特別座談会 俺たちは、トーナメント荒らし①

オープントーナメント荒らしの凄い奴ら 3人!その名も永心流の鍋島次雄、闘心流の中畑要、日神会の平岡義雄。いずれも極真会、大道塾など、フルコンタクトルールのオーブントーナメントに出場し、活躍を続ける。しかも、所属流派は、自己の創流。すなわち、自己流で過激なフルコンタクトの戦場に挑み続ける勇気ある若武者たちだ。
彼らはなぜ、挑むのか?どのような目的で?3人にざっくばらんに語ってもらった。さてどんな話が飛び出すか?
フルコンタクト空手 1986年10月号より抜粋

大道塾の大会は、自分の空手観の動きを現実のものとしてくれますね

鍋島次雄(なべしま つぎお)プロフィール
昭和33年生まれ、 28歳、熊本県出身。身長173cm、体重63キロ。永心連盟雄体空手体術 2段。85年の北斗旗無差別大会での7位入賞の活躍は記憶に新しい。極真会、硬式空手、防具空手、徒手格闘妓などにも出場。主な成績は、第1回北斗旗体重別の大会て軽量級ベス卜 2、無差別で 5位。硬式国際親善大会でベス卜 8、85年徒手格闘技選手後ベスト 8。東京芸術大学美術学部卒業という変わり種。現在、美術学校でデザインの教鞭をとる 。

中畑 要(なかはた かなめ)プロフィール
昭 和37年生まれ、 24歳。青森県出身。身長172cm、体重84キロ。 日本空手協会初段。関心流。この人ほど多くの大会に挑み続ける選手はいまい。昨年の出場試合がなんと16。今年もすでに 9つの大会に出場。活躍場は北斗旗、極真会、徒手格闘技、硬式空手から寸止めの大会、キックボクシングまて幅広い。主な成績は、86年度第1回全日本徒手格闘技選手権優勝。86年第1回全日本格闘技選手権準優勝、84年全国硬式優秀選抜大会優勝など。現在、川口北高校で生物の教鞭を取る。

平岡義雄(ひらおか よしお)プロフィール
昭和32年生まれ、 28歳。東京都出身。身長172cm、体重66キロ。 日神会。糸東流空手 3段。現在は大道塾の大会1本に絞り活路。 タイミングのいい左掌底フ ックの名手として知られる。空手は小学校の頃より糸東流。小学生の東日本大会で 2位、その後、全空連の都大会、区大会などの常連として活躍。極真会は第9回大会に出場、大道塾には例年から彗星のように登場し、以後、毎年のように出場。84年、85年には他流派から出場した最強豪選手に与えられる特別賞を受賞している。

―― まずお聞きしたいことは、三人ともいわゆる大会主催団体から他流派と呼ばれる立場ながら、各大会に挑み続ける。何が皆さんを、そこまでかきたてるんですか。

綱島 僕は大会が目的じゃないんです。僕らの目的は、格闘技に限らずフットボーラー、プロレスラー、キックボクサーなどの強い人たちですね。そういう人たちと戦っても勝ちたい、と思っているわけです。 一番の理想はルールがないことですから、その意味で大会が目的じゃない。でも、大会としては、それに近い北斗旗や、徒手格闘技選手権がいいですね。

中畑 自分は、格闘技はどれが強いかわからないと思う。全てルールがあるのだから、最終的にはハダカで殺し合うしかないと思います。
 自分が昔、極真会の東北大会に出たときのことなんですけど、柔道の選手とあたったんです。はずかしい話なんですが、すごく苦戦しました。相手は防御だけ覚えてきたんです。ボディを突いてもきかないし、回し蹴りを顔面に送ると、首が短いんで横に倒すだけでズッコ抜けていく(笑)延長でやっと判定で勝ちました。
それが空手のルールの中のことではなく、ルール無用の中だったら、あっという問に襟を取られて自分が締め落とされたかもしれない。そう思うと、ひとつのルールの中だけで勝っても………。
 だから、オープン形式の大会なら、ルールが違っても全部出てみよう、と、ルールの中で一対一で戦うんなら、誰でも条件は同じですからね。

平岡 私は、今のところ大道塾一本ですから……。顔面突きがあって、自分のスタイルに一番あっているような気かするし、ルールも一番実戦的だと思うんですよ。限界のない理想のルールじゃないですか。

――皆さん、独自の格闘技観を持って大会に臨んでるんですね。その格闘技観について。

平岡 私はね 、古くさいかもしれませんが一撃必殺の夢を空手で追求したいと思うんですよ。 フットワークを使ったり、自分からパカパカいくような組手じゃなくて、一発でカウンターを取る読みの組手、静の組手ですねそれが30で引退せず、40でも50でも使える空手のスタイルだと思うんです。

中畑 自分もどんくさい方なので、待ちの組手が主体ですね。寸止めをやってましたので。カウンターはいいなって思います。


平岡 自介の掌底もそんな考えの中から生まれたんです。極真の大会を目指してサンドパックを打っていたとき、これ顔に入ったらキクなあって思ったんです。掌底のリズムは自分にあってましたから、顔が打てる大会ないかなあって探していたら、大道塾か出てきたんです。グローブをつけていたら掌底が使えませんからね。そのかわり北斗旗に出たあとは、手がグローブのようにハレ上がりました。それだけ使えたってことですけど。備えている左手の位置から、左掌底は一番カウンターでヒットさせやすいんです。そういう意味で、大道塾の大会は、自分の空手観の動きを現実に試すことのできた大会ですね。

鍋島 僕の格闘技観は、先ほど述べたように空手に限らずどんな種類の格闘技の人間と戦っても勝てること。ただ、永心流には独特の考えがあって、例えばウエイトトレーニングはやらない。 これは無駄な筋肉をつけないため。またダッシュは良いが、重要な肉が落ちるのでマラソンはダメ。 これは、最高師範の永野次郎先生の指導方針なんです。ウエイトで体を鍛えなくても、相手に打たれたら、これをすい込むようにすれば良い、と。