特別座談会 俺たちは、トーナメント荒らし ③

大道塾に出るようになって掌底の技術も発達しましたよ

鍋島 どの大会でも他流派からくる人間には、無言のプレッシャーを内から外からかけられますよね。

平岡 他流派で出ると会場でも居場所がない。(笑)

鍋島 大道塾だけは変わってますね。他流の人を威圧しようという雰囲気が全々ない。

平岡 大道塾は主催団体の大会というより、各個人の選手の競い合いでしょう。自分も他流という気かしないですね。

中畑 大会の雰囲気は皆違いますね。試合の前の日に酒を飲んだり宴会をやるところもあるし。どちらかと言えば寸止めは宴会をやるところが多いですね。でも、たとえ寸止めの試合でも自分は精神的にすごくプレッシャーを感じますよ。

平岡 プレッシャーのかかる大会に出ると、さわやかさよりも、ホッとしますね。でも、同じフルコンタクトでも極真ルールだと一週間は動けないけど、大道塾ではダメージが残らないから翌日から仕事ができる。我々も仕事を持つ身だから安全性の考慮の点でも北斗旗ルールはいいですね。

―― 大道塾の大会に出て、皆さんのこれまでの空手の技術や練習方法が変化したということはありますか?

鍋島 大道塾の大会自体、年々技術が進歩してますよね。はじめの頃は極真のファイトが色濃く残って、極真の空手に掌底を入れたという感じだったでしょう。

平岡 私は、最初からピックリしましたよ。最初に顔面、金的、投げありの大会だと聞いて、ちょっと出場するのためらいまして、84年の大会に出たんです。そしたら、みんなパカパカタンカで運はれてくでしょう、ぞれを見てたら帰ろうかと思っちゃいましたよ。ウワサ通りにすごい大会だな、こりゃ、というのが印象ですね。
 余談ですけど当時はスーパーセーフが手に入らなくてね、後輩がどっかからやっと一個手に入れてきたんですよ。それを後輩にカブセてね、私が攻める、後輩が逃げるでおっかけっこでしたね。そんな感じで出たんですよ。そしたら佐和田さんに投げられましてね、徹底的に。翌年はレスリングで引きのカと腰を鍛えて出ました。それと手技もね。私はボクシングの経験はないんですけど、後輩と動きを研究してるうちに自然にボクシング的な動きになってしまっただけなんです。極真の頃は蹴りだけでパンチを使わなかったんですけどね。今はパンチ主体ですね。

中畑 自分も中学の授業で柔道をかじった程度でしたから、大道塾に出るために、サンドパックに帯をつけてパックドロップの練習をしていきましてね。

平岡 先ほど話した掌底の技術も大道塾を目指して練習するうちにずい分発達しましたよ。私の掌底の打ち方は毎年変わってるんです。5種類くらいあるんですけどね。ただハリ手みたいに振り回すのではなく、構えた状態から、スナップをきかせて45度の角度でストレートのように打ったり、アッパーぎみに打ったり、上からたたきつけたり。スナップが効くので、あたった瞬間、ぐっと力が入り、正拳より効くみたいですよ。

鍋島 スーパーセーフの場合、正拳よりも掌底の方が頭にクラクラくるみたいね。僕のパックハンドも相手の側頭部をねらうために工夫したんです。

平岡 スーパーセーフは、顔に直接くらうより、やな感じがするときあるでしょう。初めて出たときは頭がガンガンしてハキ気かした。だから、トーナメントでは、打ち合って勝つのでなく、打たせないようにして勝たなくちゃね。

鍋島 あと、スーパーセーフは慣れないと距離感がつかめない。普段見切れるパンチが当たっちゃう。