最強軍団 大道塾内弟子 ② 寮生の一日

この対談は『月刊空手道』(福昌堂発行)1988年3月号に収録されたものです。寮生制度は掲載当時のものです。現在の寮制度についてはこちらをご覧ください。
寮生・内弟子募集

 

 寮生の一日は朝7時起床に始まる。午前7時30分から9時までの1時間半が早朝稽占朝練である。
 約10キロのランニング。拳立て、シットアッフ、ヒンズースクワットなどの補強トレーニングを約300回から500回、シャドートレーニングなどでウオーミングアップ、持久力中心の練習である。
 9時30分から朝食、朝礼の後、一般寮生は学校やアルバイトに出る。一方職員は道場において、午後1時までの3時間、事務、雑務に従事する。午後1時から3時までの2時間、職員は自主トレーニング、昼練を行なう。

 昼練はウェイトトレーニングが中心だ。ウェイトトレーニングのノルマは各クラスによって異なるが、ベンチプレスで130キロ、スクワット180キロ程度が目安になっているようだ。また、大道塾では最近、筋力トレーニングのみならず、瞬発カアップトレーニングが研究されており、この時ばかりは道場がまるでボディビルディングジムの様相を呈する。
 中には曜日ごと練習内容を分け、サンドバッグやミットトレーニングに汗を流す寮生もいる。この朝練と昼練こそが大道整寮生の強さの秘密といってもいいのかもしれない。

 昼食はちょっと遅く、午後3時からとなっている。その後、,本稽古までは自由時間となる。
 夕方からの本稽古にはもちろん一般寮生も職員も参加する。(東京本部、東北本部では午後4降30分~7時と、6時30分~9時のいずれかに出席すればいい)
 本稽古は通いの道場生と一緒の練習で、曜日ごとに「移動稽古中心の日」と「サンドバッグ、ミット練習中心の日」に分かれており、基本から自由組手(スパーリング)まで、幅広い総合的な練習が行なわれている。
 朝練 昼練、本稽古と続くハードワーク、しかし、寮道場にはサンドバッグをたたく音が響きわたる。これらの稽古は原則として、日曜日と木曜日(本稽古は交代で平日に)休養をとる事が義務付けられている。

 寮生の生活は寮長がリーダーシップをとる。寮長は3年生の中から選ばれる。現在では東京本部が山田利一郎、東北本部が加藤清尚が寮長である。
 寮生はこれ以外にも、支部での指導、少年部指導など、実に忙しい毎日を送る。また、卒寮までの3年の間、2ヶ月目(東北本部での研修期間終了時)、6ヶ月目、1年目、2年自の4回、理事長、評議委員長、代表、寮長の4者によって適性、上達度が評定される。適性不足の場合は中途退寮もあり得るというから、寮生の生活は想像以上に厳しいのだ。
 しかし、こんな厳しさにもかかわらず、寮生の素顔は驚く程明るい。必要以上の規則、封建性、縦型偏重を嫌う東氏の気風が反映され、寮内には自由な雰囲気が溢れている。

「空手界は今まで非常に暗いイメージにおおわれていました。ある意味では昔の軍隊以上に絶対的で、陰湿だといってもいいのではないでしょうか。先輩、後輩の関係も信じられない程キツいんですね。私はこの理由のひとつとして、勝敗の判定法、つまり組手・試合ルールにあると思うのです。いわゆる寸止めルールでは、その組手自体ではっきりとした勝利感、敗北感を得にくいんです。「当ったら倒れるハズ」という仮定の上での勝負なので、例え勝っても負けても自分を納得させにくいんです。例え当て合ったとしても、本気でプッ倒そうと殴る訳じゃないからどうしても欲求不満が残るんです。だから先輩、後輩の関係だけでなく仲間違との関係でも漠然としたシコリが残りやすいのではないでしょうか。だからこれを打ち消すために厳しい規則が必要になってくるんです。
 それに対してフルコンタクトなら勝っても負けても結果がはっきりしますから負けてくやしくてもしかたがない、現実なんですから。このように勝負がはっきりしている分、人間関係の問も陰湿なものはなくなるんです。日々の稽古の中から自然と先筆、後輩の秩序が身につくんです。だから、大道塾は何も寮生だけでなく一般の道場生もとても明るいですよ」東氏はこう語る。
 こうして大道塾は「B型風人聞社会」 が形成されており、寮生も例外ではないのだ。