2018.10.24   ギリシャ遠征レポート 住友電工空道同好会 責任者 山田壮

始めに。

7月下旬。
塾長から一通のメールをいただきました。
「10月にギリシャで指導・審査をやるんだが、お前行けないか?」
すぐ様仕事の調整をつけ、いざギリシャへ!と相成りました。

ここで、業務の都合をつけるにあたって協力いただいた会社の同僚の皆様、留守を守ってくれた家族、そして快く送り出してくださった道場生一同に感謝御礼を申し上げます。

塾長から「外国育ちの国際派空道家」といわれている私ですが、マレーシア出身、台湾育ちで、実はヨーロッパへ行くのは初めてです。

英語がどれだけ通じるのか、ギリシャ語をちゃんと勉強すべきなんだろうかと不安になっているうちにあっという間に遠征の日となりました。

10月12日(金)

朝10時に成田空港に集合してチケットを配られ、12時15分の便でいざギリシャへ。
ギリシャ到着時間は現地時間の22時45分。時差が6時間あるので、16時間30分の長旅です。
9時間半のフライトを経て無事第1目的地のモスクワに到着しました。私は(空道家として恥ずかしいことに)初めてのロシア上陸となりました。
トランジットで(全然読めない)メニューを見ながら前祝いをして、いよいよギリシャへと向かいます。

英語で併記しているのと写真付きなのでわからない事はないです。

飛行機に乗ると長旅の疲れかウトウトと・・・ふと気が付くと、まだ飛行機は出発していません。
「あれ、寝てなかったのかな?」
と時計を見ると出発時刻を1時間ほど過ぎていました。
するとアナウンスで
「マシントラブルが発見されたので1度降りてください」
との事。
ぞろぞろと降りて、今度はロビーで1時間待ち!
日本なら2、3分の電車の遅延で大問題となるところですが、ここはロシア。
むしろ皆で
「飛行中にトラブルが発生しなくてよかった」
と安堵するのでした。

結局アテネに到着したのは25時を過ぎた頃でした。
今回のギリシャの責任者であるジョージ氏と合流し、そこから80㎞先のホテルを目指します。
80㎞もの距離なのに、車で1時間足らず。
大阪なら80㎞といえば2時間は必要なのですが…ジョージの高速運転のおかげで早々に到着することができました。

10月13日(土)

さて、翌日8時に集合して朝ごはん。
ホテルの朝食は日本と同じくバイキングなのですが、とにかく量が多く、味も最高でした。
特に野菜、果物の味がしっかりしており、ここでがっつりと栄養を補給します。

一息ついて10時からまずはセミナーです。

セミナーの前の集合写真。車で10分ほどのところなので、道着で向かいます。

準備運動、基本稽古、そして3組に別れて移動・投げ・寝技を行いました。
元々伝統派空手の経験者が多いだけに足は高く上がり、突き蹴りの切れ味も悪くはないのですが・・・ガードが大きく下がる、一発一発突き出した状態で(ガードに戻らず)静止する、と言った、他流経験者にありがちな問題点も散見されました。
しかし一番の問題点は何より私…これまでの遠征は選手として参加、指導は二の次で来たところに塾長から
「準備体操、基本は壮、お前がやれ」
の指示に久しぶりの英語での指導も相まってドタバタになってしまいました。

稽古前の1シーン。空手の黒帯が多く、柔軟性等はとても高いものがありました。

諸先輩にご協力いただいて何とか指導を終え、お昼を食べて遠征の大ベテラン小松支部長に相談し・・・
昼からの指導を改めて挑戦です!
午後は午前中の復習+移動、投げ、寝技と受け返しで、私は基本の後、神山支部長と受け返しの指導を行いました。
インドでの指導を思い出すに、ポイント制の競技の経験者は「受けて返す」と「連続攻撃」が苦手な場合が多く、今回もその例にもれずに受け返しのニュアンスがあまり伝わりませんでした。
そこで、大ベテランの神山支部長にご協力いただき、受け方や返し方を丁寧に指導させていただきました。
神山支部長の受け、体裁きは失礼ながら60前とは思えない正確かつ迅速なもので、後に帰路でも言われた通り、空道の基本・移動をやりこむ事の重要性を改めて認識させられました。

ちなみに塾長の私の指導への評価は

「ましになったな(笑)」

でした。

17時半に指導を終えるといったんホテルに戻ってシャワー・着替え、その後は会食です。
本日のセミナーに参加された生徒とジョージ夫妻との交流パーティーとなりました。
ギリシャは日本と違って「まずは生!」ではなく、最初からワインで乾杯。
空道のセミナーの「必修科目」である飲みニケーションで交流を深めました。

10月14日(日)

審査前の記念撮影。青い道着を着ているのがGeorge氏

 

朝起きてたっぷりの朝食をいただいたら、本日は午前中が基本・移動・投げ・寝技の審査・指導午後が組手審査です。
1日経って、皆の基礎を見ると・・・ある程度形にはなっているけれど、まだまだ日本の黒帯には及ばないレベルでした。これからの修練に期待したいところです。
午前の指導を終えると、日本の中学・高校生くらいの子達に指導を求められました。
「私はこうやって受けるけど、これであってる?」
「どうしてこうやって打つの?」
と少年部クラスの子達が細かに空道の技術を学ぼうとする姿勢は非常に頼もしく、彼らが20代になった暁にはギリシャが空道大国になる日が来るのでは…?と期待に胸を躍らせました。

ちなみに塾長の私の指導への評価は

「3回目だからか、前回、前々回よりはましになったな(笑)」

組手については伝統派の癖が抜けきらず、どうしても打撃を打ち抜けない受験者が多くみられました。
しかし思い切り打ち抜けた受験者については、下地もあるため、強烈な打撃となり、一部負傷された方も見られました。

何れにしても高い身長にばねの効く身体は、今後ヨーロッパでギリシャチームが脅威となる可能性を十分に感じさせるものでした。
また、選手以外でも50代、中には病気を押して挑戦する60代の受験者もおり、生涯武道として空道を学ぶ姿勢が見て取れました。

多くの受験者が当日中のフライトで帰ってしまったため、恒例のさよならパーティーはジョージ夫妻とのささやかなものになりました。

いつものホテルのレストランで乾杯をして、その後はウィスキーバーでもう一回の乾杯。
日本ならこの後カラオケ、ラーメンと続くのですが、残念ながらギリシャの夜は早く、大道塾では異例の日が変わる前の解散となりました。

10月15(月)

早朝迎えに来てくれたGeorge支部長に連れられて、空港に向かう途中、300の舞台にもなった有名なコリントス運河に寄りました。

バンジージャンプもできるこの運河、高さ約30m(小松支部長調べ)。2年後のワールドカップをギリシャで行いたいというGeorge氏に、塾長は
「負けたやつはここからバンジージャンプだな(笑)」
との事でした。

総括

今回のギリシャだけではなく、世界各国の武道家、格闘家からの「空道を学びたい!大道塾を学びたい!」というオファーが多数あります。
実際道場にも、海外から来られ、短期・長期問わず、入門して稽古を重ねる方々が多くいらっしゃいます。
今回ギリシャの受講者に理由を聞くと礼節を重んじ、生き方にもつながる武道の中で、特に実戦的で現代の総合格闘技に対抗できる実力があるからだ、という回答をいただきました。
共すれば形骸化しがちな武道でありながら、空道は他流と切磋琢磨し、実戦で磨かれた戦闘力を持ちながら、武道の最も大切な人格形成の道を持っている貴重な武道であるところが、世界に広まりつつある理由なのではないでしょうか。
今回、4度目にして初めて、選手としてではなく指導者としてセミナーに参加させていただき、教える事よりもむしろ教えられる事が多い5日間となりました。
「できる事と教えられる事は違う」
「肝心要の事を伝える難しさ」
「英語で柔軟体操を教える大変さ」
「ギリシャでも女性の方が男性より強い」
以上の反省と自分への備忘録をもって、今回の遠征レポートを終わらせていただきます。
東塾長はじめ、狐崎支部長、神山支部長、飛永支部長、渡邊支部長、小松支部長、大変お世話になりました。
今後ともよろしくお願い致します。

押忍

住友電工空道同好会  責任者 山田 壮