東孝の格闘空手 空手リアルアーツシリーズ ① VOL1 2025年1月27日2025年1月25日 by 大道無門 この対談は『月刊空手道』(福昌堂発行)1984年10月号に収録されたものです。肩書は掲載当時のものです。 大道塾 東孝は福昌堂発行の『月刊空手道』に連載を持っていた。今回掲載する内容はその記念すべき第1回目の連載。当時今ほど格闘技に関する技術的な情報が広く知られていない状況で、東孝はある意味、格闘に関する研究を実地体験を元に行っていたのだ。現在の空道ルールに辿り着くまでの技術的な変遷は実に興味深いものがあるし、日本の格闘技の歴史を紐解くうえでも意義ある内容だと思う。本サイトで順次公開していこうと思います。 私は既に「格闘空手」(福昌堂刊)で格闘空手の基本的な技や稽古法を紹介させていただいた。そこでこのシリーズでは読者がその基礎的な内容を一応把握したものと仮定して、一歩進んだ、いわば格闘空手の本論ともいうべき技術を紹介しようと思う。勿論、誌面の都合もあり十分には言葉を尽くせないので、紹介する技の数も限られる。また技の内容も最初はまず基本的なものを主とし、徐々に高度な技術を入れるという構成にしたい。しかしここで紹介していく「格闘コンビネーション」の一つ一つすべてが我々の試行錯誤を経て、真に使える技として残ったもののみであり、机上や空想の技では決っしてない事を最初に述べておきたい。 さて、格闘空手を行なうに際し順序としてはまず第一の段階として顔面突き無しの組手をするべきである。その理由は、重さのある中段への突きや威力のある上、中、下段への蹴りに対してまず腰を落として力一杯打ち合って欲しいからである。 突きや蹴りがくるのが解っているなら、それに対して筋肉を緊張させればそうそう骨が折れたり内臓を痛めたりすることはないということを実体験して欲しいのだ。またこの組手によって、手よりはるかに使いにくい脚を自由に使いこなせるようにもなって欲しいのだ。 当てる当てないにかかわらず最初から顔面突きありの組手をすると、フェイントで筋肉の弛んだ中段や下段、また注意のいっていない上段への軽い加撃などですら大きなダメージを受けてしまうことがある。この経験を最初にしてしまうと、空手の突き蹴りは怖いという必要以上の先入感ができてしまい実際に打ち合うことが狂気の沙汰に思えてしまう。あげくには打ち合う空手を見ても約束事だとか、ジエスチャーに過ぎないなどといった解釈をしてしまう。特に年齢が三十歳前なら、三ヶ月も練習して一応の受けを覚えれば、顔面突きがない組手なら相当の腕力や脚力で打ち合っても大怪我をすることはめったにない。これは説明された事実である。この事をまずしっかりと認識して欲しい。 格闘コンビネーション第一章 左パンチからの連繋(1) コンビネーションは稽古においては一つの連繋攻撃として行なうが、実戦では何も最後の技で極める必要はない。第二撃、または第三撃で相手が倒れればそれでいいのである。 そこでコンビネーションを実戦の攻防で用いた場合、具体的にどのような使われ方をするのか以下、分解して説明するとしよう。 基本的なコンビネーションである。分解(1)左ジャブで相手を牽制し、右ストレートを強打するつもりで使う。分解(2)左ジャブ、右ストレートを最初からフェイント気味に出し、相手が退がることを予想しておいて、右の蹴りを下段に行くように低く入ってから急に蹴りを上げ中段に極めてダメージを与える。分解(3)右中段の蹴りまでは(2)と同じ過程で攻撃し、それでも不十分な場合は即座に第三のコンビネーションに移るのだが、そのための継ぎ技としての意味も持たせて左下段蹴りを入れる。