には、当時の「この道こそが心技体の強者を目指すものが歩むべき道程なのだ!」という想いが込められています。

自分にとっては、今大会ほど、あの先生の直筆の文字と、あの時の東先生の顔が強く思い出された大会はなかったのではないかと感じます。もちろん、私が感じたのは言葉の本来の想いではありませんが、それでも「道はここに在る」と、東先生が書かれた字が脳裏から離れませんでした。

私が大道塾で稽古をし始めたとき、少年部の大会はおろか、「少年部」というものさえ存在していませんでした。まだ中部本部もなく、名古屋支部だった頃に、一般部の後ろで稽古をスタートさせました。

初めて、「試合」というものに出場したのは、小学校5年生になってからのことでした。名張支部の中西支部長が主催する伊賀オープントーナメントに参加させていただきました。私の記憶が正しければ、当時、少年部の大会が開かれたものの、大道塾のみの試合ではなく、他団体も参加するオープントーナメントで、当然、女子のカテゴリーなど存在せず、男女混合でした。

あれから、20年以上たち、大道塾は空道という一競技としての確固たる地位を築いています。いうまでもなく、女子も無差別ではなく、決して多くはないものの体力別となっています。

 

【第2回 ヨーロッパJr大会】

ヨーローパJr.大会は今大会で2回目の開催となります。大会は、地元の指導員を中心に、少年部の保護者らによって運営され、選手・コーチらの強烈な熱気の背後に、とても暖かで和やかなものが横たわっていました。

日本と比べ、IT化が進み、トーナメント表から試合番号、試合中のポイントや結果まで全てが会場内のモニーターで表示され、スマホ一つあれば、今何試合目で、どのカテゴリーの試合で、次が誰の試合なのかわかるようになっていました。日本は世界に比べIT後進国なので、その点は、苦手だから慣れないからと嫌遠せず、見習うべき点であるかと思います。

一方、大会のIT化が進んでも、絶対に変わらない部分が存在します。それは、裏方の選手係の役割だと思います。今大会でも、日本の大会と同様に選手係が用意され、大会進行を担うアナウンス、慣れない手つきでブルータグをつける選手係、必死で次の選手を探す係、防具チェックと説明をする係、2日間で4つに分けられた試合は、スケジュール的にも体力的にもハードさを極めていましたが、だれも不満を漏らさず、大会を良いものにしようとする、あたたかな想いが感じられました。

選手係をしつつ、時に自分の息子の試合に涙しながら、勝って喜び、負けて一緒に悔しがる保護者の様子は、どこに行っても胸に温かいものが込み上げます。日常生活では感じることができない暖かな気持ちにさせられるのも、空道あってこそだと思います。

さて、今まで、私が参加させていただいた全ての国際大会において、今回初めてだと感じたのは、公式なライセンスを保持する女性審判が増えてきたことだといえます。私を含め、今回は3人の女性審判員が登壇しました。彼女らは、正式にライセンス試験を経たライセンス保持者たちです。

毎度、海外遠征に同行させていただいて感じることは、日本と比べ海外のほうが、女性たちが進歩的だということです。

自分も含め、特に日本の女性たちは、「女性」という殻にこもり、気づかないうちに自分の可能性を制限していると感じます。確かに、直接打撃制の競技である空道は、男性性の強い世界であるといっても過言ではありません。そう言った理由から、女性選手は育ってきたものの、未だかつて女性支部長は存在しておらず、女性コーチも、いただろうかと疑問に思います。自分がもし、男性であり、強くなりたいと思ったときに、女性コーチに師事するだろうかと考えると、答えは多分、否であるとか思います。私の場合、たまたま、空道一家に生まれ、たまたま少年部を指導し、たまたま今の審判という経験をさせていただいているに過ぎません。自分の純粋な気持ちからの選択かと聞かれると、即答することはできません。だからなのか、もともとそうなのか、どちらかわかりませんが、やはり、見えない何かしらの壁を感じるときがあります。とはいえ、そういった杞憂も、私が頭の中で作り出している制限なのかもしれません。

今大会の審判の一人であったマルタ支部のダリアラさんは、選手を経て、現在は少年部のコーチをされています。そしてプライベートでは一時のママです。彼女とは、彼女がモスクワの一道場生だった頃から交流があります。彼女の活躍が、女性であっても空道界において、何も制限なく活躍できるのだと語り、今まで私にどれだけ勇気を与えてくれたかわかりません。大会中、彼女とそんなことを話す機会がありました。彼女からの質問は、「でも空道、好きだよね?」でした。そう聞かれたとき、「もちろん!」と強い意志を持って即答できた自分に、これまでとは異なる大きな変化を感じました。

自分が選んでここにきたわけではありません。でも今は、自分で選んで望んで、自分の意思でここに立っています。そう感じさせてくださったのは、常に私を、暖かな心で指導し、応援しつづけてくださっている諸先生、先輩方、支えてくれる支部の仲間達、少年部たち、そして保護者の皆様や家族があってこそだと、改めて全員にとても深い感謝の気持ちを感じました。

 

【道はここに在る】

少年部が、未来の空道を創り支えます。

選手・審判どちらであれ、試合場に上がる女性たちが、女性空道家の未来を切り開いていきます。

男女180人の選手がエントリーし、ライセンス保持者の女性らが登壇した第2回ヨーロッパ大会。

そして、空道史上初めてジュニアの日本人代表選手を派遣した国際試合。

 

  道はここに在る

 

東先生の声が頭の中でこだまし、大きな感動と熱いものが胸を突き上げ、鼻の奥をツーンと痛ませる大会でした。

 

少年部上がりの自分、女性審判である自分が挑戦し続けることで、少しでも未来を担う子どもたち、女性たちの行先の希望になればと深く願っています。

最後に、故ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の言葉をお借りし、レポートを締めくくりたいと思います。

 

「空道の世界大会で、5人全員が女性審判員で構成されたら、空道界の女性が十分になったと言えると思う。今まで男性審判員5人で構成されても何も問題視されなかったのだから。」