この連載は『月刊空手道』(福昌堂発行)1985年7月号に収録されたものです。肩書は掲載当時のものです
空手を始める人達が当然味あわねばならない関門として、昇段・昇級審査会がある。そこで今回はその“審査”について少々述べてみようと思う。
空手のみならず柔道、合気道など武道を志す人間は、ほとんどの者が入門するにあたり「いずれは黒帯を締めてやろう!」という決意をするに違いない。またそのうち何人かは「できるなら大会に出場したい」「大会でベスト8に、いや優勝してやる!」といった大きな目標を持っているかもしれない。しかし大会出場というのはだいたい入門してから3~4年以降が普通である。そこで審査会が大きな意味を持ってくるのである。
空手を3~4年続ける間には様々なことがあろう。その間に、ともすれば一度や二度挫けそうになるのが普通の人間である。審査の第一の意義はその初志を貫徹する上で一つの小さな目標になるところにあるのである。審査が控えているために、それを具体的な目標として稽古に打ち込むことができる。またその審査によって、それまでの自己の修練が自己満足に終っていないか否かをチェックすることができるのである。
また、こういう面もある。以前道場生の中に「帯なんて無意味です。自分は白帯のまま実力をつけます」と言う者がいた。まあ、それもいいだろうと私は黙っていたのだ。事実彼はそう言うだけあって入門当初は群を抜いて強かった。
しかし同期の者が青帯、黄帯と進むに従って、稽古は同程度しているのにもかかわらず次第に実力の差がついてきてしまったのである。結局彼はいつの間にか道場に姿を見せなくなってしまった。
このように帯というのは不思議な魔力を持っている。実力が同じ者同士でも、せり合いになると大低下の帯の者が先に闘いを投げてしまうのだ。これは上の帯の者は下の者に負けられるか!という追われる立場を意識するからだし、それによって普段の稽古に対する気構えにも自然と差がついてくるのである。何事もそうだが、審査は、次のステップに進むためのチェックポイントとして重大な意味も持っているのである。