東孝×白鳥金丸 対談⑤ 本当はね、肘を上げて打つパンチがスピードもパワーもあるんだ(白鳥)

この対談は『月刊空手道』(福昌堂発行)1984年11月号に収録されたものです。肩書は掲載当時のものです。

 

―― それでは次に、今も東先生が言っていた体重制と無差別試合、それについてはどうですか

東 今までクラス別というと、ほとんど体重制だったでしょ。でも空手やボクシングのように当て身中心の格闘技を考えるなら身長差というのも考慮に入れるべきだと思うんですが。

白鳥 確かにそうだね。ボクシングの場合も一応体重制を採っているけど、同じ体重でも身長が遣うとかなりハンディが違いますからね。そういう意味ではリーチ差っていうか、それを考慮するのは進歩的だよ。まあ結局グローブにしろマスクにしろ実際に打ち合う事によって新しい発見とか工夫も生まれてくると思うよ。パンチもストレートだけではなくフックを使うとか。

東 そうですね。うちもパンチがストレートにフックやアッパーが多く入っています。

白鳥 確かにフックは速いですから、それに顎やこめかみに入ったら本当によく効くからね。とにかく横から飛んでくるのが一番効くね。脳が振
られるから。アッパーはなかなか出しずらいんですね。握り方とかが…。それに下から突き上げてくるカっていうのはフックから比べると遅いですよね。でも入れば効く。

東 だから技の多彩さ、技術という点ではボクシングはすばらしいわけで、空手でも突き技を追求していけばボクシングに近くなると思うんです。でもカウンターで入ればストレート、つまり正拳突きも効きますね。

白鳥 効く効く。しかし東君が学生の頃やってたのはストレートと言ってもちょっと違っていたな。

東 あの頃はよく肘の事を注意されましたね。脇が甘いって。極真の打ち方だと、どうしてもこう肘が上っちゃうんですよ。胸たたくから。そのパンチで打ってみろっていうから、授業中にやってみても全然当んないわけ、先生のフットワークでかわされてね。あれすごく強烈に覚えているんですよ。自分は当時ほら、今の空手こそ最強だと思っていたから、その時の経験が今僕かやっている空手の経験にもなっているわけなんですけど。

白鳥 でもね、考えてみりや、よくボクシングの人も、空手の伝統的な流派の人も、極真のパンチは脇が空くと言うけど、実際はね、そういった打ち方の方がずっと速いんですよ、ただ上から打てばまだ別だけど。

東 そうなんですか。

白鳥 本当よ。以前僕研究したんです。肘の角度の違いによりスピードがどう変化するかってね。そしたら肘が上がっているのが抜群に速いという結果が出たんだよ。ただ、それだとボクシングの場合、反撃され易いからやらないだけなんです。さっき東君か言ったようにグローブだともろに効くとすると、絶対ボクシングではボディを打たれちゃいけないわけ。スピードそのものを考えたら極真的な突き方が一番速いです

東 空手は蹴りがあります。